友達「長尾~、この後皆でカラオケ行くことになったんやけど、長尾も一緒に…」
「あ~、ごめんっ!! 俺、行かなあかん所あるからパス!! じゃ、また!!」
友達「え、ちょっ!!…長尾、!?」
高校の卒業式。
もちろん、高校の友達とこんな風に毎日会えるのも、今日で最後やけど。
それよりも、僕にとって大事なこと。
それは…
「あなた先生っ!!!」
『…っ、! 長尾くんっ!』
この学校の、保健室の先生で
僕が3年間想いを寄せていた、あなた先生。
『卒業おめでとう!!』
「うんっ、ありがとう。」
『早いなぁ~、長尾くんももう卒業か~』
「えぇー、早くないよ!! 俺にとってはすっごく長かったんやからっ!!」
『そう?笑 でも、長尾くん3年間毎日保健室に来てくれてたから、これからちょっと寂しくなっちゃうかも。笑』
なんてそう言って、少し寂しそうに、でも優しく微笑むあなた先生。
…あなた先生との出会いは、高校の入学式。
入学式の途中で貧血になって倒れた俺が、保健室に運ばれた事がきっかけで。
目が覚めて、初めてあなた先生を見た時
あぁ、この人だって、直感でそう思って。
そこから3年間。
1日も欠かさずに、僕は毎日あなた先生に会うために、保健室に通ってた。
もちろん、何度か告白した事だってあるけれど
" 生徒とは付き合えない " とか " 卒業したら考る "
とか、いっつもちゃんと相手にして貰えなくて。
だから、、、
…最後にもう一度。
振られてもええから、せめて、自分の気持ちだけでもあなた先生に伝えたくて。
「ねぇ、あなた先生。」
『ん、?? 何、どうしたの?笑 あっ、もしかして卒業するの、嫌になっちゃった??これから楽しいこといっぱいあるんやから「あなた先生。」
『…っ、! ね、長尾くん近い…からっ、!』
「本当は先生だって、俺が言いたいことわかってるやろ?」
『…っ、、。』
「先生、俺もう卒業したよ? もう、生徒じゃないんやで?」
『…っ、長尾くん、、。』
「あなた先生、1年の時からずっとずっと大好きでした! だから俺と、…付き合って下さいっ!!」
精一杯の告白。
…これが最後やから。
あなた先生と会えるのだって、きっとこれが最後やから。
…男なんやし、最後ぐらいは振られたって、泣かずにいようって
そう覚悟をきめて顔を上げたはずだったのに…
「…えっ、なん、、で…。あなた先生、、?」
『…ごめっ、、、。』
泣いていたのは、俺じゃなくて、あなた先生の方で。
「先生…、俺の告白そんなに嫌やったん、、? ごめん…。だったら今の全部忘れ『違うの、!!』
『…違うの、、。嫌だったんじゃなくて、嬉しくて、、!』
「っ、!!」
『私もずっと、長尾くんのことが好きだったからっ!…でも、長尾くんは生徒だから。ここは大人の私が我慢しなくちゃ、、って、、…っ、。』
目一杯に涙を浮かべながら、必死にそう言うあなた先生に
俺も、我慢出来なくて。
「…あなた先生、それほんま?」
『こんな時に嘘つく訳ないやろっ、、。』
これでもかってぐらい、ぎゅーっと抱き締めれば
あなた先生も。
同じように、俺の事を優しく抱き締め返してくれて。
「あなた先生、大好きです。俺の彼女になってくれますか?」
『…うんっ、、…はいっ!』
なんて。
2人でお互いの気持ちを確かめ合いながら、笑いあって。
高校の卒業式。
雲ひとつない青空が広がる、この最高の日に。
3年間、ずっと想い続けたあなた先生は
俺の、" 彼女 " になった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!