第77話

〔末澤誠也〕甘えたさん
9,805
2020/09/01 14:29


『誠也くん…。』



「んー?」



『ぎゅーってしたい…。』



「…っ!!」




俺の家のリビングで、2人でのんびりテレビを見ていると



突然、甘えた声でそう言ってくるあなた。




あまりに突然だったら、俺も少しびっくりしたけれど




「ん、ええよ。あなた、おいで?」




なんて、俺が大きく手を広げれば



ぱぁ~っと嬉しそうな顔をしながら、俺の方へとやって来て



あなたは、ぎゅーっと抱きついてきて。



俺も、優しく抱き締め返すように、あなたの背中に腕を回すと



恥ずかしくなったのか、俺から顔を見られへんように



そっと、俺の胸あたりに顔を埋めるあなた。




「ふふ、どうしたん、あなた。今日は甘えたさんの日なん?笑」




あなたが俺に甘えてくるのは、別に珍しい事ではない。



だけど、今日のあなたは、何だかいつにも増して、甘々なような気がして。



あなたの長くて綺麗な髪を優しく撫でながら、俺がそう聞くと



あなたは、首を小さく横に振るだけ。



「違うん?笑 じゃあ…、何か嫌なことでもあった?」




なんて、思い当たることを色々聞いてはみたものの



何を聞いてもあなたは



ただただ、ぎゅぅっと俺に抱きついてくるだけで。



嫌がってるのに、無理に言わせるのもあれやしなぁ。



なんて思って、あなたを安心させてあげるかのように、俺も。



そっと、あなたの事を抱きしめ返せば




『ね、誠也くん…。』




ようやく口を開いたあなたは



弱々しい声で、俺の名前を呼んできて。



「ん??どうした?」



優しく、俺がそう聞き返せば




『…ちゅー、して欲しい…っ。』




なんて、瞳を少し潤ませながら



縋るようにそう言ってくるあなた。




「ふふ、わかった。笑 じゃあ、こっち向いて?」




なんてそう言えば、俺の言う通りに、素直に顔をあげて待ってるあなたの姿は



めちゃくちゃ可愛いくて。



そんなあなたの唇に



俺はそっと、触れるだけの、優しいキスを落とす。



しばらくの間、2人でキスをして。



唇が離れれば、少し頬を赤らめながら



もう一度、あなたは顔を隠すように俺にぎゅーっと抱きついてきて。




「あなた、それじゃ顔見えへんやん。笑 ちゃんと見せて?」



『…いやっ、恥ずかしいもんっ…。』



「えー、キスして欲しいって言ってきたのは、あなたなのに?笑」




少しからかうように、俺がそう言えば



そぉーっと、俺の様子を伺うようにあなたは、こっちを向いてくれて。




「ふふ、やぁっとこっち、見てくれた。笑」



『だ、だって…っ。』



「なぁ、あなた。寂しかったら、寂しいって言ってもええんやで?」



『…っ、!?』




あなたが、こんなに甘々だった理由。



何となくだけど、俺にはわかった気がして。




『…で、でも、迷惑かけたくない…っ。』



「迷惑なんかやないよ?あなたの為やったら、俺はいつだって、どこだって駆けつけるし。」



『…っ、。』



「むしろ俺は、そういう事もっと言って欲しい。じゃないと、俺が寂しいから。笑」




なんて俺がそう言うと、あなたは安心したのか


俺に身体を委ねてきて。



『ねぇ、誠也くん。』



「んー?」



『…もう1回、ちゅー、して…?』




なんて、甘えた声で、あなたはそう言ってきて。



俺はそんなあなたに、もう一度キスをする。



だけど、それはさっきの、触れるだけのキスとは違って。



もっと深くて、もっと甘い。



そんなとろけるような、大人のキスで。




『…誠也、くん…っ。』



「あなた、ベット、いこっか。」




今夜はきっと



忘れられないくらい、甘い夜。






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