ー宙目線ー
ガチャンという鈍い音ともに病室から黒斗が出ていく。
シーンと静まり返った病室。
そこに淡い光を灯すかなようにぽつりと僕は呟いた。
前に通っていた学校のクラスメイトも、信じていた友達だってみんな僕の前でお面を被る。
……それに黒斗だって。
ベッドにごろんと寝っ転がって自分の手を上に翳す。
自分の手は白くて、15歳だとは思えないぐらいの大きさ。
今すぐにでも透明になって空気と一緒にきえちゃいそう……なんてねw
あの出来事が起こったきっかけは僕が余命の宣言をされた9歳の時。
その時に宣言された余命は残り4年。
つまり13歳までしか生きられないと言われたんだっけ。
その事をクラスメイトに勇気を出して言ったんだ。
そしたら、
「へーあと4年しか生きられないんだ〜
……可哀想w」
「あっ、そうだったんだ。」
「ふーん初めてしった。」
「……残りの人生頑張れ〜w」
クラスメイトのコメントはどれも他人に向けて言っている様なものばかり。
なんならそれをいじってくる様な奴だって沢山いた。
全てが嫌になって、誰も信じられなくて。
……だったら生きてる意味なんてないじゃんってなっちゃうよ。
でも、僕は仮面を被り続けなくちゃ。
自分が生きれない分だけ誰かを助けないと。
僕を馬鹿にしたクラスメイトも。
僕を産んでくれた顔も性格も分からない両親も。
それに黒斗も。
でも、何かをやろうとすると命が削れていく感覚がするんだ。
相手の為に何かをやってみようと思うほどなんだか悲しくなっちゃって。
でも僕って欲張りだからどれも手放そうとしないんだよね。
もう誰にもこんな思いをして欲しくないんだ。
だからもっともっと……頑張らないと。
自分を犠牲にして誰かに幸せを配る。
それってなんかカッコイイし。
僕は病院服のポケットから医師の人から渡されていた手紙を開いた。
これを渡してくれた医師の人には"黒斗には"言わないで欲しいと念を押しておいた。
あと約1ヵ月後には誕生日を迎えているのか……。
でも、僕にはきっと誕生日はやって来ない。
医師の人から渡された紙に目を通す。
それは余命についての手紙。
君はまだ知らなくて良いんだよ。
僕があとたったの30日間しか生きられない事を。
むしろすれ違ったままでいいんじゃない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。