第101話

〔高橋恭平〕チョコレート
8,461
2020/10/21 08:43



「ただいま~。」



『…恭平くん!おかえりなさいっ!』



「ふふっ。笑 ただいま、あなた。」



時刻は午後9時。



仕事も終わって、疲れたなぁ、なんて家に帰れば



可愛い彼女が、ニコニコしながら玄関まで、俺のことを迎えに来てくれて。



幸せだなぁ、なんて思いながら、ぱぱっとご飯も、お風呂も済ませれば、後は寝るだけって状態で。



今日もいつも通り、あなたと。テレビを見たりなんかしながら、のんびーり2人の時間を過ごす



…はずだったんやけど…、、、




「あなた~、風呂空いたからあなたも早く…『恭平くん…っ、、。』



「えっ、?…わぁっ、ちょっ…!あなた…っ、!?」



風呂から上がって、俺がリビングの扉を開ければ


いきなり、俺にもたれ掛かるように、ぎゅーっと、抱きついてくるあなた。



「あなた…、、?」



普段のあなたは、大人しくて、控えめで。



こんな風に、あなたが自分から俺に甘えて来ることなんて、ほとんどない。



それなのに…



『…恭平くん。もっと、…ぎゅって、して…?』



「…っ、!!」



なんて、今日のあなたは、ものすっごく甘々で。



最初は俺も、あなたが甘えてくれることが嬉しくて。



たまにはあなたにだって、こんな風に、甘えたくなる時ぐらいあるんやろうって、



そう呑気に考えていたけれど…



『きょぉーへー、くんっ、…?』



時間が経つにつれ、どんどんと甘くなっていくあなた。



おまけに、あなたの頬はほんのりと赤くなっていて。



…まさか…、、!




「…もしかしてあなた、テーブルの上に置いてあったチョコレート、…食べた…?」



『…ん~、美味しそうだったから、ちょっとだけっ…。でも、本当にちょっとだよ…?』



…やっぱり。



あなたが食べたチョコレートは、俺が仕事で貰ってきたやつで。



その中には、少しだけやけどお酒が入ってる、いわゆる、"ブランデーチョコレート"。



普段から、ものすごーくお酒に弱いあなたが、これを食べてしまえば



酔っ払って、こうなる事ぐらい、何となーく俺にだってわかってたから



あなたにバレへんうちに、隠しておくつもりだったのに、、。




「ほら、あなた。今、水持ってくるから。少しここで待っとって??」



『…ダメっ、離れちゃやだ…っ。…恭平くん、行かんといて…?』



「っ、、。」



…あかん。



これはほんまに、あかん。



あなたの酔いを覚ますために、俺が水を取りに行こうと、少し離れようとしただけでも



そう言いながら、ぎゅっと抱きついてくるあなた。



そんなあなたの姿は、すっごくすっごく可愛くて。



少しでも油断をしてしまえば、俺の方が歯止めがきかなくなりそうで。



あなたがこうなっているのは、酔っているせいなんだって



そう何度も何度も自分に言い聞かせて、こっちは必死に耐えてるっていうのに…。



『ねぇ、恭平くん…っ、…ちゅー、して…?』



「っ、!?」




そんな俺のことなんかお構いなしに、追い討ちをかけるかのように



あなたは俺に向かって、そう言ってきて。



『ねぇ、恭平くんっ、早く…っ。』



なんて、うるうると瞳を潤ませながら、そんな風にあなたからお強請りされてしまっては



当然、断れるはずもなく。




「じゃあ…、1回だけ、やで?」



『んっ、…。恭平く…、んんっ、、。』



1度、軽く触れるだけのキスを、俺はあなたの唇へと、優しく落とす。



『…きょう、へい…くん…、、。』



「…ん、あなた。今日はここまで、な?」




キスが終わって、ゆっくりと唇を離せば



さっき以上に甘えたように、あなたは俺の名前を呼んできて。



『ねぇ、恭平くん…。もっと…っ、、。』



「…っ、…!、、。…明日、どうなっても知らんからな…?」




なんて、結局。あなたの可愛さに負けてしまった俺が



この後、チョコレートよりも、遥かにあま~い時間をあなたと過ごした、なんてそんな事は…、、



きっと、言うまでもないんだろう。








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