第116話

〔大西流星〕猫
7,463
2020/11/25 08:40

「…ねぇ、あなたちゃん。」



『ん~??……なに、?』



「………ねぇ、こっち来て?」



『んー?…ぅん、後でね。』



「………。…ねぇ、あなたちゃ『あぁ~、ほんっまに可愛いっ!!癒される~!』



「………。」



休日。



お家デートという名の元で、僕の家に遊びに来たのは、付き合って1年になるあなたちゃん。



…正直僕は、お家デートなんか、全然好きじゃない。



あなたちゃんのお家にお邪魔するのであればまだいいけれど、僕の家でデートってなると…



『はぁ~、やっぱりときくん可愛いすぎるっ!ね、流星今の見てた!?めっちゃ可愛くない!?』



毎回と言っていいほど、あなたちゃんはときくんに夢中で、僕の事は後回し。



…っていうか、ほとんどスルー。



そりゃぁ、ときくんが可愛いのは認めるし?



飼い主である僕が、ときくんの可愛さをわかっていない訳やない。



でもさ??せっかくのお家デートやで?



ときくんもええけど、僕のことだって見て欲しいやんか…!!



…なんてそんな僕の願いも虚しく、今日も、相変わらず僕のことなんかそっちのけで



ときくんに夢中になっているあなたちゃん。



…ええもんっ!こうなったら、、、



「…あなたちゃんっ、!」



『えっ、?…わぁっ、!!……流星、、!?』



不意打ちで、後ろから勢いよくぎゅーっと抱きつけば



やぁ~っと、僕の方も見てくれて。



『流星…?…あのっ、もしかして怒ってるん…??』



ぷくっと頬を膨らませて、不貞腐れているように振る舞えば



少し焦ったように、僕の顔を覗き込みながら、そう言ってくるあなたちゃん。



「別に…、怒ってないっ。…怒ってないけど…、、」



『けど、、?』



「…ときくん。…可愛ええよね。」



『へっ、?』



「僕よりも、ときくんの方が、何百倍も可愛ええもんねっ。」



あなたちゃんに相手にして貰えなくて、いじけてた。



なんて、自分からそう言うのは何だかちょっと恥ずかしくて。



少し遠回しにやけど、伝えてみれば…



『…もしかして流星、ときくんに嫉妬…してたん?』



「…なっ、!別に、、嫉妬ってわけじゃ…!」



『ふふっ、流星可愛い。笑 私がときくんの事ばっかりやったから、いじけてたんや~?笑』



「だーかーら!そうじゃなくて…!」



結局、僕が考えていた事なんか、あなたちゃんには、バレバレで。



ニヤニヤしながら、ここぞとばかりに僕の事をからかってくるあなたちゃん。



「もう、嫌やっ…。言わなきゃ良かった、、。」



『ふふっ。笑 大丈夫だよ、流星。だって、確かにときくんも可愛けどさ?』



『でも、私の中で1番可愛くて、カッコよくて、大好きなのは、流星だけやもんっ!』



「…っ!」



『だからそんなに心配しなくても、最初から私には流星のことしか見えてないんやで?』



なんて、ぎゅってしながらそう言ってくるあなたちゃんは、すっごくすっごく可愛くて。



「そんなの…、僕だって同じやしっ…!」



『うんっ、知ってる。笑 流星、私のこと大好きだもんね?笑』



「…あなたちゃんだって、本当は僕のこと大好きなくせにっ。笑」



『ふふ、さぁ~?笑 どーやろ?笑』



くしゃっとした、優しい笑顔を見せるあなたちゃんに、きゅんってして。



「…じゃあ、今から僕があなたちゃんに、大好きって言わせたるっ。」



『えっ、?…わぁ、!…ちょっ、待って流星…!!』



「待たれへん。その気にさせたの、あなたちゃんやんっ。」



そのまま、優しくベットに押し倒せば、少し焦った様子のあなたちゃん。



そんな姿さえも、全部が全部、愛おしくて。



『ねっ、流星、、…ときくん、、。』



「ふふっ、そんな事心配してたん?笑 可愛いっ。」



「…でも、大丈夫やで? ときくんなら、誰にも言ったりせえへんから。」



なんて、そっと優しくキスをすれば



満更でもない様子のあなたちゃんに



本当は僕だって。



最初から、こうなる事を期待して、ときくんの力を借りてみた



…なんて、そんな事。ぜっーたい。



あなたちゃんには、内緒やから。








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