時刻は午後6時。
窓から夕日が差し込む教室で、私が1人、資料の整理をしていると…
「あなたせーんせい!!」
『…っ!?』
突然、今まで無音だった教室に響き渡る、私の名前を呼ぶ明るい声。
ぱっと、声がした方に私が振り返ると
『なぁ~んだ、道枝くんか!ビックリした~。笑』
そこには、ニコニコしながら立っている道枝くんがいて。
「なんだってなんやねん!笑 先生もっと俺の事も大切に扱ってや~!笑」
『ごめんごめん。笑 っていうか道枝くんまだ残ってたの?もう下校時刻過ぎてるから、早く帰りなさい。』
「えー、あなたちゃんの事待ってたらあかん?」
『ダーメ。道枝くんは帰りなさい。それと、"あなたちゃん"じゃなくて、"あなた先生"ね?』
「むぅっ、あなたちゃんのケチっ…。」
『道枝くん、今の話聞いてた?笑 学校ではちゃんと先生って、…っ!?ちょっ、道枝くん何してっ…!』
私がまだ全部話し終わらないうちに、どんどんと道枝くんは私の方へと近づいてきて
そのまま私を包み込むように、抱き締めてきて。
『ねぇ道枝くんっ、離して…!ここ、学校!!もし誰かに見られたら…!!』
「わかってるよ。わかってるけど、あなたちゃんが悪いんじゃん。」
『えっ、?』
「そうやって俺のこと子供扱いして、余裕そうなのムカつく。俺やって、あなたちゃんの彼氏やのに…!」
なんて、ちょっと不貞腐れながらそう言う道枝くん。
道枝くんの言う通り、私たちの関係は単なる教師と生徒の関係なんかじゃない。
私は、生徒の1人である駿佑くんと付き合っている。
もちろんこの事は、誰にもバレてはいけないから、私たち2人だけの秘密の関係で。
「いっつも俺ばっかりあなたちゃんの事好きみたい。なぁ、あなたちゃんは俺と2人きりになれて、嬉しくないん?」
『そんな訳、ないやんっ…。』
私だって駿佑くんと一緒に居られるのは嬉しいし
なんならこの時間がずーっと続けばいいのにって、そう思う。
だけど、私たちが教師と生徒である以上
いくら付き合っているとはいえ
年上の私が少しでもしっかりしないと、きっと、歯止めが効かなくなってしまうから。
だから今まで、頑張って自分の気持ちを抑えてたのに。
「ねぇ、あなたちゃん。俺やってもう子供じゃないんやし、もっと甘えてよ。俺寂しいなぁ~。」
なんて、そう言われれば
『駿佑くんの、バカっ…。』
ここが学校だってわかってるのに、止まらなくなる。
優しく包み込んでくれる駿佑くんに身を任せるように、私はぎゅーっと抱きついて。
「ふふ、あなたちゃんに甘えて貰えるなら、バカでもええもん。笑」
そんな、私の気持ちに応えてくれる駿佑くんに対して、溢れてくるのはただ1つ。
『駿佑くん、好き。大好きっ。』
"好き"って気持ちでしかなくて。
「俺も、あなたちゃんのこと大好きやで。」
なんて、お互いの気持ちを伝え合いながら
放課後の教室で、私たちは甘いキスをして。
『駿佑くん、大好きだよ。』
駿佑くんと一緒に居られるだけでも、幸せをだって
そう感じてしまう私は
きっと、自分で思っているよりも
駿佑くんとのこの秘密の恋に、溺れてる。
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リクエストありがとうございました🍀
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。