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第1話

〔長尾謙杜〕高嶺の花
7,078
2021/01/31 06:52


「あっ、!あなた先輩~!!」



『…うわっ、、。違います、人違いです。』



「もぉー、嘘つかないで下さいよっ!」



『…はぁっ、、。謙杜くん、今度は何しに来たん?』



「むぅっ、またそうやって!本当はわかってるくせにっ!!あなた先輩、僕と一緒に帰りまs『ごめん、私今日バイトやねんっ。』



「先輩、僕もうその手には引っかかりませんっ!!あなた先輩バイトしてないもんっ!」



『…でも、謙杜くんとは帰るとは言ってない。』



「え、?…あっ、ちょっ!!あなた先輩、待って下さいよ!!」



放課後。



授業の終わりを告げるチャイムが鳴るのと同時に、教室を出で、一直線に向かうのは



僕より1つ年上で3年生の、あなた先輩の所。



…って言っても、僕があなた先輩に相手にされた事なんて、今まで1度だってないんやけど。笑



「はぁはぁ、、やっと追いついたっ!!」



『…っ、、来なくてええのにっ、、。』



「もぉー、先輩の頑固!!先輩が振り向いてくれるまで、僕ずっと来ますからねっ!あなた先輩、好きですっ!!僕と付き合ってくだ『ごめんなさい。』



「だーかーらっ!もうちょっとぐらい考えてくれてもええやないですかっ!」



『考えた所で変わらないもんっ。…っていうか、こんなに私の所ばっかり来てたら、謙杜くん友達居なくなるで?笑』



「別にええもんっ!僕はあなた先輩だけ居てくれれば構わへんし?」



『…っ、!…け、謙杜くんが良くても、私が良くないの…!!』



「あっ、あなた先輩、もしかして今照れました?笑 顔真っ赤やんっ!! 可愛い~!」



『…も、もぉー!年下のくせに、先輩のことからかわないのっ!!』



なんて、僕がからかったせいなのか、ちょっぴりむすっとしながら、早足で歩くあなた先輩。



あなた先輩は、勉強も運動も何でも完璧で、学年問わず誰もが憧れる "高嶺の花" な存在で。



それに比べて僕は年下やし、頼りないし



あなた先輩と付き合えるなんて、正直僕だって思ってないけれど。



でも、好きになっちゃったんだもんっ。ちょっとぐらいは期待もしたいし、近くにだって居りたくて。



自分では結構アピールしてるつもりやったし



あなた先輩も、前よりは僕に向かって嫌な顔せえへんようになったと思ったんやけどなぁ~…笑



「あなた先輩、もうすぐ卒業ですね。こんな風に先輩に会えなくなっちゃうの、寂しいです…。」



『私は嬉しいよ?笑 だって、謙杜くんにもう付きまとわれてなくなるんでしょ?笑』



「あなた先輩、そこは、"私も寂しい" って、言うところですっ!笑」



『えぇー?笑 』



「…っ、、。」



あぁ、もうほら。…結果なんてわかってるやんっ。



もう会えないってわかった瞬間



普段なら、絶対僕には見せてくれへんような、飛びっきりの笑顔を見せるあなた先輩。



いつもなら、先輩がちょっとでも笑ってくれるだけで、嬉しいのに、、嬉しいはずなのに…。



…苦しい、苦しいよ、先輩、、。やっぱり僕じゃ、あなた先輩には釣り合わない…?頼りない…?



『あっ、そうだ。この間謙杜くんが教えてくれた小説読んでみた…って、え、、?謙杜くん…?』



「あなた先輩、そんなに無理しなくてええですよ。もう充分です。」



『…えっ、?』



「もう、あなた先輩の所に来るの、辞めます。今日で終わり。その方が先輩も嬉しいやろ?」



『…え、なん、、で…、急に、、?」



「先輩の負担にはなりたくないんです。あ、でも今先輩が寂しいって言ってくれたら、僕単純やから、また明日も来ちゃうかも?笑」



『…っ、!、、。』



「あ~、もうっ!!冗談ですって!笑 そんな困った顔しないで下さいよ! 安心してください、本当にもう来ないですからっ!笑」



『…っ、、。』



「…じゃあ、あなた先輩。今まで楽しかったです。バイバイ、先輩…。」



…これで、良かったんや。これで、、。



あなた先輩にとっても、僕にとっても。



これが一番いい方法なんやから。…って、そう自分に必死に言い聞かせて。



あなた先輩に背を向けて、僕が歩き出そうとした



…その時やった。



『待って…!!』



「っ、!……あなた先輩??」



『あ、あのっ、、その、、。…謙杜くんが居ないと寂しいから、っ!だから、居なくないで、、?』



なんて、制服の袖をぎゅっと掴んで、僕のことを引き止めて。



ちょっぴり潤んだ瞳でそう言ってくる、あなた先輩。



「…先輩、そんな事言われたら僕、期待しちゃいますよ?また、あなた先輩の所来ちゃいますよ…?」



『うんっ、わかってる。ええよ、来て。』



「…で、でも先輩は僕のことなんか…!」



『…あのね、、?謙杜くんが居ない事考えたら、すっごく寂しくて、胸が苦しくなって、、。…好き、、やからっ!』



「っ、!!」



『自分でも気づかないうちに、謙杜くんのこと、好きになってたみたいやからっ!…迷惑、、かな…?』



「~っ! 迷惑な訳ないじゃないですか!!そんな可愛いことばっかり言ってたら、僕もう先輩にちゅーしちゃいますよっ!?」



『ふふっ、何それ。笑 …あ、でも、、。……ちゅーはして欲しい…かも、、?』



「~~っ! あなた先輩、急に素直になりすぎですっ!!」



『…わぁっ、!』



ぐいーっとあなた先輩を、自分の方へと引き寄せて、そのままぎゅっと抱き締めれば



少し驚いたようにしながらも、嬉しそうに笑っている先輩。



「あなた先輩。…好きですっ。絶対、誰よりもあなた先輩のこと大切にします。だから僕と、付き合ってください!」



『…うんっ、はいっ! お願いします…っ!』




なんて。やっと、やっとのことで通じた想い。



2人でお互いの気持ちを伝えあって



これでもかってぐらい、ぎゅーっと抱き締め合いながら、笑いあって。



「…あなた先輩、大好きですっ。」



『ふふっ、うんっ。笑 私も。 大好きっ、謙杜くん。』




なんて、そう言って。



放課後。



空が綺麗な夕焼けに色に染まる頃。



僕たちは、甘くて優しいキスをした。







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