第57話

〔川崎皇輝〕デート
9,527
2020/08/14 05:52


今日は彼氏の皇輝くんとの初デートの日。



私よりも1つ年上の皇輝くんに、少しでも大人っぽいって、可愛いって思われたくて



悩みに悩んで決めた取っておきの洋服と



いつもより手の込んだヘアアレンジ。




『やっば…!もうこんな時間…!!』



完璧に支度を終えて、ふと時計を見ると、もう約束の10分前。



急いで待ち合わせ場所まで向かうと




「あっ、あなた~!」



笑顔で私に向かって手を振る皇輝くん。



それだけでも、私の胸は充分高鳴るけれど



今日は普段目にする制服じゃなくて、初めて見る皇輝くんの私服姿。



細めのジーンズを完璧に着こなす皇輝くんは、いつもの何百倍もカッコよく見えて。



『皇輝くん!ごめん、少し遅くなっちゃった…!』



ドキドキしているのがバレへんように、私がそう言うけれど…



皇輝くんからの返事はない。



やっぱり少し遅くなっちゃったこと、怒ってのかな…?って恐る恐る私が顔をあげてみると



『えっ、皇輝くん…?』



私の予想とは大きく反して、顔を真っ赤にしている皇輝くん。



「あっ、いや…、その…。今日、いつもと雰囲気違うんだね。」



『えっ?あ~、うん!やっぱり変、かな…?』



「ううん、似合ってる。可愛いよ。」



なんて、少し照れたようにそう言う皇輝くんに



私の顔も一気に赤くなっていて



私たちの間を流れる何とな~く気まづい、無言の時間。



そんな沈黙を破るように



「じゃあ、行こっか…!」



なんてそう言いながら、スマートに私の手を取って、デートをエスコートしてくれる皇輝くんに



ドキッとして、私の心臓はうるさいくらいに鼓動して。



皇輝くんに着いていくだけでも、私は精一杯。



そんな私の様子に皇輝くんも気づいたのか



緊張をほぐすように、いつも以上に優しく、私に寄り添うように接してくれるから



私の緊張も次第に解けていって。



あっという間に過ぎていく、楽しいデートの時間。




「そろそろ、暗くなってきちゃったね。」



『だね…。楽しすぎて、なんだか一瞬だったな~。笑』



「俺も。笑 時間のことなんて忘れたもん。笑」




最初はあれだけ緊張していたけれど、頼れる皇輝くんのおかげで



すっごくすっごく楽しくて。



気づけばもう、辺りは暗くなっていて。



今日の思い出話をしながら、私を家まで送ってくれる皇輝くん。



そんな紳士的な所も、やっぱり好きだなぁ



なんて思っていれば、家までの道のりも一瞬で。




『皇輝くん、今日はありがとう。凄く楽しかった!』



「俺も、めっちゃ楽しかった!あなたの意外な一面もわかったし?笑」



『そ、それは言わない約束じゃんっ…!笑』



「ごめんごめん!笑 でも、俺はあなたのこと、もっと知れて嬉しかったよ?」



『…っ!そんなの、私だって…!』



このまま皇輝くんと別れるのは、なんだか惜しくて、1分1秒でも長く一緒に居たくて



家の前で、ちょっぴり立ち話なんかをして。




「じゃあ、そろそろ俺行くね。」



『うんっ。』



「あっ、待ってあなた。1個、忘れ物。」



『えっ、?』



帰ろうとした皇輝くんが、くるっと振り返ってそう言いながら私の方に戻って来て。



何を忘れたんやろう、なんて思っていると



唇に当たる柔らかい感触。




「じゃあ、また明日。」




普段は頼れる年上彼氏の皇輝くん。



そんな彼が耳まで真っ赤になっていたのは



午後7時。



街灯の明かりだけが綺麗に灯るこの場所で



初めてキスをされた時間。






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