第23話

〔長尾謙杜〕たまには甘えて?
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2020/07/13 13:58



今日は、彼女のあなたと久しぶりのお家デート日。




2人でテレビを見たり、漫画を読んだりしながらのんびーりしていると…





『謙杜…。』



「ん?あなたどうしたん?」



『ううん、何でもない…。』





さっきからずっと、あなたは甘えた声で僕の名前を呼んできて



だけど、肝心の何をして欲しいのか、まではちゃんと言ってくれへん。



まぁ、こんな風にあなたが僕の名前を呼ぶ時は



いつも決まって、甘えたいって思っている時やから、今日もそうなんだと思うけど



あなたの性格上、恥ずかしさからなのか、名前を呼ぶのが精一杯で



それに気づいた僕が自分からあなたの方へ行かない限り



あなたから僕の方に甘えに来てくれたことは、今までに1度もない。



もちろん、僕もあなたとイチャイチャしたいし、甘えたいって思ってくれるのだって嬉しいし



今のままでもええんやけど…。



やっぱり、男の僕からしたら、自分からあなたにくっつきに行くよりは



あなたから来てくれた方が嬉しいなぁ、なんて思ったりもして。



だから今日は、ちょっと意地悪かもしれへんけど、あえて気づいていないフリをして



あなたが自分から来てくれるまで、待ってみようと思う。




まあ、そうは言っても、もうあなたの甘えたいアピールが始まってから1時間。



そろそろ、あなたも自分から来てくれるかな~



なんて、思っていると




『けんと…っ、!』




さっきまでの甘えた声とは打って変わって、か細くて縋るように僕の名前を呼んでくるあなた。



その声に思わずぎょっとして顔をあげると



流石にちょっと意地悪しすぎてしまったのか



あなたは涙目になりながら、僕の方を見ていて。





「ごめん、ちょっと意地悪しすぎちゃった。でももうせえへんから、大丈夫やで?」




そう言いながら、僕があなたの方に近づいていって



そっと抱きしめると、あなたもぎゅーっと抱きしめ返してきて。





『謙杜に嫌われたかと思った…。』




なんて、小さな声で呟くあなた。





「僕があなたのこと嫌いになるわけないやろ?」



『でも、呼んでも来てくれへんかったやん。』



「だってそれは…、たまにはあなたから俺の所に甘えに来て欲しかったんやもん!」



『…えっ、?』



「あなたいっつも自分からは来てくれへんやん…!」



『だって…!なんか恥ずかしいんだもん…!』




なんて、僕の腕の中で顔を真っ赤にしながらそう言うあなたは、すっごく可愛くて。



なんかもう、あなたから甘えに来てくれても、くれなくてもどっちでもええかな



って、そう思えてきて。




「あーも!!やっぱり大好き!!」



『わぁっ、ちょっ謙杜…!苦しいっ…!!』




さっきよりも強くあなたを抱きしめる。




「あなた、好きだよ。大好き。」



『うん。笑 私も、謙杜のこと大好き。』




なんて、そう言いながら2人で笑いあって。



幸せだなぁって思っていると





『ねぇ、謙杜…。』



「ん?」



『ちゅー、して…?』




なんて、突然あなたがそう言ってきて。




「可愛すぎやからっ…。」




僕は、あなたの唇に優しくキスを落とす。




『っ、』



「あなた、顔真っ赤。笑」




唇を離せばあなたは、耳まで真っ赤になっていて。



だけど、そんなあなたはやっぱり僕にとっては1番可愛くて。




「大好きやで、あなた。」




恥ずかしがり屋のあなたも、甘々なあなたも。



ぜーんぶ、大好きやで。





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