第103話

〔浮所飛貴〕想いを君に
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2020/10/25 07:24


高校生活、部活に捧げた3年間。



だけど、そんな楽しかった毎日も、今日で終わり。



今日は、高校最後の大会で。3年間の集大成。



あっという間だったな~、なんてしみじみと思いながら、ぼーっと、私がコートを眺めていると…




「あなたちゃん!!」



ふと、後ろから誰かに声をかけられて。



『…っ!、飛貴くん…!!どうしたの?…あ、もしかして、これから試合??』



「うんっ!だから、試合の前にあなたちゃんに元気貰っとこうかな~って思ってさ!」



『…っ!!』



振り返ってみれば、そこにはニコニコしながらそう言う飛貴くんが居て。



そんな飛貴くんの言葉に、笑顔に。



どきっとして、胸が高鳴って。



『…試合、頑張ってね!私、絶対飛貴くんのこと、応援しに行くからっ!』



なんて、ドキドキしているのが飛貴くんにバレないように


必死に取り繕って、そう言えば…



「ふふっ、ありがとう、あなたちゃん。俺、頑張るから!」



『うんっ!』



私だけに向けられた、彼のその笑顔に、嬉しくなって。



『飛貴、くん…?』



「…あの、さ!もし…、俺がこの試合に勝ったらっ、!!」



部員「飛貴~!!やっと見つけた!!こんな所で何してるんだよ!そろそろ試合の準備しないと、試合間に合わないよ?」



「やっば…!もうそんな時間かよ!じゃあ、あなたちゃん。俺、行くね…!」



なんて、少ーし慌ただしそうに走っていく飛貴くんの後ろ姿さえもが



愛おしくて、大好きで。



飛貴くんは、テニス部のエースで、勉強も運動も。



何でも出来る上に、カッコよくて、皆から好かれているような、人気者で。



好きだった。3年間ずーっと。



そんな飛貴くんの事が、私は大好きだった。



でも…、わかってる。



飛貴くんと違って、私は運動も勉強もそこそこで、どこにでも居るような、普通の高校生。



飛貴くんが私に話しかけてくれるのだって、優しい彼が、私に気を使って話してかけてくれてるだけ。



部活が無くなってしまえば、飛貴くんと話す機会だって。きっと…、無くなってしまう。



そう、わかってるのに…。



いつまでも臆病な私は、最後まで気持ちを飛貴くんに伝えることが、出来ないまま。



気がつけば、本当に全部が終わっていて。




「あなたちゃんっ!!」



『飛貴くんっ、!…試合お疲れ様…!』



「ふふ、ありがとう。あなたちゃんが応援してくれたおかげで俺、勝てたから。」



『そんな…、私なんて…。』



試合が終われば、そう言って真っ先に私の所へ来てくれた飛貴くん。



1番に私の所へ来てくれて、嬉しいはずなのに、それと同じくらい。



何だかとっても、…切なくて。



「えっ、あなたちゃん、なんでっ、、。」



『…ごめっ、あの、これは違くてっ、、。』




色んな感情が混ざりあって、ぐちゃぐちゃになって。



自分でも抑えきれなくなった感情が、涙となって私の頬を伝っていく。



今更泣いたって、何かが変わるわけでもないし、飛貴くんを困らせてしまうだけなのに。



1度溢れてしまった涙は、なかなか止まってくれてなくて。



『…ごめんっ、やっぱりこんなの迷惑だよね…!私…、少し頭冷やしてくる…!!』



これ以上は、飛貴くんに迷惑はかけたくない。


そう思って、私がこの場を離れようとすれば…



「あなたちゃん、待って…!!」



『っ、!?』



突然、後ろから腕を掴まれたかと思ったら



そのまま私は、ぎゅーっと飛貴くんに抱き締められていて。



『飛貴…、くん、、?』



「ごめんっ、いきなりこんな事して。でも、あなたちゃんが泣いてるの、俺、迷惑だとかそんな風に思ってないからっ!」



『っ、!、、…。』



「むしろ、守りたいっていうか、こういう所、俺以外のやつに見せたくないっていうか…。」



『えっ…、?』



「だから、その…。あなたちゃんのことが好きだからっ…!」



『…っ!!』



「1年の時からずっと。あなたちゃんの事が好きでした。だから俺と…、付き合って下さい…!!」




なんて、3年間。私がずーっと伝えたくて、だけど、伝えることが出来なくて。



1番聞きたかった言葉を、飛貴くんは私に伝えてくれて。



『私もっ…。私もずっと、飛貴くんの事が好きでした…!だから、こんな私で良ければ…、、っ!?、…わぁっ…!』



「ごめん。嬉しすぎて、ちょっと我慢出来なかった。笑」




なんて、私が全部言い終わる前に、もう一度。



引き寄せられるように、ぎゅーっと、飛貴くんに抱き締められて。



「絶対、あなたちゃんのこと、大事にする。」



『ふふっ、うん。……飛貴くん、大好きっ。』



「俺も。大好きだよ、あなたちゃん。」




3年間の集大成。



この日、ずっと大好きだった飛貴くんが、私の彼氏になったことは、私にとって。



何よりも特別な、"ご褒美"だから。






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