第43話

〔藤原丈一郎〕飲み会
10,996
2020/08/02 11:56


「だからさ?俺やって色々心配やねん…!!」




そう言いながら、少し乱暴に机に置いたビールのジョッキ。



西畑「はいはい。笑 それは何度も聞いたから…っていうか丈くん、ちょっと飲みすぎちゃうん?」



大橋「そうやで!そろそろやめときや?」



「んー、まだだいじょーぶっ。」



今日は会社の飲み会で。



同じ部署の人達と、居酒屋に来ること約2時間。



いつもよりハイペースでお酒を飲んでるから、俺はそろそろいい感じに酔ってきて。



「そもそもさ?あなたは自分が可愛いっていう自覚がないねん!こっちはいつか誰かに取られるんやないかって気が気やないのにさっ。」




なんて、そんな事を呟く俺の目線の先には



少し離れたところで、男の先輩達に囲まれて座っているあなたの姿。



会社の同僚でもあり、俺の彼女でもあるあなたは



控えめに言って、めちゃくちゃ可愛い。



だから、同期の中だけじゃなくて先輩も、もちろん他の部署のやつも



あなたを狙ってる男は少なくない。



でも、普段から鈍感っていうか、ちょっと抜けてるあなたは、そんな事全くもって気づいてない。



今だって、絶対にあなたに気があるやつらに囲まれてるのに



あなたはそれに気づかずに、ずーっと無邪気な笑顔を浮かべてて。



流石の俺やって、あそこまで楽しそうにされたら不安にもなるし、嫉妬する。



だけど、こんな事で嫉妬するとか、俺心狭いんかなぁ。



なんて、そんな事を考えながら、俺が残ったビールを一気に飲み干していると



西畑「なぁ、丈くん。あれ、ええの?」



突然、そう言ってくる大吾。



何がやねん。ってそう思いつつも、とりあえず大吾が指を差している方を見てみると




「はぁ?何あれ、全然良くないわ!」



俺の視界に入ってきたのは、男の先輩から明ら様にボディータッチを受けているあなたの姿。



あなたも多少嫌がる素振りは見せるけど、相手が先輩であるせいか、はっきりとは拒んでいない。



だけど、流石にそんな様子を見せられたら、俺だって黙って居られるわけもなく。



「あなた、帰るで。」



『えっ、ちょっ、丈くん…!?』




驚くあなたの手を引きながら店を出て、そのまま向かう場所は、もちろん俺の家。




『丈くん…?』



「あなた、こっち。」




不思議そうに俺の顔を覗き込んでくるあなたを、とりあえずリビングまで連れて行って



誰にも邪魔されない、2人きりになったこの空間で、俺は思いっきりあなたを抱きしめる。




『じょうっ「ほんまに、あなたは鈍感すぎ。」



『えっ、?』



「いい加減気づいて?あなたは可愛いんやから、俺以外の男の前で隙なんか見せんといてや。」



『…っ!な、何言ってるん丈くん!もしかして、酔ってるん…?』



「はぁ…、ほんまにあなたはどこまで鈍感なん?笑」



『だ、だって丈くんが私の事可愛いって…!いつも全然言ってくれへんのに…!』



「俺やって、たまには言うんですー。っていうか、つっこむ所そこじゃないやん。笑」



ここまで言っても、まだわからないのかキョトンとした顔で、俺の方を見てくるあなた。




「だーかーら!嫉妬したって言ってんの!」




本当はカッコ悪いから、こんな事自分からは言いたくなかったけど


あまりにもあなたが気づいてくれへんから、俺は痺れを切らしてそう言って



あなたを抱きしめる力を強くする。




『丈くんが、嫉妬…?』



「そう。俺が居るのにあなたが他のやつとばっかり楽しそうにしてたから、嫉妬した。」



『本当に、嫉妬してくれてたん…?』



「本当に。もしかして俺、あなたに信用されてない?笑」




なんて、冗談交じりで俺がそう言うと



『ううん、まさか丈くんが嫉妬してくれるなんて思ってなかったら、嬉しくて…!』




あなたは、飛びっきりの笑顔でそう言いながら俺の事を見つめてきて。


そんなあなたの姿は、やっぱり、めちゃくちゃ可愛くて。



「あーも!!可愛すぎや、バカ。」



『ふふ、ねぇ、丈くん。』



「ん??」



『大大大っ好き!!』



「…っ!そんなん…、俺の方が大好きやしっ。」




なんてそう言いながら、キスをして。



普段なかなか素直になれへん俺やけど



あなたの事が、1番大好きやで。






プリ小説オーディオドラマ