第90話

〔嶋﨑斗亜〕あなただけを
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2020/09/22 06:20


友達「斗亜~、これから皆で遊びに行こうって話なんやけど、斗亜も一緒に行かへん?」



「あー、ごめんっ!!この後予定あるから、今日はパス。」



友達「え~、またぁ?斗亜、最近そういうの多ない?笑」



「ごめんごめん!!次は絶対行くからさ!!じゃあ、また明日!!」



友達「えっ、?あっ、ちょっ、斗亜…!!」




退屈な授業も終わって、待ちに待った放課後。



まだ、皆が教室でぐだくだしている中



大した用事なんて、本当はある訳じゃないけれど。



友達の誘いを断って、誰よりも早く学校を出た僕が、毎日欠かさず通う場所。



それは…




「あなたちゃん!!」



『…!!斗亜くんっ…!今日も来てくれたんやね。笑』



「うんっ!もちろん!!」



大通りから少し離れたところにある、小さなお花屋さん。



ここに来るのが、僕の毎日の日課。




『ふふ、やっぱり高校生は元気やなぁ~笑』



「そんな事ないって!あなたちゃんだって、僕と3つしか変わらんのやし!笑」



『えー、変わるよー!笑 流石に高校生の時みたいにはしゃぐ元気、私には残ってないもんっ!笑』




なんて、ニコニコの笑顔でそう言っているのは



このお店の定員さんで、大学生のあなたちゃん。



そんなあなたちゃんの笑顔に、ドキッとして。



可愛いな、なんて見惚れていれば




『斗亜くん…?大丈夫?笑 なんか、ぼーっとしてたけど。』



「えっ、?あっ、ううん!全然平気…!!」



『そう?それならええんやけど。笑 あっ、そうだ!今日も、いつものやつでええ?』



「うんっ…!」



『じゃあ、準備するから、ちょっと待っててね!』



もしかしてあなたちゃんに見惚れていた事がバレてしまったんじゃないかって



少し焦っている僕とは反対に、そう言いながら、楽しそーに仕事をしているあなたちゃん。



そんなあなたちゃんは、やっぱりすっごくすっごく可愛くて。



『はいっ、出来た!!』



「ふふ、ありがとうあなたちゃん!」



くるっとこちらを向いたあなたちゃんに差し出された、一輪の向日葵の花。



『いーえ!斗亜くん、本当に向日葵の花好きだよね。笑』



「んー、好きか嫌いかで言ったら、好き…、かな?笑」



『何それー!笑 毎日向日葵ばっかり買うから、てっきり好きなのかと思ってた!笑』




なんてそう言いながら、ニコって笑うあなたちゃん。



僕が毎日ここで向日葵の花を買うことは、別に何か理由ある訳じゃない。



ただ何となく、真っ直ぐで、いつも明るいあなたちゃんの笑顔が



向日葵の花のように見えたから。



『"あなただけを見つめる"』



「えっ、?」



『向日葵の花言葉。知らなかったでしょ?笑 なんか、カッコイイよね。"あなただけを"って。』



知らなかった。向日葵の花言葉なんて。



でも、あなたちゃんに似ているから。



そう思って毎日買っていた向日葵に、そんな意味があったなんて



何だか、偶然なんかじゃない気がして。



『斗亜くんはさ、いるの…?その向日葵の花、渡したい相手。』



「へっ、?…あっ、えっと…。」



『あっ、ごめん!変なこと聞いて…!何でもないから、今の忘れて…?』



少し、寂しそうにそう言ったあなたちゃん。



僕が向日葵の花を渡したい相手。



そんなの、最初から1人しかいない。



だって、僕には…



「あなたちゃん、これ!」



『えっ…?』



「僕から、あなたちゃんに。僕の気持ち、受け取ってくれる…?」



初めて会った時から、ずーっと。



あなたちゃんの事しか、見えてないから。



『私も…、私も斗亜くんのことっ…!?…わぁっ、ちょっ、斗亜くん…!!』



「ごめん、嬉しすぎて、我慢出来ひんかった。笑」




あなたちゃんに差し出した、一輪の"向日葵の花"。



それをあなたちゃんが受け取ってくれた事が、すっごく嬉しくて。



我慢できずにぎゅーっと抱き締めれば



あなたちゃんも。それに応えるように、抱き締め返してくれて。



「あなたちゃん、ずーっと好きでした。僕と、付き合って下さい!」



『うんっ、はい…!私で良ければ、お願いします…!』



なんて、無邪気に笑うあなたちゃんは



やっぱり向日葵みたいに、明るくて、可愛くて。



『斗亜くん…?』



この先もずっと。



僕の目に映るのは…



「あなたちゃん、大好きやで。」




大好きな



"あなたちゃんだけ"やから。






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