今年も彼から手紙が届いた
蝋で固めた封筒を捲ると
モンドとは違う香りが広がる
私の彼氏は稲妻に居る
遠距離恋愛、というやつだ
なんて言われた日には
断れる訳もなく
私は健気にモンドで待ち続けている
お互いが送りたくなったら届く手紙
毎回違う香りがするから楽しみで
毎回同じ言葉で始まる文章
馴染みのある香りに胸がキュッと締め付けられる
文字をなぞっていた指先が止まる
急に行ったら困るだろうから
また考えておかないと
稲妻に行ってから文字が上手くなったか
私は重大報告とやらに心を躍らせながら
目を動かす
自分の声に身体が震える
結婚
という2文字が
ぐにゃぐにゃ曲がって吐き気を催す
真っ白になった頭で
私は何とか、嘘だという言葉を探す
嘘、ウソ
どんな言葉でもいいから
結婚という文字を否定して欲しい
否定して
彼の大切な手紙に私の涙が染みていく
文字が滲むのが嫌でなんとか引き上げるも
既に滲んだ目の前はどうすることも出来なくて
何とか吐き出した言葉は
この数年、会えなかった苦しみを
失敗したジャムのように吐き出す
これでもまだ愛おしい彼の言葉
何とか最後まで読み切ろうと
私は目を拭って文字を辿る
震える声は喉から吐き出される
数分前までの幸せな気持ちから一転
今では、ここから消えてしまいたいとも願ってる
私はどうすればよかったんだろう
ここで待たず、彼のように別の人と
別の道を歩めば良かったのだろうか
この泣き顔を見られないだけマシ
なんて言い訳をして
私は立ち上がる
何も考えられない頭は記憶をなくそうと必死で
軽く上着を羽織って酒場に向かおうとした
外は思ったよりも寒くて、冷たくて
残酷で
予想外の人物に私の体は固まる
そして目が合った先には
何故か嬉しそうな彼
私は目を合わせないように笑う
声が震えないように
息を潜めて
目頭が熱くなる
心臓が小さくなる
私の純粋な恋心はここで壊されると
そう思ったのに
そう言って私を抱きしめる彼に
壊れかけた心に包帯が巻かれていく
混乱のあまり彼の名前しか分からない
まだ寒い夜の中
苦し紛れな私の声はよく響いて
また彼の言葉に
私は溶かされていく
私は耳元で聴こえる彼の声を頼りに
手紙の内容を思い出す
そういえば、結婚の前に空白があったような
ぴり、と雷が身体に伝う
私の涙腺はもう液体を止める術を知らない
幸せ、しあわせ
嘘なんて言わないでほしいから
嬉しそうに震えた彼の声
やっとの思いで抱きしめた彼の背中は冷たくて
遠距離、なんて
数年会えなくたって
私の気持ちと、きっと彼の気持ちも変わらずに
ただ幸せで
染まっていくだけなんだ
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どうも、お茶です🍵
トーマ誕生日おめでとう
結婚するならお茶はトーマを選びます。絶対に。
稲妻最初の推しと言っても過言では無い彼。
精一杯ヨシヨシしておきます
手紙の封を閉じる時に香水を塗るといいらしいですね。手紙なんか出さないので関係ないですがね😌
🍵お粗末さまでした🍵
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。