第5話

3 白と黒の攻略戦
1,119
2024/11/01 14:00 更新
流星side


合宿2日目。
本当はウォーミングアップをするつもりが…

他校生に絡まれた謙杜を助けるために、
コートを賭けて九州高校と戦うことになってしまった僕。


しかも、西畑さんと2人で。

…。
初めは強気でいた僕だけど
コートに立つと相手の九州高校の生徒はすごく大きくて、僕なんて子供に見えてしまう。

そんな人たちが6人。
ちょっと…怖いかも。
大吾
おい、お前。
まさか…怖いなんて思ってないやろな。
流星
えっ…(何でわかるのっ!?)
大吾
バレバレや。
そんな引き腰で勝てると思うかの?

俺とお前。悪魔と天使やぞ?
勝てないわけがないねん。

そう言って、西畑さんはどこか楽しそう…というか、相手チームを見下している感じがした。


…悪魔と天使がタッグを組む。

そうだよね。普通じゃあり得ない。
大吾
俺が後、お前が前。
だから…まずは好きなように暴れろ。
基本俺が合わせてやる。
大吾
そして余裕があったら俺の戦略見て
お前も合わせてみろ。いいな?
流星
はいっ!!
大吾
絶対に…
相手に点数やるなよ。
!!!
九州高校
おい、さっさと試合始めるぞ。
結果はもう出てるんだから笑



お互いアップが終わって…試合が始まる。


6対2の…明らかにハンデのありすぎる試合が。
九州高校
お前らからサーブ入れろよ。
これが最後のサーブかもしれないから、大事に打てよ笑






大丈夫。
僕らなら勝てる。

相手をよく見てみると…
隙がありすぎる配置に連携がうまく取れなそうな表情。
多分、力任せにここまで試合をして来たんだろうな。

…ふふっ。
それなら負けるはずがない。


僕らは力だけじゃ勝てないんだからっ!


僕は白い羽を、後ろの西畑さんは黒い羽を。
それぞれ纏わせて…

コートを飛ぶ。


いくよっ、西畑さんっ!!!



流星
はああぁっ!!

思い切り床を蹴って、サーブを入れる。




バアァァーーーーンッ!!!!







ドォォォォオンッ!!!


トントントン…


相手の高校は一歩も動けていない様子。
九州高校
へっ…!?!?

な、何だ今のはっ!?
九州高校
あのチビ…こんなに飛べるのか!?
一瞬すぎてボールが目で追えない…だと?!


僕の撃ち込んだサーブは相手コートの隙に入り、誰も手出しができなかった。

…よし、今ので良く分かった。

これなら相手に点を渡すことはない。



大吾
…ふーん。
こんなもんか笑
九州高校
なっ…?!
調子に乗るなよっ!!!

次は本気で行くからなっ!!!
九州高校
お前らっ、コイツらを怪我させろっ!
力尽くで撃ち込めっ!




そんな力で戦っても楽しくないのに。
もっと、ゲームを楽しまないと。

流星
いっくよーっ!!

せーのっ!!

バアァァーーーーンッ!!!


僕が撃ち込んだボールを相手チームが取る。
流石に2回目は本気を出して来たのか…


バーンッ!!
1…

バーンッ!!
2…
九州高校
おらぁぁぁああっ!!!

バアァァーーーーンッ!!!!!

相手チームがすごい力で撃ち込んできた
こんなの当たったら怪我しちゃうっ!!


なのに。
それを…



ドオォーーーーンッ!!!




西畑さんがものともせずに取ったのだった。
やっぱり…僕よりもパワーも技術も上で、フォームも完璧…。

こんな…魔法使いさんの姿が近くで見れるなんて。


夢見たい。

大吾
繋げるぞっ!!
天使っ!!
流星
はいっ!!!

でも、今は
そんな事考えてる暇なんてない。

とにかく繋げて繋げて、舞って…。
ボールを撃ち込むんだからっ!




バーンッ!!
1…

バーンッ!!
2…

流星
西畑さんっ!!!

そして西畑さんへと、ボールをつなぎ…


黒い羽が宙を舞うのが見えた。

大吾
まかせろ…っ!!

3っ!!!



バアァァーーーーンッ!!!!!!


悪魔の軟打撃を…撃ち込んだ。





ドォオオオォン…!!!!




トントントン…
九州高校
は…はあっ!?

