第20話

〔正門良規〕先生
13,228
2020/07/10 13:28


『良ちゃん先生!!好きです!!』



「はいはい、ていうか良ちゃん先生ってなんやねん。笑」



『正門良規だから、良ちゃん先生!!
あ、もしかして先生この呼び方嫌なん?笑
じゃあ、よっしーは?これならええやろ!』




「ほら、あなたさん。そんな事言ってないで、早くこの問題解いて?」




『もう!!無視しないで下さいよ!
それと、告白の返事。そろそろちゃんとしてください!!』




「だから、それはいつも言ってるやろ?生徒と付き合うなんてありえないって。」



『むぅっ…。』




私が通う学校の数学の先生で、担任の先生でもある正門先生。



正門先生は、若くて、面白くて、おまけにカッコよくて。



皆から慕われている、人気者。



そんな正門先生に、私は1年生の時からずっと、恋をしている。



でも、どれだけ私がアタックをしても、何度告白をしても



正門先生は "生徒と付き合うなんてありえない"



の一点張りで、全然振り向いてくれへん。



きっと、先生にとって私なんて、鬱陶しいだけのただの生徒に過ぎなくて



恋愛対象ですら、ないのかもしれへん。



だけど私は…




『先生、全部解けたよ!』



「んー、じゃあ見せてみて?」




答え合わせをするために、隣に座っている正門先生との距離が、少し近くなるだけでも



胸が高鳴って、ドキドキして。





「凄いやん!全問正解やで!」



『やっぱり私、やれば出来る子だから!笑』



「この調子で次のテストでも赤点取らないように、ちゃんと勉強するんやで?」



『は~い!気が向いたらね!笑』



「あのなぁ、、笑 あんまり赤点ばっかり取ってると本当に卒業出来ひんで?」



『わかってますー!!』




毎回テストで赤点ばかり取っていたら、留年になることぐらいわかってる。



だけど、そもそも私は勉強が出来ないから赤点になってる訳やない。



テストだって、本当はちゃんとやれば普通に点数だって取れる。



だけど、こうでもしないと私が正門先生と2人きりになれるチャンスはないし



多分、気にかけてもらうことだって出来ないから。





『ねぇ、正門先生。もし、私が留年したら先生はどうする?』





この先、私がどんなに頑張ったって、何度告白したって



正門先生が私を好きになってくれることは、多分ない。



もしこのまま、私が高校を卒業してしまったら



正門先生と、もう簡単には会うことが出来なくなる。



そんな事になるぐらいやったら…




『先生、私卒業なんてしたくない…。正門先生と毎日会えなくなるなんて、耐えられへん…。』





正門先生と会えるんやったら、少しでもチャンスがあるんやったら



私は留年したって構わない。



だけど…




「何言ってんねん。留年なんかせんと、ちゃんと卒業した方がええに決まっとるやろ?」




教師である以上、正門先生がそう言う事は当然で。




『だって、卒業したらもう簡単に会えなくなっちゃうんだよ?先生は鬱陶しい生徒が居なくなって、スッキリするかもしれへんけど、私は…!!』




私はそんなの、耐えられへん。



そう私が言おうとすると




「なんで?なんで卒業したら会えへんの?」




なんて、真面目な顔でそう聞いてくる正門先生。





『だって、先生は私の事なんて好きやないから…、卒業したらもう…。』



「ねぇ、あなたさん。俺あなたさんの事好きやないなんて、一言も言ってないで?」



『で、でも先生私が何度告白したって毎回…!』



「だってそれは、流石に教師が生徒に手を出す訳に行かへんやろ?」



『じゃあ、やっぱり先生は私の事なんて…!』



「でもさ、よく考えてみて?あなたさんが卒業したら、もう先生と生徒って関係じゃ無くなるんやで?」



『えっ…?』



「だから、俺としては今すぐにでも卒業して欲しいんやけどなぁ~」





なんて、私の方を見ながら正門先生はそう言ってきて。



だけど、正門先生のその言葉を私はなかなか信じられへんくて。



だって、だってそれってつまり、正門先生も私のことを…。




「あなた。卒業したら、ちゃんと俺の気持ちも伝えるから。だから、もう少しだけ待っててくれる?」



『…うんっ…!』






諦めかけてたこの恋が、桜の元で咲き誇るには



もう少しだけ辛抱がいるけれど




『正門先生!大好き!!』




それでも私は、正門先生が1番好き。






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