第7話

6話
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2021/06/25 12:57
コピー機から印刷した紙が出てくる。

コピーした内容はあの小説の続き。

宙が小説の続きを読みたい。

と言ってくれたから思わず嬉しくて印刷してしまった。

流石にパソコンごと持っていったらKUROと言う事が分かってしまう。
佐藤 黒斗
紙とインク代勿体ないな……
そんな事より喜んで貰える方が嬉しいからどちらにしても印刷するんだけど。
佐藤 黒斗
……そろそろ約束の時間かな。
カバンには印刷したばっかりの小説と鉛筆、メモ帳を入れてあの廃ビルに向かった。


時間は昨日と同じ11時くらい。

鈍い音を鳴らしながら金属製の階段を登って屋上に出た。
涼風 宙
あっ!
約束通り来てくれたんだ!!
バッと宙が振り向いた。

昨日見たばっかりなのにその笑顔が久しぶりだと感じるのは何故だろう。
佐藤 黒斗
約束は守るタイプだから。
涼風 宙
優しいなぁ〜
黒斗は。
甘ったるくて、でも何故か涼しげな言葉で僕を温めてくれる。
涼風 宙
あのさ、小説書いてきてくれた?
宙が僕に歩み寄りながら聞く。
佐藤 黒斗
もちろん。
バックの中から印刷してした物を取り出した。

そして、宙にそれを突き出すみたいな感じで渡した。
涼風 宙
ありがとう!
佐藤 黒斗
(……そういえば主人公の名前、宙のままだったな…)
なんか恥ずかしい……かも。

それにサブ主人公の名前が僕だし。

恥ずかしくて行き場の無い目を泳がせる。
涼風 宙
…………
宙が何にも反応しないのが珍しいと思い、ちらっと盗み見る。

佐藤 黒斗
(……あれ?)
宙の表情が暗いと思ってしまったのは僕だけなのかな

だけど、怒っている様子にも見えない。

どちらかというと、悲しい…みたいな。
涼風 宙
ヒーローなんて嘘ばっかり……
宙ぼそっと何か呟いた。

何を言っているのかは聞き取れなかったけど。
涼風 宙
小説面白かった!
ありがと。
打って変わって明るい雰囲気。

そして、読んでくれていた小説を返してくれた。
佐藤 黒斗
(さっきの奴は何だったんだろう……)
涼風 宙
僕、すっごい憧れてる小説家いるんだよね〜!
宙が憧れている小説家……?
佐藤 黒斗
なんて言う名前の人?
本を読む事は好きだから他の人のオススメの小説家の人とかは知りたくなる。
涼風 宙
えっと、確かKUROってハンドルネームの人!
佐藤 黒斗
え?
ドキッと心臓が飛び跳ねた。

KUROって……やっぱり僕の事だよね?

な、なんて答えたら良いんだろう。
佐藤 黒斗
(流石にKUROは僕だ。
なんて言うのはきっと良くない。)
涼風 宙
その反応って事は、黒斗もその人の本が好きなの?
こんなのどうやって答えたらいいんだよ。

宙の事を傷つけるような言葉で質問を返したくない。

だけどこのままだと宙と僕の間に溝ができてしまう。
佐藤 黒斗
え、えーと……
多分こんな時かっこいい主人公ならこの状況を受け入れて「僕がKUROだよ」なんてセリフを軽々しく言ってみせるんだろうな。

……なんでこんな時にこんな事考えてるんだろ。

佐藤 黒斗
あのさ、宙。
話があるんだけど……
あーあ。

なんで僕はこんな妄想に影響されやすいんだろう。

僕は、まっすぐ宙を見つめながら言葉を放った。

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