『良ちゃん先生!!好きです!!』
「はいはい、ていうか良ちゃん先生ってなんやねん。笑」
『正門良規だから、良ちゃん先生!!
あ、もしかして先生この呼び方嫌なん?笑
じゃあ、よっしーは?これならええやろ!』
「ほら、あなたさん。そんな事言ってないで、早くこの問題解いて?」
『もう!!無視しないで下さいよ!
それと、告白の返事。そろそろちゃんとしてください!!』
「だから、それはいつも言ってるやろ?生徒と付き合うなんてありえないって。」
『むぅっ…。』
私が通う学校の数学の先生で、担任の先生でもある正門先生。
正門先生は、若くて、面白くて、おまけにカッコよくて。
皆から慕われている、人気者。
そんな正門先生に、私は1年生の時からずっと、恋をしている。
でも、どれだけ私がアタックをしても、何度告白をしても
正門先生は "生徒と付き合うなんてありえない"
の一点張りで、全然振り向いてくれへん。
きっと、先生にとって私なんて、鬱陶しいだけのただの生徒に過ぎなくて
恋愛対象ですら、ないのかもしれへん。
だけど私は…
『先生、全部解けたよ!』
「んー、じゃあ見せてみて?」
答え合わせをするために、隣に座っている正門先生との距離が、少し近くなるだけでも
胸が高鳴って、ドキドキして。
「凄いやん!全問正解やで!」
『やっぱり私、やれば出来る子だから!笑』
「この調子で次のテストでも赤点取らないように、ちゃんと勉強するんやで?」
『は~い!気が向いたらね!笑』
「あのなぁ、、笑 あんまり赤点ばっかり取ってると本当に卒業出来ひんで?」
『わかってますー!!』
毎回テストで赤点ばかり取っていたら、留年になることぐらいわかってる。
だけど、そもそも私は勉強が出来ないから赤点になってる訳やない。
テストだって、本当はちゃんとやれば普通に点数だって取れる。
だけど、こうでもしないと私が正門先生と2人きりになれるチャンスはないし
多分、気にかけてもらうことだって出来ないから。
『ねぇ、正門先生。もし、私が留年したら先生はどうする?』
この先、私がどんなに頑張ったって、何度告白したって
正門先生が私を好きになってくれることは、多分ない。
もしこのまま、私が高校を卒業してしまったら
正門先生と、もう簡単には会うことが出来なくなる。
そんな事になるぐらいやったら…
『先生、私卒業なんてしたくない…。正門先生と毎日会えなくなるなんて、耐えられへん…。』
正門先生と会えるんやったら、少しでもチャンスがあるんやったら
私は留年したって構わない。
だけど…
「何言ってんねん。留年なんかせんと、ちゃんと卒業した方がええに決まっとるやろ?」
教師である以上、正門先生がそう言う事は当然で。
『だって、卒業したらもう簡単に会えなくなっちゃうんだよ?先生は鬱陶しい生徒が居なくなって、スッキリするかもしれへんけど、私は…!!』
私はそんなの、耐えられへん。
そう私が言おうとすると
「なんで?なんで卒業したら会えへんの?」
なんて、真面目な顔でそう聞いてくる正門先生。
『だって、先生は私の事なんて好きやないから…、卒業したらもう…。』
「ねぇ、あなたさん。俺あなたさんの事好きやないなんて、一言も言ってないで?」
『で、でも先生私が何度告白したって毎回…!』
「だってそれは、流石に教師が生徒に手を出す訳に行かへんやろ?」
『じゃあ、やっぱり先生は私の事なんて…!』
「でもさ、よく考えてみて?あなたさんが卒業したら、もう先生と生徒って関係じゃ無くなるんやで?」
『えっ…?』
「だから、俺としては今すぐにでも卒業して欲しいんやけどなぁ~」
なんて、私の方を見ながら正門先生はそう言ってきて。
だけど、正門先生のその言葉を私はなかなか信じられへんくて。
だって、だってそれってつまり、正門先生も私のことを…。
「あなた。卒業したら、ちゃんと俺の気持ちも伝えるから。だから、もう少しだけ待っててくれる?」
『…うんっ…!』
諦めかけてたこの恋が、桜の元で咲き誇るには
もう少しだけ辛抱がいるけれど
『正門先生!大好き!!』
それでも私は、正門先生が1番好き。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。