第58話

〔道枝駿佑〕秘密の恋愛
10,191
2020/08/14 13:27


時刻は午後6時。



窓から夕日が差し込む教室で、私が1人、資料の整理をしていると…




「あなたせーんせい!!」



『…っ!?』



突然、今まで無音だった教室に響き渡る、私の名前を呼ぶ明るい声。



ぱっと、声がした方に私が振り返ると




『なぁ~んだ、道枝くんか!ビックリした~。笑』




そこには、ニコニコしながら立っている道枝くんがいて。




「なんだってなんやねん!笑 先生もっと俺の事も大切に扱ってや~!笑」



『ごめんごめん。笑 っていうか道枝くんまだ残ってたの?もう下校時刻過ぎてるから、早く帰りなさい。』



「えー、あなたちゃんの事待ってたらあかん?」



『ダーメ。道枝くんは帰りなさい。それと、"あなたちゃん"じゃなくて、"あなた先生"ね?』



「むぅっ、あなたちゃんのケチっ…。」



『道枝くん、今の話聞いてた?笑 学校ではちゃんと先生って、…っ!?ちょっ、道枝くん何してっ…!』



私がまだ全部話し終わらないうちに、どんどんと道枝くんは私の方へと近づいてきて



そのまま私を包み込むように、抱き締めてきて。




『ねぇ道枝くんっ、離して…!ここ、学校!!もし誰かに見られたら…!!』



「わかってるよ。わかってるけど、あなたちゃんが悪いんじゃん。」



『えっ、?』



「そうやって俺のこと子供扱いして、余裕そうなのムカつく。俺やって、あなたちゃんの彼氏やのに…!」



なんて、ちょっと不貞腐れながらそう言う道枝くん。



道枝くんの言う通り、私たちの関係は単なる教師と生徒の関係なんかじゃない。



私は、生徒の1人である駿佑くんと付き合っている。



もちろんこの事は、誰にもバレてはいけないから、私たち2人だけの秘密の関係で。




「いっつも俺ばっかりあなたちゃんの事好きみたい。なぁ、あなたちゃんは俺と2人きりになれて、嬉しくないん?」



『そんな訳、ないやんっ…。』




私だって駿佑くんと一緒に居られるのは嬉しいし



なんならこの時間がずーっと続けばいいのにって、そう思う。



だけど、私たちが教師と生徒である以上



いくら付き合っているとはいえ



年上の私が少しでもしっかりしないと、きっと、歯止めが効かなくなってしまうから。



だから今まで、頑張って自分の気持ちを抑えてたのに。




「ねぇ、あなたちゃん。俺やってもう子供じゃないんやし、もっと甘えてよ。俺寂しいなぁ~。」




なんて、そう言われれば



『駿佑くんの、バカっ…。』



ここが学校だってわかってるのに、止まらなくなる。



優しく包み込んでくれる駿佑くんに身を任せるように、私はぎゅーっと抱きついて。



「ふふ、あなたちゃんに甘えて貰えるなら、バカでもええもん。笑」



そんな、私の気持ちに応えてくれる駿佑くんに対して、溢れてくるのはただ1つ。



『駿佑くん、好き。大好きっ。』




"好き"って気持ちでしかなくて。



「俺も、あなたちゃんのこと大好きやで。」




なんて、お互いの気持ちを伝え合いながら



放課後の教室で、私たちは甘いキスをして。




『駿佑くん、大好きだよ。』




駿佑くんと一緒に居られるだけでも、幸せをだって



そう感じてしまう私は



きっと、自分で思っているよりも



駿佑くんとのこの秘密の恋に、溺れてる。







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