第53話

〔大橋和也〕大丈夫
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2020/08/11 08:07


「お疲れ様でした~!」



今日は雑誌の撮影の日。



盛り上がりすぎて少し長引いてしまったから、撮影が終わる頃にはもう、辺りは真っ暗で。



素早く帰り支度をして、俺は彼女のあなたが待つ家へと、足早に向かう。




「あなた~、ただいま!」



『和くんっ…!おかえりなさい。』



「ふふ、ただいま…って、あなた…?」



玄関の扉を開けると、リビングの入口からひょこっと顔を出して



"おかえりなさい"



そう言いながら、トコトコと俺の方へとやってきて、ぎゅーっと抱きついてくるあなた。




「どうしたん?何かあった?」




普段から、俺の職業柄2人で外にデートをしに行ったりすることは、なかなか出来ひんから



あなたは、家ではとっても甘えてくる。



だけど、今日のあなたはそれにしたって、いつにも増して甘々で。



「あなた~?離れてくれな、リビング行けへんで?」



さっきから、俺が何を聞いてもあなたは首を横に振るだけで、返事もなければ



一向に、俺から離れようとする気配もない。



あなたが甘えてくれるのは嬉しいけど、流石にまだ玄関やし、ずーっとここに居る訳にもいかんから



俺は抱きついたままのあなたを、お姫様抱っこして、そのままリビングへと連れて行く。




「あ、これ。あなた見ててくれたん?」



リビングに行くと、付けっぱなしのテレビから流れているのは



この間、俺が出ていた番組で。



『和くん…っ。』



1度小さく頷いてから、俺の服をキュッと掴んで、甘えた声でそう名前を呼んでくるあなたに



今日のあなたがこんなにも甘々な理由が、何となくやけど、俺にはわかって。




「大丈夫やで。俺にはあなたしか居らんから。」



なんて、俺がそう言うと



『でも和くん、女優さんと仲良さそうだったもん…。やっぱり私じゃ和くんには…っ!!』



「それ以上言ったら、俺怒るよ?」




昔から、小さな事でも深く考えすぎてしまうのは、あなたの悪い癖。


だけど、俺にはあなたしか居らんのに、あなたしか見えてへんのに。



"私なんか"


って、そんな風に言って欲しくなくて。



あなたの言葉を遮るように、俺は優しくキスをする。



『かずっ、』



「あなた、俺が好きなのはあなただけやで?俺の愛、ちゃんと伝わってない?」



『違うっ、伝わってるの。でも、心配で…!』



なんて、潤んだ瞳でそう言いながら、必死に俺のことを繋ぎ止めようとするあなたの姿は



今の俺には、毒でしかなくて。



『かず、くっ、!…んんっ、』



耐えられなくなって、俺はリビングのカーペットにあなたを押し倒して



さっきよりも、深いキスをする。



だけど、それだけでは全然足りなくて



あなたの開いた襟元から見える、白くて綺麗な肌に



俺は勢いよく吸い付いて、赤く印をつける。




「俺のって印。これで少しは不安なくなった?」



なんて俺がそう聞くと、あなたはこくこくと頷いて




『ね、和くん…、もっと、もっとして…?』



とろんとした顔で、そう俺を求めてくれて。



「ん、今日はい~っぱい愛したるっ。」




なんて、今日も俺は



あなたへの止まらぬ愛に、溺れてく。






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