第75話

〔長尾謙杜〕遊園地
8,818
2020/08/30 07:45


『よしっ…!これで完璧!』




彼の好みに合わせて、新しく買ったワンピースに、ふんわりと巻いた髪。



得意じゃないから普段はあまりしないけど、うっすらメイクなんかもしてみたり。



変じゃないかな…?可愛いって思って貰えるかな…?



なんて、何度も何度も、入念に鏡で確認していれば…




『やっば…!!もうこんな時間…!』




約束の時間ギリギリで。


急いで待ち合わせの場所へと向かうと



「あっ、あなたちゃん~!!」



そこには、ニコニコしながら大きく手を振る謙杜くんがいて。




『ごめん、謙杜くんっ!少し、遅くなっちゃった…!』



「ううん、ぜーんぜん!!それよりも、今日のあなたちゃんめっちゃ可愛い!」




なんて、無邪気な笑顔でそう言われれば



嬉しさと、恥ずかしさとで、自分でもわかるくらい、一気に真っ赤になっていく私の顔。



『あ、ありがとう…っ。』




謙杜くんとは付き合い初めて3ヶ月。



私にとっては、初めて出来た彼氏。



だから、まだ少し緊張しちゃったりして



デートだって数える程しかしてないし、恋人らしいことも、ほとんどした事がない。



だけど、今日は初めての"遊園地"デート。



少しは恋人らしいことも、出来たらええなぁ



なんて、ちょっぴり期待したりして。




「じゃあ…、そろそろ行こっか!あなたちゃんは、まずどれ乗りたい?」



『えっと、、ジェットコースター、とか?』



「ふふ、ええよ!笑 じゃあ、こっち!」



『っ…!!』




そう言いながら、楽しそうに私の手を取って歩き出す謙杜くん。



そんな謙杜くんの横顔は、見惚れてしまうほど、綺麗で、カッコよくて。



ドキって、して。




「あなたちゃん??どうかした?」



『ううん…!何でもないよ!』



「そう??じゃあさ、次はあれ乗ろうよ!!」



『うんっ!』




少し視線を下に落とせば、ぎゅっと繋がれたお互いの手。



この手が、謙杜くんは本当に私の彼氏なんだって、そう実感させてくれるから



何だかとっても嬉しくて。



いつも以上に、胸が高鳴って。



楽しくて、時間が経つのを忘れるぐらい、夢中になれば



楽しい時間なんて、あーっという間に過ぎていて。



「そろそろ、暗くなってきちゃったね。」



『だね…。』




朝はあんなに晴れ渡っていた空も、気づけば既に真っ暗で。




「ねぇ、あなたちゃん。最後にあれ乗らない?」




そう言って、謙杜くんが指差したのは



唯一、私たちが乗っていなかった



"観覧車"




『うん、ええよ。私も同じこと思ってた。笑』




なんて、そう言いながら2人で観覧車の方へと歩いていく。








『わぁっ!ね、見て謙杜くん!すっごく綺麗!!』



観覧車に乗れば、外に広がる、光り輝く夜の景色は、一段と絶景で。




「ふふ、あなたちゃん、はしゃぎすぎ。笑」



『だって、すっごく綺麗なんだもん!笑』




なんて、私が外の景色に夢中になっていると…




『…っ!、謙杜くん…?』




さっきまで、私の向かい側に座っていた謙杜くんは



いつの間にか、私の隣に移動していて。



ただでさえ狭い、観覧車。



ぴたっとくっつくように、2人並んで座れば、今まで以上に近づく距離に



私の心臓は、謙杜くんに聞こえてしまいそうなくらい、ドキドキと大きく音をたてながら鼓動する。




「あなたちゃん。今日は一緒に来てくれてありがとう。」



『ううん、こちらこそ。凄く楽しかった!』



「僕も!また、一緒に来てくれる?」



『もちろん!私で良ければ、だけど。笑』



「当たり前やん!僕は、絶対あなたちゃんと一緒がえーの!」




なんてそう言いながら、笑顔を向ける謙杜くんは



やっぱり、とてもカッコよくて。



私の大好きな、謙杜くんで。





『謙杜くん、大好き。』



「ふふ、俺も。大好きやで。」




キラキラと綺麗に輝く、夜の街。



観覧車の頂上で。



私たちは



初めてのキスをした。







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