修学旅行2日目。
今日は3日間ある修学旅行のうち、唯一"班別"で自由行動が認められてる日。
皆この日のために、彼氏や彼女、好きな人を誘って同じ班になっているから
そわそわしたり、楽しそうにしている人がほとんど。
だけど、そもそも私は彼氏の拓哉くんとは、クラスが違うから
もちろん、班も一緒になれるわけがなくて。
仕方がないことではあるけれど、せっかくの修学旅行なんだもん。
やっぱり少しは拓哉くんと一緒に思い出、作りたかったなぁ~
なんて思いながら、同じ班の人達の後ろをのんびーり歩いていると…
「あなたちゃん、こっち!!」
『えっ、?拓哉くん…!?』
突然、誰かに後ろから腕をぐいっと引っ張られて
振り返るとそこには拓哉くんが居て。
『拓哉くんどうしたの?他の班の人は?』
「あなたちゃんに会いたかったから、内緒で抜け出して来ちゃった!笑」
なんて、笑顔でそう言う拓哉くん。
拓哉くんのその言葉に、嬉しくて、ドキってして。
「あのさ、俺ずっと行きたかった場所があるんやけど、これから一緒に行かへん?」
『行きたかった場所…?』
「そう!!あなたちゃんと2人で行きたいなぁって思っててん!ダメかな…?」
『ううん、ダメじゃないよ。私も拓哉くんと一緒に行きたい!』
本当は、同じ班以外の人と、ましてや2人きりで行動するなんてルール違反。
だけど、私だって皆みたいに好きな人と一緒に居たいし、ちょっとぐらいならええよね…?
「じゃあ、はい!手、繋いで行こ?」
『…うんっ!』
そう言って、拓哉くんに差し出された手をとって、2人で恋人繋ぎをしながら歩き出す。
まさか修学旅行で拓哉くんと2人きりになれるなんて思っていなかったら
この状況が凄く嬉しくて。
そんな幸せを噛み締めるようにして、隣をを見れば大好きな拓哉くんの横顔があって。
やっぱりかっこいいなぁ、なんて見惚れていると
「あなた、着いたよ!」
いつの間にか目的地に着いていて、我に返って辺りを見渡すと
『何ここ!すっごい綺麗…!!』
拓哉くんが連れてきてくれたのは、市街地から少し離れた落ち着いた場所で
近くにある海も眺めることが出来きて。
でも、ここって…。
『教会…?』
「そう。ここにね、幸せになれる鐘があるらしいねん!それを恋人と一緒に鳴らすと、その2人は一生一緒に居られるって聞いたから。あなたちゃんと来たいなぁ~って。」
なんて、くるっと私の方を向きながら少し恥ずかしそうに拓哉くんはそう言って。
「嫌、やった…?」
『ううん、全然嫌なんかじゃないよ。むしろ、嬉しい…!』
"一生一緒"
好きな人にそう言われて、嫌だなんて思うわけがない。
それに、拓哉くんがそんな風に思ってくれていたんだって思ったら、余計に嬉しくて。
なんだか、それって…
『プロポーズみたい…。』
無意識のうちに私の口から出てしまったその言葉。
自分でそう言ってから、もしかしたら拓哉くんはそんな意味で言ったわけじゃ無かったのかも
なんて思ったら、なんだか恥ずかしくなって
『あっ、いや…、違くて!!ここすっごくいい場所だから、つい…!』
なんて、真っ赤になりながら必死に誤魔化そうとしている私に
拓哉くんは、優しい笑顔で笑っていて。
「そんなに焦らんでもええのに。笑 プロポーズって言っても、あながち間違ってないかもね!」
『えっ、?』
「だって、俺あなたちゃんと絶対に別れるつもりないもん!」
そう言いながら、私に笑顔を向けてくる拓哉くんはやっぱり凄くカッコよくて。
好きって気持ちでいっぱいになって。
「ねぇ、あなたちゃん。僕とずーっと一緒に居てくれますか?」
『はい…!!』
修学旅行2日目。
一生忘れることのない、拓哉くんとの大切な思い出。
「あなたちゃん、大好きやで。」
『私も、大好き。』
雲ひとつない、青空の下。
この先もずーっと、一緒に居られますように。
そんなお願いをしながら
私たちは、キスをした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。