第143話

〔藤原丈一郎〕恋バナ
6,733
2021/02/11 08:58


『じょーくんはさ? 私のどこが好き?』



「………は、?」




仕事終わり。



久しぶりに飲みに行こうと誘われて、一緒に行きつけの居酒屋まで来た所までは良かったものの



お酒なんて本当はそんなに得意じゃないくせに、いつもよりハイペースで飲んでいたせいなのか



突然、そんな突拍子も無いことを言い出したあなた。



「…あなた、もしかして酔ってるん?」



『酔ってないっ!まだ全然だいじょーぶっ!!そんな事より!! じょーくんは、私のどこが好き??』




なんて、わざとなのかなんなのか。



俺の顔を覗きこむように、上目遣いであなたがそう言って。




「はぁっ、、。…ったく、、。まだ元彼あいつのこと忘れられないん?」



『…んー、そういう訳じゃないねんけどさぁ~?』



「じゃあ、どういう訳やねんっ。笑 違うんやったら、半年も前に別れた彼氏の話、今頃せえへんやろ?」



『…うんっ、笑 まぁ、正直たまに考えちゃうんだよね。もしあの時私がちゃんと好きな所答えてたら、何か変わってたかなって…。』




残りのカクテルを一気にぐびーっと飲み干しながら、そう言うあなた。



そんなあなたの表情は、どこか悲しそうで、切なくて…。



あなたとは、元々大学の時からの付き合いで、今では、同じ部署で働く同期。



だから、自然と一緒に居る時間も多くて、お互い何でも話せる仲やから。



当然、彼氏がどうとか、そーゆー話だって。散々聞かされる訳で。




『…まぁ、今更そんな事言っても仕方ないんやけどねっ!笑 …っていうか、丈くんはいい加減彼女作らないん?』



「俺?…ええやん、俺の話は別に。」



『良くないのっ! 今日だって、朝から他の部署の人に告白されてたでしょ? せっかくモテるんやから、彼女作ったらええのに~!』



「だから、俺のことは『あっ、それとも!!』



『私に言ってないだけで、もしかして丈くん、本当は好きな人居るとか!?笑 』



「…っ、!、、別に…。そんなんちゃうから、!」



『嘘だ~!!今の反応絶対怪しいもんっ!本当は居るんやろ、好きな人っ!!ねぇ、誰!! 同じ部署の人? それとも先輩とか??』




なんて、目を輝かせながら、楽しそうに色々聞いてくるあなた。



言えるわけないやん。



…好きな人、、なんてあなたに。



あなたが、俺の事を何とも思ってないってことも。



言ったところで、あなたを困らせるだけってことも。



全部わかってるんやから。



大学生の時から、俺はずっと、 "あなたのことが好きやった"



なんて、本人に言えるわけないやろ…?




「…例え居たとしても、あなたにだけは絶対言わへんから。」



『えー、なんで!!教えてよっ! 大学の時からの仲やんか!私達の間に隠し事はなしやろ?』



「だとしても絶対言わへん。あなた口軽いもん。」



『そんな事ないやんっ! 誰にも言わへんから!!ねーえ!お願いっ!!』



「絶対嫌。」



『…むぅっ! 丈くんのケチっ!!』




そう言って、やっと諦めてくれたのか、それ以上は何も聞いてはこないけど



頬をぷく~っと膨らませながら、明らかに不貞腐れてます感満載のあなた。



そんな姿さえも、可愛いなって思ってしまうぐらい



俺は、あなたの事が好きすぎて重症やねん。



だから、俺のせいであなたを困らせたくないし、この関係も。



今はまだ、終わらせたくない。



"彼氏" としてじゃないとしても。少しでも、あなたの近くに居たいって、そう思ってしまうねん。



だから…




「ほら、あなた。明日も仕事やねんから、これぐらいにして、はよ帰るで?」




自分の気持ちに嘘ついて、こんなの、ただ逃げてるだけだって事はわかっているけれど。



今の俺には、こうするしかないんやって。



そう自分にいい聞かせて、席を立とうとしたとした



…その時だった。




『…丈くんの好きな人、、私だったら良かったのに…。』



「えっ、?」



『だって私、絶対誰よりも丈くんのこと知ってるよ? だから、、丈くんの好きな人が、私だったら良かったのに…。』



なんて、真っ直ぐと俺の目を見ながら、あなたがそう言って。



「…っ、、…酔っぱらいの冗談なら、『冗談なんかじゃないもんっ!』



『冗談なんかじゃ、、ないもんっ。どうして信じてくれへんの…? 私はずっと丈くんのことが、、!』



「あなたは…、彼氏だって居ったやろ?だからそんなの『だってそれは!!』



『丈くんの気持ちが全然わからなかったから。 他の人と付き合ったら、ちょっとは私の事も意識してくれるかなって思ったのに、、っ、!?』



あなたがそんな風に思ってくれたなんて、全然知らなくて。



初めて聞かされたあなたの本音は、俺がずっと欲しかった、あなたからの言葉で。



気がついたら俺は、あなたの事を抱きしめていて。



『…丈くん、、?』



「そんなん…、俺もやからっ。…っていうか、絶対俺の方が先に、あなたのこと好きやったから、!」



『…っ、!!…ふふっ、うんっ。笑 私も好きだよ、丈くん。』



なんてそう言いながら、あなたも、同じようにぎゅっと抱き締め返してくれて。



『…丈くん。』



「ん、?」



『好きだよっ。大好きっ、!』



「…っ、!、、。」



『あ、丈くん今もしかして照れた?笑 絶対照れたでしょ!!笑』



「うっさい。…っていうか、照れてないしっ!」



『絶対嘘!だって、顔真っ赤やもんっ~!笑』



なんて、ニヤニヤしながら、嬉しそうにあなたがそう言って。



『照れてる丈くん可愛い~!笑 あっ!ねぇ、丈くんも好きって言って!』



「言わへん。二度と言わへん。」



『えー、なんでっ!笑 本当は私のこと大好きなくせ、、、に、、っ、。』



「ふはっ、笑 あなたも真っ赤やんっ。笑 …ていうか、あんまり可愛いこと言ってると、このまま俺ん家連れて帰るけど?笑」



『…~~っ!!』




あなたの唇に、そっとキスをすれば、みるみるうちに真っ赤になっていくあなた。



そんなあなたは、やっぱり誰よりも可愛くて。



"大好き"



なんて、俺が素直にあなたに向かってそう伝えられる日も。



きっと、そう遠くはないはずやから。







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