第41話

〔長尾謙杜〕後輩
11,637
2020/07/31 14:09


「あなた先輩っ!!一緒に帰りましょ!」



『げぇっ、謙杜くん…!また来たん?笑』



「ちょっとあなた先輩!その反応は酷くないですか!?笑」



『だって、謙杜くんしつこいんだもん!』



「僕はあなた先輩が振り向いてくれるまでずーっと言い続けますからね?笑」



『えー、笑 そろそろ諦めてくれてもええんやけどなぁ~』



「諦めません! あなた先輩、好きです!付き合ってください!!」



『ごめんなさい。』



「もう、また即答!!もう少しぐらい考えてくれてもええやないですか!」



『だから、いつも言ってるでしょ?後輩と付き合うつもりはないって。』



「むぅっ、そんなの付き合ってみないとわからないかもしれへん…って、ちょっとあなた先輩!!置いていかないで下さいよ!」




毎日毎日、会う度に私に告白をしてくる、2つ年下の後輩の、謙杜くん。



別に、彼氏がいるとか、好きな人がいるとか、そういう訳ではないけれど



今までの人生で、好きな人すら1度も出来たことがない私にとって



誰かと付き合うこと自体、物凄くハードルが高いのに



いつもニッコニコの笑顔で、一途に私の後を追いかけてくる謙杜くんは



なんだか物凄く、眩しく見えて。




付き合うなんて、もってのほか。



それに…




『そもそも謙杜くんはどうして、私なんかがええの?』




ずーっと、不思議に思ってた。



謙杜くんは、優しい性格の上に、整った顔立ちをしているから



学年を問わず、学校中の女の子達から好かれる人気者。



そんな謙杜くんが、どうして私みたいな、ろくに恋愛もした事がないような人のことを



好きでいてくれるんだろうって。




「んー、どこが好きかって言われると、いまいちよくわからないかも?」



『何それ。笑 やっぱり謙杜くん、本当は私の事からかってるだけ…「でも!!」



「上手く言えへんけど、好きなんやもん!あなた先輩の、笑ってる顔も性格も、全部全部、好きなんです!…こんな理由じゃ、ダメですか…?」





なんて、私の目を真っ直ぐ見ながらそう言う謙杜くん。



その様子から、謙杜くんが嘘を言っていないことは一目瞭然で。



不覚にも私は、そんな謙杜くんにドキッとしてしまって。




『ダメ…、じゃないけど、だからって付き合うわけじゃないし…!』




その事を謙杜くんにバレないように、私が必死で誤魔化そうとすると




「あなた先輩って、素直じゃないですね。笑 嬉しかったなら素直にそう言えばええのに!」



『べ、別に誰も嬉しいなんて言ってないやん…!』



「そうですか?僕にはあなた先輩の顔にそう書いてあるように見えますけど。笑」




そう言って、ニコニコしながら私の方を見つめてくる謙杜くんに



なんだか私の考えている事が、全部見透かされているような気がして。




『あ、あんまり年上の事からかったりしたら、いけないんだから…!』



なんて、恥ずかしさのあまり、居てもたってもいられなくなった私は



この勢いのまま、この場を離れようとすると…




『…っ!?ちょっ、謙杜くん…、何して…!』




突然後ろから、謙杜くんに腕を引っ張られて



気づいた時には私は、謙杜くんに優しく抱きしめられていて。



ぐっと近くなった距離に、再びドキッとして



謙杜くんに聞こえてしまいそうなくらい、私の心臓は、大きく鼓動する。




『謙杜くん…っ、離して…?』



「嫌や、離したくない。だって、今離したらあなた先輩の本当の気持ち、聞けへんやん。」



『な、何言ってるん…!本当の気持ちも何も、私は謙杜くんとは付き合えないって、ずっと…!』



「だったら、どうしてそんなに顔、真っ赤になってるん?本当は、先輩だってドキドキしてるんやないんですか?」



『そ、それは…!いきなりこんな事されたら誰だって…!』



「あなた先輩。俺、本気であなた先輩の事が好きなんです。だから、いつもみたいに、誤魔化すんじゃなくて、ちゃんと。」


「あなた先輩の本当の気持ち、教えてくれませんか…?」




なんて、謙杜くんはそう言って。



本当は、自分でも、少し前から何となく気づいてた。



でも、こんな気持ちになったのは初めてで、どうしたらいいのかわからなくて



ずっと、認めるのが怖かった。



だからいつも、私は自分の気持ちを必死に誤魔化して、気づいていないふりをして。



でも、それももう、限界なのしれない。




『私も、謙杜くんのことが…好き…っ!』




いつの間にか、私も謙杜くんのことを好きなってしまっていたから。




「ふふ、やっと言ってくれた。笑 もう一生言ってくれないのかと思ったやん。」



『気づいてたなら、言わせないでよ…。』



「えー、だってあなた先輩から"好き"って直接言って欲しかったんやもん!」



『…謙杜くんのバカっ…。』



「へへ、うん。笑 ねぇ、あなた先輩。僕の彼女になってくれますか?」



『…うんっ。私で良ければ、お願いします…!』




そう言いながら、2人で抱きしめあって、笑い合って。


今までにないぐらい、幸せな気持ちでいっぱいになって。


そんな幸せを、私が噛み締めるように感じていると




「あなた先輩、油断しすぎ。笑」



『えっ、?…っ…!?』



突然、謙杜くんからのキスが降ってきて。




「年下だからって、あんまり油断しないで下さいね?」




そう言いながら、くしゃっと笑う謙杜くんは



年下のくせに、やっぱりちょっと生意気だけど。



そんな彼は、優しくて、カッコよくて。



私だけの、大切で大好きな、彼氏になった。






プリ小説オーディオドラマ