第142話

〔高橋恭平〕嫌いじゃないから
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2021/02/09 09:52


友達「あなた~!!この後皆でカラオケ行くんやけど、あなたも行かへん?あ、高橋くんも!一緒にどう?」



『あ~、ごめんっ。私今日、先生から資料の整理頼まれてて、、。』



「ごめん、俺も今日はパス!この後予定あるねん!また誘ってな?」



友達「えー、2人とも来れへんの!? 2人が居らんとつまらんやんっ!!!」



『ごめんね?次は絶対行くから!ね、?』



友達「もぉー、しょうがないなっ!次は絶対だからね!約束だよ!?」



『わかってるって!笑 あ、ほら。早く行かないと皆に置いてかれるで?笑』



友達「えっ、それはあかん! じゃあ2人ともまた明日!!!」




なんて、慌ただしく教室から出ていく友達と



皆が帰って、すっかり静かになった教室に取り残された私と高橋くん。



「『……………。』」




き、気まずい、、、。



高橋くんとは1年生の時から同じクラスで、何度か話した事がある程度。



だけど多分高橋くんは、私のことが……嫌い。



そういうのって、何となくわかったりするやん?



でも高橋くんの場合は、それが物凄ーくわかりやすい。



普段の高橋くんは凄く明るくて、女の子とだってニコニコしながら楽しそうに話しているのに。



私にだけは、いっつも素っ気なくて、笑顔を向けてくれた事なんて、今まで1度もない。



だからきっと、私は高橋くんに嫌われてるやろうなぁ、、。



って、そう考えると、何だかちょっぴり胸がズキズキするけれど。



…今はそんな事より!!



この大量の資料早くどうにかしないと!!!



なんて、私が資料の整理を始めようとすると…



「…半分貸して、それ。」



『へっ、、?』



「ええから、早く。貸して?」



なんて、突然高橋くんがそう言って。



あまりに突然だったから、訳も分からず、私が固まっていれば



「はぁ…っ。まぁ、別にええけど。勝手にやるし。」



1回大きく溜息をついてから、大量の資料のちょうど半分ぐらいを自分の方へと引き寄せて


徐ろに、私の隣の席へと座る高橋くん。



『えっ、、えっ!?、、いや高橋くん何して…!』



「何って、、。手伝ってるんやけど。見てわからん?」



『それはわかるけど…っ!、でも高橋くんさっきこの後予定あるって、、!』



「あー、あれ嘘。…っていうか、喋ってないで早くやらんと、一向に帰れないで?」



なんてそう言いながら、高橋くんは黙々と作業を進めていて。



私も、高橋くんに促されるまま、資料の整理を始めたけれど



高橋くんは私の事なんて、嫌いなはずなのに。



…どうして、、?



どうしてわざわざ私の為に、こんな面倒くさい事を手伝ってくれるんだろう



って、そんな事ばかりを考えていれば



いつの間にか、あれだけあった資料も、最後の1つになっていて。



「これで最後やな。…じゃ、俺帰るから。」



なんて、終わるや否や、すぐに教室から出ていこうとする高橋くん。



…本当にこのままでええの?



いくら嫌われてるからって、せっかく手伝ってくれたのに、お礼も言わないままで本当にええの…?



なんてそう思ったら、考えるよりも先に、体が動いていて。



『ま、待って、!!』



「…何?」



『あ、あのっ、、!…ありがとうっ! 手伝ってくれて、、。』



「…別に。これぐらい、気にしなくていいから。それより、時間。」



『えっ、?』



「あと10分で下校時刻やけど。そんなにゆっくりしててええの?」



『えっ、!?…あ、本当だ!! 早くしないと先生に怒られ…っ、わぁっ、!!!』




…あぁ、何やってるんやろう私。



高橋くんが目の前にいるっていうのに、机に足を引っ掛けて転ぶなんて、そんな小学生みたいなこと。



こんなの恥ずかしすぎるし、めっちゃ痛……



ん…?痛くない?



「…ったぁ、、。」



『えっ、わっ、!…ご、ごめんっ!!高橋くん…!!怪我してない、、?』



「俺は大丈夫やけど。…あなたちゃんは?怪我してへん?」



『うんっ。私も高橋くんのおかげで何とか大丈夫、、。』



「それならええんやけど。…っていうか、意外とおっちょこちょいなんやなっ、あなたちゃん。笑」



『そ、そんな事ないよ!これはたまたまで…っ!』



「えー、絶対嘘っ!笑 だってあなたちゃん、なんか危なっかしいんやもんっ!笑」



『…っ!!……高橋くんが、、笑った…っ、!』




ふと、高橋くんの方を見てみれば、高橋くんは楽しそうに笑っていて。



「何それ。笑 やっぱりあなたちゃんって天然?笑」



『だ、だって…!高橋くん、私と話す時いつも素っ気ないから、てっきり嫌われてるんだと…!』



「…っ、!……………じゃ、……からっ。」



『えっ、?』



「嫌いじゃないから、!…あなたちゃんの事。」



『っ、!!』




「むしろ、あなたちゃんの事ずっと気になってて…!俺、素直じゃないから、、。だからあんな態度とってた…って、何言ってんだ俺!」



「今の忘れてええからっ!…あ~、ほらあれやっ!!時間ないし、早く帰らないと先生に…」



なんて、照れくさそうにそう言いながら



必死に言い訳をしている高橋くんの姿は、何だかとっても可愛くて。



嫌われた訳じゃなかったんだってわかって、ほっとするのと同時に



"気になってた" なんて。



高橋くんのその言葉が、私にとっては、ものすっごく嬉しくて…。



『高橋くんっ。』



「…ん、?」



『私も好きだよ、高橋くんのこと。』



「…~~っ!…あかんっ、、。今の可愛すぎっ、!」



『…わぁっ、!…高橋くん、!』




なんて、ぎゅっと抱きしめ合いながら



2人で笑いあったのは。



下校時刻の5分前。









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