第28話

記憶
1,649
2020/08/10 03:50
病院に運びこまれ、拓実の時と同じように赤いランプだけが赤々と光っている
河野純喜
河野純喜
もう嫌や…あなたまで…
本田康祐
本田康祐
おい!大丈夫か!!?
康祐が息を切らして走ってくる
白岩瑠姫
白岩瑠姫
っ!来てくれたの?
本田康祐
本田康祐
他の奴らも来たがってたけど急にミッションが入って…俺しか来れなかった
本田康祐
本田康祐
あなたの記憶が戻ったっていうのはほんとか?
川尻蓮
川尻蓮
うん…
本田康祐
本田康祐
そっか…ごめんな。なんにも力になれなくて
與那城奨
與那城奨
たくさん力になってもらってるよ!
本田康祐
本田康祐
そんなことないよ…。
どうすんの?これから
川尻蓮
川尻蓮
分かんない、あなたの精神状態が落ち着くのかも分からない…
白岩瑠姫
白岩瑠姫
俺らも予測してなかったから戸惑ってる
本田康祐
本田康祐
そうだよな、俺らに出来ることあったら言ってくれ
川尻蓮
川尻蓮
ありがとう
本田康祐
本田康祐
…ごめん、俺戻んなきゃ
與那城奨
與那城奨
ありがとう、また連絡するね
本田康祐
本田康祐
わかった
佐藤景瑚
佐藤景瑚
あなたになんて声かけてあげたら良いのかな…
木全翔也
木全翔也
分かんないよ…
大平祥生
大平祥生
もう、苦しむ姿なんて見たくないのに


赤いランプが消える
金城碧海
金城碧海
あ…先生
医者
怪我をしていましたが、重症ではありませんでした。倒れたのは脳の問題です。
川尻蓮
川尻蓮
…はい
医者
小さい時から君達のことはFBIから任されているけど
医者
あなたさんの症状は私も分からないんだ…
症状の事例がない。
医者
脳の働きが一般と違うことは確か、でも、目に見える腫瘍がある訳でも無いから手の打ちようがない。
豆原一成
豆原一成
あなたは大丈夫なんですか?
鶴房汐恩
鶴房汐恩
危ない状態ですか?
医者
この脳の異常が死に影響することは無いはずだ
医者
問題は精神状態だ。
医者
苦しみから逃れようと自ら死を選んだりしないように君達がしっかり支えてあげてくれ
白岩瑠姫
白岩瑠姫
…分かりました













目が覚めると自分とは思えない自分の身体、感覚に襲われる
あなた
あなた
…思い出したくなかったなぁ


今まで聞こえなかった遠くの音、匂い、全てをはっきりと感じる


覚えておきたくもない子供の頃の記憶も鮮明だ

誘拐も怖かった。怖くて最悪な記憶



でも、1番恐かったのは自分に向けられる怯えた視線


家族でさえ、ママもパパも私を恐がってた。




私はおかしい。
私は恐ろしい。
私は必要とされない。
誰も私を愛してくれない。



誰にも必要とされず、怯えた視線を向けられるくらいなら消えてしまいたい。


幼いながらにそう思い続けていた。



あなた
あなた
また、あんな思いしなくちゃいけないの…?



ガラガラッ

扉を開く音が聞こえた


あなた
あなた
…誰?
川西拓実
川西拓実
あ、起きたの?
あなた
あなた
拓実…なんでいるの?
川西拓実
川西拓実
んー俺が目覚めなかった時、あなたが一緒にいてくれたから
川西拓実
川西拓実
今度は俺もあなたと同じように病院泊まってみた!😊
あなた
あなた
…もういいよ
川西拓実
川西拓実
え?
あなた
あなた
もういいよ
川西拓実
川西拓実
…何が?
あなた
あなた
無理して私の傍にいないで…
川西拓実
川西拓実
無理してなんかいないけど
あなた
あなた
私はおかしいから、私のこと恐くなって嫌いになる前に離れてよ!
川西拓実
川西拓実
あなた!!
川西拓実
川西拓実
変なこと言ってると怒るよ
川西拓実
川西拓実
俺はあなたのこと大好きだから一緒にいたいの
あなた
あなた
拓実が好きなのは!!普通の「私」でしょ?
あなた
あなた
今の私は普通じゃない
あなた
あなた
ママもパパも、普通の私なら愛してくれてた。私がおかしいから、あんな怯えた目をするようになった!
川西拓実
川西拓実
あなた、やめて!


拓実が苦しそうな顔をしながらギュッとあなたを抱きしめる
川西拓実
川西拓実
そんな自分を傷つけるようなこと言わないでよ…
あなた
あなた
私は…私は…自分が恐い…

あなたの目からポロポロと涙がこぼれる
川西拓実
川西拓実
大丈夫。俺がいるから。
あなた
あなた
自分の脳についていけないの。みんなを傷つけちゃうかもしれない。
あなた
あなた
お願い…みんなが好きでいてくれた私のままで消えさせて……
川西拓実
川西拓実
俺らにはあなたが必要なの!
川西拓実
川西拓実
俺らは人を殺すことももう何とも思わないし、狂ってるかもしれないけど
川西拓実
川西拓実
あなたがいてくれたから皆、感情を無くさないでいられてるんだよ
あなた
あなた
私が必要…?
川西拓実
川西拓実
うん。好きだよ…あなた
あなた
あなた
私も大好きだよ!でもだからこそ、もう嫌われたくないの!
川西拓実
川西拓実
俺らは全部知ってる。全部知った上であなたのこと守りたいって思ってる!
川西拓実
川西拓実
嫌いになんてなるわけないやろ…
川西拓実
川西拓実
大丈夫だから
あなた
あなた
……ありがとう

ギューッと拓実を抱きしめ返す
あなた
あなた
ねぇ、拓実
川西拓実
川西拓実
ん?
あなた
あなた
もし、子供の頃に戻れたとしたら私のこと助ける?
あなた
あなた
私なんかの為にこんな人生になったこと後悔してない?
川西拓実
川西拓実
後悔なんて全くしてない
川西拓実
川西拓実
何度過去に戻ろうが、俺は絶対にあなたの手をとるよ


身体を離し、そっと拓実を見上げる
あなた
あなた
ほんとにありがとう

チュッ



拓実は黙ってあなたにキスをした
川西拓実
川西拓実
もうちょっと抱きしめてていい?
あなた
あなた
うん…


安心したあなたは拓実の腕の中でまた眠りについた







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