「…ねぇ、あなたちゃん。」
『ん~??……なに、?』
「………ねぇ、こっち来て?」
『んー?…ぅん、後でね。』
「………。…ねぇ、あなたちゃ『あぁ~、ほんっまに可愛いっ!!癒される~!』
「………。」
休日。
お家デートという名の元で、僕の家に遊びに来たのは、付き合って1年になるあなたちゃん。
…正直僕は、お家デートなんか、全然好きじゃない。
あなたちゃんのお家にお邪魔するのであればまだいいけれど、僕の家でデートってなると…
『はぁ~、やっぱりときくん可愛いすぎるっ!ね、流星今の見てた!?めっちゃ可愛くない!?』
毎回と言っていいほど、あなたちゃんはときくんに夢中で、僕の事は後回し。
…っていうか、ほとんどスルー。
そりゃぁ、ときくんが可愛いのは認めるし?
飼い主である僕が、ときくんの可愛さをわかっていない訳やない。
でもさ??せっかくのお家デートやで?
ときくんもええけど、僕のことだって見て欲しいやんか…!!
…なんてそんな僕の願いも虚しく、今日も、相変わらず僕のことなんかそっちのけで
ときくんに夢中になっているあなたちゃん。
…ええもんっ!こうなったら、、、
「…あなたちゃんっ、!」
『えっ、?…わぁっ、!!……流星、、!?』
不意打ちで、後ろから勢いよくぎゅーっと抱きつけば
やぁ~っと、僕の方も見てくれて。
『流星…?…あのっ、もしかして怒ってるん…??』
ぷくっと頬を膨らませて、不貞腐れているように振る舞えば
少し焦ったように、僕の顔を覗き込みながら、そう言ってくるあなたちゃん。
「別に…、怒ってないっ。…怒ってないけど…、、」
『けど、、?』
「…ときくん。…可愛ええよね。」
『へっ、?』
「僕よりも、ときくんの方が、何百倍も可愛ええもんねっ。」
あなたちゃんに相手にして貰えなくて、いじけてた。
なんて、自分からそう言うのは何だかちょっと恥ずかしくて。
少し遠回しにやけど、伝えてみれば…
『…もしかして流星、ときくんに嫉妬…してたん?』
「…なっ、!別に、、嫉妬ってわけじゃ…!」
『ふふっ、流星可愛い。笑 私がときくんの事ばっかりやったから、いじけてたんや~?笑』
「だーかーら!そうじゃなくて…!」
結局、僕が考えていた事なんか、あなたちゃんには、バレバレで。
ニヤニヤしながら、ここぞとばかりに僕の事をからかってくるあなたちゃん。
「もう、嫌やっ…。言わなきゃ良かった、、。」
『ふふっ。笑 大丈夫だよ、流星。だって、確かにときくんも可愛けどさ?』
『でも、私の中で1番可愛くて、カッコよくて、大好きなのは、流星だけやもんっ!』
「…っ!」
『だからそんなに心配しなくても、最初から私には流星のことしか見えてないんやで?』
なんて、ぎゅってしながらそう言ってくるあなたちゃんは、すっごくすっごく可愛くて。
「そんなの…、僕だって同じやしっ…!」
『うんっ、知ってる。笑 流星、私のこと大好きだもんね?笑』
「…あなたちゃんだって、本当は僕のこと大好きなくせにっ。笑」
『ふふ、さぁ~?笑 どーやろ?笑』
くしゃっとした、優しい笑顔を見せるあなたちゃんに、きゅんってして。
「…じゃあ、今から僕があなたちゃんに、大好きって言わせたるっ。」
『えっ、?…わぁ、!…ちょっ、待って流星…!!』
「待たれへん。その気にさせたの、あなたちゃんやんっ。」
そのまま、優しくベットに押し倒せば、少し焦った様子のあなたちゃん。
そんな姿さえも、全部が全部、愛おしくて。
『ねっ、流星、、…ときくん、、。』
「ふふっ、そんな事心配してたん?笑 可愛いっ。」
「…でも、大丈夫やで? ときくんなら、誰にも言ったりせえへんから。」
なんて、そっと優しくキスをすれば
満更でもない様子のあなたちゃんに
本当は僕だって。
最初から、こうなる事を期待して、ときくんの力を借りてみた
…なんて、そんな事。ぜっーたい。
あなたちゃんには、内緒やから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。