第91話

〔高橋恭平〕甘えて欲しい
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2020/09/25 11:59


『恭平くん。』



「………。」



『…恭平くん?聞こえてないん…?』



「……。」



『ねぇ、恭平くんってばっ!』



「………。」




お家デートの真っ最中。



こんなやり取りをし始めてから、もうかれこれ30分。



俺の隣にちょこんと座っているあなたは、さっきからずーっと



俺の名前を呼んでいて。



もちろん、俺だって。



そんなあなたに、気づいていない訳じゃない。



だけど、普段のあなたは、恥ずかしがり屋のせいなのか



自分からはあんまり俺に、甘えてくれなくて。



そりゃぁ、俺やって一応男だし…?



たまには、彼女から甘えられたい…とか思うねん。



だから今日は、あなたが俺に甘えてくれるまでは、ぜーったいに、答えてあげへん。



って、思ってたはずなんやけど…。



『恭平くん…?』




あかん、可愛すぎる。



いつもだったら、すぐに返事をする俺が、ずっと、気づいていないふりをしているせいなのか。



少ししゅんってなりながら、甘えた声で



俺の様子を伺うように、そう言うあなたの破壊力は半端じゃなくて。



今すぐにでも、ぎゅーっと抱きしめたい。



だけど、せっかくここまで来たんやし、やっぱりあなたから甘えて欲しいなぁ



なんて、俺が気づいていないふりを続けていると…




「…っ、!?」



突然、隣に座っていたはずのあなたが、ぱっと立ち上がって。



「…えっ、あなた…?」



『もう、いいもんっ…!!恭平くんが構ってくれへんなら、今日はもう帰るっ、!』



なんて、流石にちょっとやりすぎたのか、頬をぷくって膨らませて



少し不貞腐れたようにそう言いながら、どこかへ行こうとする、あなた。



「ダーメ。あなたはこっち。」



『えっ、?わぁっ、ちょっ…!恭平くん…!!』




そんなあなたの腕を、後ろからぐいっと引っ張って、元いた場所まで引き戻して。



逃げられへんように、ぎゅーっときつく抱き締めて。



「これでもまだ、帰りたいとか言うん?」



『だ、だって、それは恭平くんが…!!』



「俺が??笑」



『……な、何でもない!!』




あなたの顔を覗き込むようにして、俺がそう言えば



みるみるうちに赤くなっていくあなたの顔。



「ふふ、あなた照れたん?笑 顔、真っ赤。笑」



なんて、ちょっとからかってみれば



『…もぉ!恭平くんのいじわる…っ。』




あなたの顔は更に赤くなっていて。



恥ずかしいからなのか、赤くなっているのを隠すように



俺の胸に顔を埋めて、ぎゅっとしてくるあなた。




「ごめんごめん。笑 ちょっとからかいすぎた。笑 あなた、こっち向いてや。顔、見せて?」



なんてそう言えば、ゆっくり顔をあげて



『恭平くんに…、嫌われたかと思った…。』



なんて、小さな声でそう言うあなた。



「俺が、あなたのこと嫌いになる訳無いやろ?」



『でもさっき、何回呼んでも全然返事してくれへんかったし…!それに、…っ!?』




俺は、こーんなにもあなたの事が好きなのに。



全然納得してくれへんあなたに、少し腹が立って。



『…っ、。』



「これで、わかったやろ?笑 俺が、どれだけあなたのこと、好きか!」



『…恭平くんのバカっ…。突然すぎなのっ…!』




あなたの言葉を遮るように、唇を塞げば



耳まで真っ赤にしながら照れているあなたは、すっごーく可愛くて。



「あなた、ほんまに大好きやで。」



これでもかってぐらい、ぎゅーっとあなたのことを抱き締めながら、俺がそう言えば



『私も、恭平くんのこと大好きっ。』




なんて、ちょっと恥ずかしそうにそう言うあなたは



紛れもなく、俺の大好きなあなたで。



たまには、"甘えて欲しい"



なんて、そう思っていたけれど…。



恥ずかしがり屋で、不器用で。照れるとすぐに赤くなる。



そんな、とっても可愛いあなたが



やっぱり俺は、1番好き。







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