流星side
合宿2日目。
本当はウォーミングアップをするつもりが…
他校生に絡まれた謙杜を助けるために、
コートを賭けて九州高校と戦うことになってしまった僕。
しかも、西畑さんと2人で。
…。
初めは強気でいた僕だけど
コートに立つと相手の九州高校の生徒はすごく大きくて、僕なんて子供に見えてしまう。
そんな人たちが6人。
ちょっと…怖いかも。
そう言って、西畑さんはどこか楽しそう…というか、相手チームを見下している感じがした。
…悪魔と天使がタッグを組む。
そうだよね。普通じゃあり得ない。
!!!
お互いアップが終わって…試合が始まる。
6対2の…明らかにハンデのありすぎる試合が。
…
大丈夫。
僕らなら勝てる。
相手をよく見てみると…
隙がありすぎる配置に連携がうまく取れなそうな表情。
多分、力任せにここまで試合をして来たんだろうな。
…ふふっ。
それなら負けるはずがない。
僕らは力だけじゃ勝てないんだからっ!
僕は白い羽を、後ろの西畑さんは黒い羽を。
それぞれ纏わせて…
コートを飛ぶ。
いくよっ、西畑さんっ!!!
思い切り床を蹴って、サーブを入れる。
バアァァーーーーンッ!!!!
…
ドォォォォオンッ!!!
トントントン…
相手の高校は一歩も動けていない様子。
僕の撃ち込んだサーブは相手コートの隙に入り、誰も手出しができなかった。
…よし、今ので良く分かった。
これなら相手に点を渡すことはない。
…
そんな力で戦っても楽しくないのに。
もっと、ゲームを楽しまないと。
バアァァーーーーンッ!!!
僕が撃ち込んだボールを相手チームが取る。
流石に2回目は本気を出して来たのか…
バーンッ!!
1…
バーンッ!!
2…
バアァァーーーーンッ!!!!!
相手チームがすごい力で撃ち込んできた
こんなの当たったら怪我しちゃうっ!!
なのに。
それを…
ドオォーーーーンッ!!!
西畑さんがものともせずに取ったのだった。
やっぱり…僕よりもパワーも技術も上で、フォームも完璧…。
こんな…魔法使いさんの姿が近くで見れるなんて。
夢見たい。
でも、今は
そんな事考えてる暇なんてない。
とにかく繋げて繋げて、舞って…。
ボールを撃ち込むんだからっ!
バーンッ!!
1…
バーンッ!!
2…
そして西畑さんへと、ボールをつなぎ…
黒い羽が宙を舞うのが見えた。
3っ!!!
バアァァーーーーンッ!!!!!!
悪魔の軟打撃を…撃ち込んだ。
ドォオオオォン…!!!!
トントントン…
…
その後もコートにボールを打ち込むけれど、九州高校の人たちは、一向に僕たちに対抗する事ができなかった。
だって、作戦が見え見えで。
途中から僕も西畑さんも。いかに相手を困らせてやろうか…なんて余裕が出て来てしまうくらいだったから。
バーンッ!!
1
バーンッ!!
2
バアァァーーーーンッ!!!!
そして…
ピーーーーーッ!!
あっという間に僕たちのストレート勝ち。
…
と、その時…
…
そう声をかけて来たのは…
えっ…監督…?!
な、なんでここに…
…やばい。監督にバレてしまった。
謙杜くんは…というと、
監督に捕まってるし!
…。
相手チームは名前を聞いて驚いたのか
何も言わずに走ってコートを去っていった。
…。
そっか、僕も西畑さんも高校のジャージを着ていなかったから、分からなかったんだ…。
…せっかく勝ったのに。
これ以上ここに居ると監督に怒られそうだし。
僕も早く練習に戻ろう。
そう思った時
試合が終わったと思った途端、体がふらふらし始めた。
や、やばいかも…
脱水かな…?