な、な、何なんだよっ!!!
今のはっ?!
軟打撃なのに…こんな威力。

大吾
ったく。
お前らにはテクニックが無いのか?
この無能め。
大吾
もう力は通用しないからな。
流星
ふふっ。さすが西畑さん。

さ、どんどん行きますよっ!


その後もコートにボールを打ち込むけれど、九州高校の人たちは、一向に僕たちに対抗する事ができなかった。

だって、作戦が見え見えで。
途中から僕も西畑さんも。いかに相手を困らせてやろうか…なんて余裕が出て来てしまうくらいだったから。


バーンッ!!
1

バーンッ!!
2



バアァァーーーーンッ!!!!


そして…





ピーーーーーッ!!


あっという間に僕たちのストレート勝ち。


流星
よしっ!!!
大吾
ま、当然の結果や。


九州高校
はぁっ…はあっ…っ!!!
こ、こいつら何物だっ?!

くそっ…もう一回…っ!!!


と、その時…
監督
おい、いい加減にしろ。
そこまでや。



そう声をかけて来たのは…
えっ…監督…?!

な、なんでここに…
流星
か、監督!?
ど、どうして…
監督
お前が練習場所に現れないから、探したんやぞ?
なーんで勝手に試合しとんねん。

…やばい。監督にバレてしまった。

謙杜くんは…というと、

監督に捕まってるし!
…。
流星
でも、これには訳が!!
監督
後で聞く。
それと西畑。お前の監督もカンカンだぞ?
ここらで終わりにしないと…
合宿参加しに来た意味なくなるぞ。
大吾
…はいはい。
監督
そして、お前らどこの高校か知らんけど。
難波学園と西宮のエースは手強いやろ?

監督
…さっさと戻れ。
九州高校
えっ…あ、あの!?
難波と西宮の生徒なのか!!?

相手チームは名前を聞いて驚いたのか
何も言わずに走ってコートを去っていった。

…。

そっか、僕も西畑さんも高校のジャージを着ていなかったから、分からなかったんだ…。


…せっかく勝ったのに。


これ以上ここに居ると監督に怒られそうだし。

僕も早く練習に戻ろう。
そう思った時
流星
あ、あれ…?(ふらっ…)

試合が終わったと思った途端、体がふらふらし始めた。

や、やばいかも…
脱水かな…?

た、倒れそう…。


そんな僕を見て監督がため息を付く。
監督
だから!
お前は体力管理が課題やって言っただろう?
こんなに脱水になるまで体力削って。
監督
罰として午後の練習まで部屋で寝てろ。
部屋から出るな。
そんな体で練習しても…
何の意味もないからな。


…。
そう言われて、ぺたんと床に座り込んでしまう僕。
確かにあの人数相手に戦って…

もう、体力残ってないや。
監督
西畑、悪いがこいつを部屋まで送っていってくれ。
その代わり、お前の監督には俺から上手く言っておくから。

すると西畑さんは
僕の前にしゃがんで背中を向けて来る。

大吾
…ったく。
ほら、乗れ。

そう言われて、西畑さんの背中に乗せられた僕。

何もできないまま…

動かない僕の体を西畑さんへと預けて…
部屋へと運ばれたのだった。

…。
大吾
お前、本当に体力ないな。
ちゃんと持久力あげとけよ。
それに…体も軽すぎる。もっと飯食え。
流星
…はい。

一緒に戦った時には気づかなかったけれど、西畑さんの背中って近くで見るとこんなに広くて、案外ガッチリしてて。
いかにもスポーツマンって感じなんだ…。

さすが…三年生。


部屋の場所を伝えると、僕も限界が来たようで。

いつのまにか背中の中で…

意識を失っていたのだった。






西畑side


九州高校の奴らとの試合は…俺と天使のストレート勝ちに終わった。
後から調べると、あいつらも準々決勝に進んでいるらしいが…あの調子じゃ準決勝にも進めないだろう。

そして俺の背中で寝ているこいつ。

…一緒に戦ってみて、そこらの一年生のレベルではないことは分かった。
体力や持久力、スタミナはまだまだやけど。

俺はよく二人組でプレイ練習をするが…。
軟打撃プレイに合わせながら、動きを読んで最後まで食いついて来たやつは、はっすんとコイツだけ。

…やっぱり“天使”の名前は伊達じゃない。



そして何故かコイツと同じコートに入って

ほんの少し…わくわくしたというか…。

…。

…いや、気のせいや。

ここ数年そんな気持ちになんてならなかったから。
ましてや、この天使にそんな気持ちを思い出させてもらう筋合いもない。



そんな事を感じながらも。
…。

天使のような寝顔をしたこいつを…部屋へと置いて。
俺は練習場所へと戻っていったのだった。



大橋
あっ!!大ちゃーんっ!!!
どこいってたんよ。
もうアップ終わって試合練習やけど…
大吾
アップは終わってるから、問題ない。
はよ試合始めよ。
…。
恭平
(…どんなアップしたら、あんなに汗かくねん。それに…顔が赤いけど、何かあったんか?)

