「…あなた、1回落ち着けって!! だからそれは、!」
『もういい!!!言い訳なんか聞きたない!!恭平くんとなんて、、、…恭平くんとなんてもう別れるっ!!』
「…あっ、ちょっおい…!!! あなたっ、!!」
恭平くんと付き合い始めて、そろそろ1年。
…こんな事、自分で言うのもなんやけど。
付き合いたての頃は、周りの人達から羨ましがられるぐらい、私達はラブラブで。
喧嘩だって、今まで1度もした事なんてなかったのに。
ついカッとなって、" 別れる " なんてそう言いながら
私が家を飛び出して来たのは、つい30分ぐらい前の事。
『…さむっ、、、。』
チラッと時計を見てみれば、日付が変わる10分前を指していて。
もう5月とはいえ、流石にこんな時間に、ましてやお風呂上がりに薄着で外に出てくれば
夜風は思っていた以上に冷たくて。
" 期待 " …なんて。
もうしないって決めたのに。
もう少しここで待っていれば、もしかしたら恭平くんが探しに来てくれるかもしれへん。
私の事を、見つけ出してくれるかもしれへん、…って。
結局、心のどこかでそんな事を期待している自分が居て。
本当は、…薄々気づいてた。
最近の恭平くんは、私の事を構ってくれへんどころか、私に何か隠し事をしているようで。
普段より帰りが遅くなった日は、決まっていつも。
私のでも、恭平くんのでもない。…甘い香りがする事も。
…恭平くんの事を疑うなんて、本当はそんな事したくないけれど。
日に日に募っていく不安に、これ以上は耐えられなくて、、、。
…もう、辞める。
恭平くんの事を好きでいるのも、恭平くんと会うのも。
これできっぱり自分の気持ちに区切りを付けるんやって。
やっとの事で、そう決心出来た。
…はずやったのに、、、。
「…あなたっ、!!!」
『…っ、!』
行くあてもなく、ただ気の向くままに夜道を1人で歩いていれば。
息を切らした恭平くんが、私の方へと駆け寄ってくるのと同時に
そのまま、ぎゅっと抱き締められて。
『きょうへ、「バカっ!!!」
「今何時だと思ってるん? こんな時間に女の子が1人で出歩いて…。こっちは、もしあなたに何かあったらって心配で…!!」
『…っ、、、。』
" 心配 " …って。きっと、恭平くんのその言葉が嘘じゃないって事は
恭平くんの顔を見れば、一目瞭然で。
「怪我とかは…?してへん、、?」
『…うんっ、。』
私が怪我をしていないと聞いて、安心した表情を見せる恭平くんに。
1度は決めた決断も、簡単に揺らいでしまうくらい。
私はまだ、恭平くんの事が大好きで…。
『…あのっ、「ごめんっ、!!」
「あなたを悩ませてたのも気づかずに、誤解させるようなことしてごめんっ…!!」
『…っ、!、、。』
「こんなの、言い訳にしか聞こえないかもしれへんけど、、、。…これ。」
『…えっ、、?』
「明日で俺たち、付き合って1年の記念日やろ? だからあなたに何かプレゼントしようと思ったんやけど、俺一人じゃ何がええとかわからんくて…。それで、色んな人にアドバイス貰っててん。」
そう言って、ちょっぴり照れくさそうな恭平くんから手渡されたのは
私がずっと欲しかった、ネックレスで…。
「俺が好きなのは、絶対絶対あなただけやからっ。…だから、、、。別れるなんて、言わんといて…?」
『…バカっ、。私だって、、。…恭平くんの事大好きやもんっ!』
「ふはっ、笑 …うんっ。知ってる。笑」
…なんて。
浮気じゃないってわかって安心したのと、恭平くんが私のことを思って用意してくれたプレゼントが嬉しくて。
ぎゅっと、恭平くんのことを抱き締めながら、私がそう言えば。
恭平くんも。同じように私のことを、優しく抱き締め返してくれて。
「大好きやで、あなた。」
『私もっ。…大好きだよ、恭平くんっ。』
…なんて、そう言って。
この幸せを噛み締めるように。
星が綺麗に輝く夜空の下を。
私たちは、2人並んで歩き出した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。