た、倒れそう…。
そんな僕を見て監督がため息を付く。
…。
そう言われて、ぺたんと床に座り込んでしまう僕。
確かにあの人数相手に戦って…
もう、体力残ってないや。
すると西畑さんは
僕の前にしゃがんで背中を向けて来る。
そう言われて、西畑さんの背中に乗せられた僕。
何もできないまま…
動かない僕の体を西畑さんへと預けて…
部屋へと運ばれたのだった。
…。
一緒に戦った時には気づかなかったけれど、西畑さんの背中って近くで見るとこんなに広くて、案外ガッチリしてて。
いかにもスポーツマンって感じなんだ…。
さすが…三年生。
部屋の場所を伝えると、僕も限界が来たようで。
いつのまにか背中の中で…
意識を失っていたのだった。
西畑side
九州高校の奴らとの試合は…俺と天使のストレート勝ちに終わった。
後から調べると、あいつらも準々決勝に進んでいるらしいが…あの調子じゃ準決勝にも進めないだろう。
そして俺の背中で寝ているこいつ。
…一緒に戦ってみて、そこらの一年生のレベルではないことは分かった。
体力や持久力、スタミナはまだまだやけど。
俺はよく二人組でプレイ練習をするが…。
軟打撃プレイに合わせながら、動きを読んで最後まで食いついて来たやつは、はっすんとコイツだけ。
…やっぱり“天使”の名前は伊達じゃない。
そして何故かコイツと同じコートに入って
ほんの少し…わくわくしたというか…。
…。
…いや、気のせいや。
ここ数年そんな気持ちになんてならなかったから。
ましてや、この天使にそんな気持ちを思い出させてもらう筋合いもない。
そんな事を感じながらも。
…。
天使のような寝顔をしたこいつを…部屋へと置いて。
俺は練習場所へと戻っていったのだった。
…
…。
流星side
監督の指示で午前中は部屋で待機となった僕。
流石に疲れたのか、お昼すぎまで意識が戻ることはなかった。
そりゃそうだよね、2人で6人相手にストレート勝ちの試合をしたんだもん。
僕って本当に体力ないんだなぁって改めて思わされた。もっともっと…頑張らないと、西畑さんには追いつかないや。
目が覚めると、西畑さんはもういなくて。
みっちーと謙杜が僕の部屋にお昼を運んでくれていた。
西畑さんのプレイを間近で見て、
沢山のことを学べただけでも…
僕にとっては大きな成長だったんだから。
今度はちゃんとお互い対面でコートに入って試合がしたい。
それまでは。
…あなたはずっと、僕にとって憧れの人。
…
午後はレギュラーメンバーの練習へと戻り、ひたすら試合形式で練習に取り組んだ。
先輩達と戦ってるのに、どこか西畑さんのことを思い出してしまう。
西畑さんならこう動くだろうな…ここで軟打撃を撃って、そして向こうに走って…!
サーブはこの角度!
そんなイメージをもちながら…。
僕は無意識で自分の体にその動きを取り込んでいたみたい。
…。
西畑さんは…僕のプレイを見て
何を感じたのかな。
…
そして夜。
そう言われて、受け取った荷物の中身は…
えっ!?
こんな事ってあるんだ…。
その監督の言葉に
“いえぇーーーーいっ!!”
と声を上げる両生徒達。
生徒皆ライバル校という認識を忘れて、
花火にアイスに大喜び。
流石に先輩達は、難波学園と一緒に花火をしながらも相手校の情報集めに徹していたけれど。
それでも、こうやってお互い楽しさを共有しながら高校生ならではの思い出が作れるって素敵だなぁ…って思ってた。
やっぱり、バレーボールを続けて来て良かった。
藤原さんも僕を見つけるなり、声をかけてくれる。
あれ?
そういえば西畑さんが…いない。
もしかして体調悪くなっちゃったとか…?!
…。
いない、のか。
そう言って、西畑さんの場所を教えてもらい
アイスを届けるために部屋へと向かっていった。
…
…
…
タッタッタッ…
えーっと、この辺り…
外から回った方が早いかも。
…あっ、あの灯。
絶対そうだ!
西畑side
…
全く監督は何を考えるんやら。
西宮と合同で花火大会なんて…
バカバカしい。
俺は合宿に来てるんや。
遊んでる暇なんてない。それも…西宮は1番のライバル校なのに。
…
…まあ、西宮の“天使”と一緒に試合をした俺が言えることでもないけれど。
と、思って机に向かうと、窓に人影が…
…コンコンコン
えっ!?
!!??!!
な、な、なんや!?
幽霊か!!?
まだを恐る恐る見てみると…
窓の外にはあの西宮の“天使”が立っていた。
そうって渡して来たのは…アイス。
え、アイス…。
そう言われて断れるわけもなく…アイスを受け取る俺。
…
何で…“天使”とアイス食べてるんや?
1人で練習の振り返りをするはずが…こいつのペースに飲まれてるじゃないか。
ほんまに何やねんコイツ…。
これ…藤原さんが持って来たんやな。
監督が頼んだってやつか。
どうせ向こうでわいわいしながら、
皆んなで食べてるんやろ。
俺は苦手。
人に合わせて、ヘラヘラ笑って。
仲良くない奴らと仲良くして。
それが辛い。
バレーは確かにチームプレイやから
ある程度お互いのことを知る必要がある。
だけれど…
プレイ以外で仲良くするほど
興味はなかったのだ。
…
楽しかった…か。
楽しいなんて…
…俺も昔は思ってたのかな。
…!?
…。
そう“天使”は笑って俺に話してくる。
その笑顔を見るだけで
ドキッ…
胸が痛い。
人を和ませるような、柔らかい輝きを放つお前。
その笑顔…やめろ…。
こっちが…苦しくなる。
だめや、このままペースに飲まれては。
ちゃんと言っておかないとっ!
仲良くなんてするな。
突き放すんやっ…!突き放せ…っ!!!
っ!!
…
なのに、いくら距離を取っても。
お前はまた笑顔を振り撒いてくる。
そう言って天使は森の中へと消えていった。
俺がどれだけ距離を置いても
歩み寄るお前。
お前は…コートの中だけではなく
現実の世界でも、天使なのか…?と思わせるほど。
この、荒んだ悪魔に心を取られた俺を
浄化するかのように。
…
もしかしたら。
お前は…本当の天使、なのかもしれない。
…。
そんな事を俺に思わせたお前の為にも…
あと2日。本気でやってやるからな。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。