流星side


監督の指示で午前中は部屋で待機となった僕。
流石に疲れたのか、お昼すぎまで意識が戻ることはなかった。
そりゃそうだよね、2人で6人相手にストレート勝ちの試合をしたんだもん。


僕って本当に体力ないんだなぁって改めて思わされた。もっともっと…頑張らないと、西畑さんには追いつかないや。


目が覚めると、西畑さんはもういなくて。
みっちーと謙杜が僕の部屋にお昼を運んでくれていた。
謙杜
流星くん…ほんまに俺のために、ごめんな?
道枝
もう…。
こうやって人に迷惑かけるんだよ?
練習サボらないでね!
謙杜
…はい。
流星
で、でも!試合楽しかったし!
何より…西畑さんと一緒に戦えたから良かったなぁって。

西畑さんのプレイを間近で見て、
沢山のことを学べただけでも…
僕にとっては大きな成長だったんだから。

今度はちゃんとお互い対面でコートに入って試合がしたい。

それまでは。
…あなたはずっと、僕にとって憧れの人。






午後はレギュラーメンバーの練習へと戻り、ひたすら試合形式で練習に取り組んだ。
先輩達と戦ってるのに、どこか西畑さんのことを思い出してしまう。

西畑さんならこう動くだろうな…ここで軟打撃を撃って、そして向こうに走って…!
サーブはこの角度!

そんなイメージをもちながら…。
僕は無意識で自分の体にその動きを取り込んでいたみたい。


…。

西畑さんは…僕のプレイを見て
何を感じたのかな。
監督
…。
(まあ、長い寄り道やったけど。
自分のものにできたみたいやな。)






そして夜。

おーい。お届け物やー。
謙杜
えっ!?
何で藤原のおっちゃんがここにおるんや?
だーかーら!
兄ちゃんや!!!

西宮と難波学園から同時に配達頼まれてな。
ほい、これや。

そう言われて、受け取った荷物の中身は…
道枝
花火…?
そして大量のアイス?

どうしたんですか?

監督
まあ、合宿も一つの思い出作り。
難波学園と合宿が被ったのも縁という事で…
両監督公認の花火大会開幕!

えっ!?

こんな事ってあるんだ…。


その監督の言葉に

“いえぇーーーーいっ!!”
と声を上げる両生徒達。


生徒皆ライバル校という認識を忘れて、
花火にアイスに大喜び。
流石に先輩達は、難波学園と一緒に花火をしながらも相手校の情報集めに徹していたけれど。

それでも、こうやってお互い楽しさを共有しながら高校生ならではの思い出が作れるって素敵だなぁ…って思ってた。

やっぱり、バレーボールを続けて来て良かった。



藤原さんも僕を見つけるなり、声をかけてくれる。
おっ、天使!久しぶりやな。
元気にしてたか?
流星
あっ…はい。ぼちぼち…ですけど。
大橋
あー!天使くんっ。
相変わらず可愛いなぁ!
アイス食べや?
花火も!!
恭平
大橋さん、大西くん引いてるから
その辺にしといて下さい。
難波のイメージ悪くなりますよ。
流星
あっ…いえ。
ありがとう…ございます。

あれ?

そういえば西畑さんが…いない。

もしかして体調悪くなっちゃったとか…?!
流星
あの…西畑さんは?
恭平
あぁ。
先輩なら部屋で自主トレしてると思うけど。

あの人…こういうの苦手やから。

…。

いない、のか。

何やアイツ!俺が持って来たアイスが食べられへんっていうのか?!
大橋
大ちゃん、アイスは好きやけどなぁ…
流星
な、なら!僕が持って行きます!
今日のお礼もしたいし…。

行ってきます!

そう言って、西畑さんの場所を教えてもらい

アイスを届けるために部屋へと向かっていった。


何やアイツ。
悪魔のこと気に入ってるやん。
大橋
ふふふ…
気になってるのは
天使くんの方だけじゃないで?
大橋
大ちゃんも
相当気にかけてるからなぁ。
恭平
天使と悪魔。
真逆なのに、お互い気になる存在か。

恭平
(後々…決勝戦で
辛い思いしないといいけど。)



タッタッタッ…

えーっと、この辺り…


外から回った方が早いかも。


…あっ、あの灯。
絶対そうだ!







