カンカンッと音を立てながら少し錆びている金属製の階段を駆け上がった。
人助けなんて柄じゃない。
だけど、見て見ぬふりを出来るような人間でも無い。
自分を嘲笑う。
そんな行為、これで何回目だろう。
この廃ビルの階段の数ぐらいだろうか。
こんな短い距離だけどすぐに息が上がってしまった。
この廃ビルは多分7階建て。
屋上を合わせたら8階建てって事になるんだろう。
いつの間にか階段は途切れていた。
屋上に続くドアは開きっぱなし。
周りを確認して僕はドアを潜った。
上を見れば一面の星空。
下を見れば建ち並んでいるビルがイルミネーションの様に光り輝いている。
爽やかで少年っぽい声。
見るとフェンスにもたれかかっている人影が1つ。
さっきの声の主とは思えないぐらいの小柄な体型。
心の底から思った事を口に出した。
少年の人影が僕に向かって手招きをする。
僕はそれにつられて少年の隣に並んだ。
月明かりに照らさせてさっきまで見えなかった少年の顔が今ではハッキリと見える。
小顔でちょっぴり幼い顔つきな癖に少し凛々しくて。
何故か唐突に聞いてしまった。
爽やかな宙のイメージにピッタリな名前。
人と話す事に慣れていない僕はどうしても素っ気ない返事になってしまう。
だけどそんな事なんて気にせずに宙はパァァっと太陽見たいに笑った。
暗闇の中にひとつだけ綺麗なツユクサが咲いたような感覚。
こんな名前が?
大きく頷いて答えてくれた。
そのおかげか分からないけれど、ちょっと心が軽くなった気がした。
親と過ごしていた時も褒められる事なんて滅多になくて。
むしろ何もかもが強制的だったからそういう事を言われる事に慣れて無いんだよね。
人見知りの僕でも宙とならリズム良く話が進む。
15歳?
正直僕は宙は12歳ぐらいかと思っていた。
だって身長も低いし、小柄だし、多分15歳の体重もはるかに下回っているはず。
さっきまで赤の他人だったはずなのに何でそんなにも君の事を考えてしまうんだろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。