第3話

2話
2,167
2021/08/04 15:59
カンカンッと音を立てながら少し錆びている金属製の階段を駆け上がった。

人助けなんて柄じゃない。

だけど、見て見ぬふりを出来るような人間でも無い。
佐藤 黒斗
やっぱり僕って中途半端だなぁw
自分を嘲笑あざけわらう。

そんな行為、これで何回目だろう。

この廃ビルの階段の数ぐらいだろうか。

佐藤 黒斗
はぁはぁ……
こんな短い距離だけどすぐに息が上がってしまった。

この廃ビルは多分7階建て。

屋上を合わせたら8階建てって事になるんだろう。
いつの間にか階段は途切れていた。

屋上に続くドアは開きっぱなし。

周りを確認して僕はドアをくぐった。
佐藤 黒斗
うわぁ〜!
上を見れば一面の星空。

下を見れば建ち並んでいるビルがイルミネーションの様に光り輝いている。
???
こんばんは〜!
???
おにーさん、名前なんていうの?
爽やかで少年っぽい声。

見るとフェンスにもたれかかっている人影が1つ。

さっきの声の主とは思えないぐらいの小柄な体型。
佐藤 黒斗
僕の名前は佐藤 黒斗さとう  くろと、
人影が見えたから来てみたんだ。
佐藤 黒斗
初めて見たけど、景色綺麗だね。
心の底から思った事を口に出した。
???
僕もここから見る景色が好きなんだ!
お兄さんもこっちで一緒に景色見よ!
少年の人影が僕に向かって手招きをする。

僕はそれにつられて少年の隣に並んだ。


月明かりに照らさせてさっきまで見えなかった少年の顔が今ではハッキリと見える。

小顔でちょっぴり幼い顔つきな癖に少し凛々しくて。
佐藤 黒斗
名前、なんていうの?
何故か唐突に聞いてしまった。
涼風 宙
涼風   宙すずかぜ  ひろだよ!
爽やかな宙のイメージにピッタリな名前。

佐藤 黒斗
いい名前だね。
……よろしく。
人と話す事に慣れていない僕はどうしても素っ気ない返事になってしまう。

だけどそんな事なんて気にせずに宙はパァァっと太陽見たいに笑った。

暗闇の中にひとつだけ綺麗なツユクサが咲いたような感覚。
涼風 宙
そうかなぁ?
僕は黒斗って名前の方がすっげーカッコイイ!って思うけどなぁ。
佐藤 黒斗
か、カッコイイ?
こんな名前が?
涼風 宙
うん!
大きく頷いて答えてくれた。

そのおかげか分からないけれど、ちょっと心が軽くなった気がした。

佐藤 黒斗
普段、そんな事言われないから、ちょっと照れるな……
親と過ごしていた時も褒められる事なんて滅多になくて。

むしろ何もかもが強制的だったからそういう事を言われる事に慣れて無いんだよね。
佐藤 黒斗
それよりさ、宙って何歳なの?
人見知りの僕でも宙とならリズム良く話が進む。
涼風 宙
中3だから……15歳だよ!
15歳?

正直僕は宙は12歳ぐらいかと思っていた。

だって身長も低いし、小柄だし、多分15歳の体重もはるかに下回っているはず。
佐藤 黒斗
(なにか事情でもあるのかな……)
さっきまで赤の他人だったはずなのに何でそんなにも君の事を考えてしまうんだろう。

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