西畑side



全く監督は何を考えるんやら。

西宮と合同で花火大会なんて…
バカバカしい。

俺は合宿に来てるんや。
遊んでる暇なんてない。それも…西宮は1番のライバル校なのに。





…まあ、西宮の“天使”と一緒に試合をした俺が言えることでもないけれど。
大吾
今日の試合の振り返り。今のうちにしておかないと…

と、思って机に向かうと、窓に人影が…

…コンコンコン


えっ!?



!!??!!
大吾
ゔあぁぁぁぁああああっ!!!!!!
流星
ぎゃぁぁああああっ!!!

な、な、なんや!?
幽霊か!!?

まだを恐る恐る見てみると…
流星
西畑さん!
急に大声出さないでくださいっ!

窓の外にはあの西宮の“天使”が立っていた。
大吾
な、な、んでこんなところにおるんや!
驚かせてっ、寿命縮むわ!!
俺に何か恨みでもあるのか!?
流星
だから!違くて!!

はい!これ!
一緒に食べましょ?

そうって渡して来たのは…アイス。

え、アイス…。
大吾
何で?
流星
いいから!溶けちゃう!!

そう言われて断れるわけもなく…アイスを受け取る俺。




何で…“天使”とアイス食べてるんや?

1人で練習の振り返りをするはずが…こいつのペースに飲まれてるじゃないか。

ほんまに何やねんコイツ…。

流星
ふふっ。
夏のアイスって何でこんなに美味しいんですかね!

これ…藤原さんが持って来たんやな。

監督が頼んだってやつか。


どうせ向こうでわいわいしながら、
皆んなで食べてるんやろ。
大吾
お前は…
こうやってみんなと連むのが好きなのか?

俺は苦手。
人に合わせて、ヘラヘラ笑って。
仲良くない奴らと仲良くして。
それが辛い。

バレーは確かにチームプレイやから
ある程度お互いのことを知る必要がある。

だけれど…
プレイ以外で仲良くするほど
興味はなかったのだ。


流星
連む…のは、僕も苦手です笑
でも、誰かとこうやって美味しいものや楽しいことを共有するのは好きです。
流星
今日のバレーは、すごくすごく楽しかったです!



楽しかった…か。

楽しいなんて…

…俺も昔は思ってたのかな。
流星
西畑さんは?楽しかったですよね?

…!?

大吾
えっ…俺は…
そういう感覚分からへん。

でも…
心がどこか熱くなった…気は…した。
流星
ふふっ。そうなんですね。
楽しいの基準は人それぞれなんで。
分からなくて当然です。

でも…僕は楽しかった!

…。
流星
やっぱり自分が楽しく無いと、
相手にも楽しさは伝わらないので。
きっと僕が楽しいなら…
西畑さんも楽しいはずですよ。

そう“天使”は笑って俺に話してくる。

その笑顔を見るだけで

ドキッ…
大吾
…っ!


胸が痛い。


人を和ませるような、柔らかい輝きを放つお前。

その笑顔…やめろ…。

こっちが…苦しくなる。


流星
あー美味しかった!
じゃ、僕は戻ります!


だめや、このままペースに飲まれては。

ちゃんと言っておかないとっ!
大吾
おい。お前。
大吾
俺と仲良く…なんて思うなよ。

今度こそ、ライバルに戻るからな。
決勝戦まで気を抜くなっ。

仲良くなんてするな。
突き放すんやっ…!突き放せ…っ!!!

っ!!




なのに、いくら距離を取っても。


お前はまた笑顔を振り撒いてくる。
流星
ふふっ。そっちこそ。
僕は明日の朝帰るけれど、あと2日頑張って下さいね!
流星
僕も羽を大きくして貴方に挑むので。
では、また!決勝戦で!

そう言って天使は森の中へと消えていった。

俺がどれだけ距離を置いても
歩み寄るお前。

お前は…コートの中だけではなく
現実の世界でも、天使なのか…?と思わせるほど。


この、荒んだ悪魔に心を取られた俺を
浄化するかのように。





もしかしたら。
お前は…本当の天使、なのかもしれない。


…。


そんな事を俺に思わせたお前の為にも…
あと2日。本気でやってやるからな。


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