流星side
バァァーーーーンッ!!!
…
暑さも和らいで、季節は秋に移り変わる。
大会も残すは準決勝、そして決勝を残すのみ。
僕は西宮高校は、無事準決勝へと進み
一週間後の大会まで練習も大詰めとなっていた。
…
はぁっ…はぁ…
いきなり話に混ざってくる藤原さん。
ちょっと驚いちゃうから
一声かけて欲しいくらいだよ…。
藤原さんは最新号のスポーツ雑誌を見せてくれた。
そこには準決勝の特集記事が載っていて…。
一週間後に行われる準決勝が
いかに注目されているのかを教えてくれた。
僕に似てる人?
そんな人いるの?
雑誌をのぞいてみると、
屈強な3年生の中に1人混じっている小柄な子。
多分一年生…だよね。
…
同じ一年で、レギュラー。
体格も僕とそんなに変わらない。
違うのは…宙くんの方が頭がいいってことなのかな。
そんな一年同士の対決なんて。
気が重いなぁ。
きっと向こうの宙くんも…僕と同じ思いなのかな。
でも、同い年でレギュラーなんて偶然というか
奇跡みたいな出会いだなぁ…なんて思っちゃった。
試合中はお互い敵同時だけど…
試合が終わったら友達になれたらなぁなんて、
浮かれたことを考えていたんだ。
それに、緑苑坂のページには…
その先輩は僕のことをすごく可愛がってくれて、本当は緑苑坂も受験の候補に入れてたほど。
けれど…その話をした時
先輩はあまりいい顔をしなかった。
“うちの高校には来るな、他の高校に行け”って
僕何か気に触るようなことしたかな?
確かに仲のいい後輩が来たら調子狂っちゃうよね。むしろ僕なんか来たら、レギュラー争いになるし。
そんなことがあってから…
連絡を控えていた。
そして今度の対戦校が決まった時も、先輩が相手だったらどうしよう…って思ってた。
そして多分先輩は僕が西宮にいることを知らないと思う。
でも、天王寺くんのことも気になるし。
今度こそ連絡してみようかなって
そう思うことができたのだった。
ピーーー
そして部活終了後。
帰り道、いつもならすぐ家に帰るけれど、今日は謙杜が寄りたいところがあると言っていたのでみっちーと3人で寄り道をして帰ることになった。
ついたのは、大きめのショッピングモール。
そんなことを言いながらも
謙杜の嬉しそうな顔を見ると僕も嬉しくなってきちゃって…
3人並んでタピオカを飲むことにした。
“32番でお待ちの方〜”
久しぶりのタピオカに大喜びで、
のこのことカウンターへと取りに向かう。
だが…浮かれていた僕はカウンターに先にいた人が振り向いたことに気づかず、勢いよくぶつかってしまった。
ドンッ!!
そこにいたのは、僕の中学の部活の先輩で
今は緑苑坂高校へと通う、聡兄が立っていた。
あの…
同じ学校には来るなって忠告をしてきた先輩。
久しぶりで嬉しいけれど…
そんな事を言われてから、気まずくて
全然連絡を取ってなかった。
だから、昔みたいに話しかけていいのか
わからなかった。
するといきなり
僕の気持ちとは裏腹に
聡兄は思い切り抱きついてきてくれた。
えっ…こんな感じでいいの?
また昔みたいに仲良くしてくれる…?
それなら、僕もっ。
ふふっ。よかった。
聡兄は僕の二つ上の先輩で
兄って読んでるけれど兄弟でも家族でもない。
僕が中学一年生の時に三年生としてバレー部を引っ張ってくれてたんだ。
僕らは気が合うのか、聡兄は本当の弟のように可愛がってくれて、ずっと一緒だったんだ。
だから、またこうして出会えて。
嬉しくてたまらなかった。
ブーッブーッブーッ
ん?電話。僕じゃ…ない。
聡兄かな?
そう言って、せっかく会えた聡兄は
走って消えていってしまったのだった。
でも、また連絡してくれるって。
ちょっとだけだけど。
蟠りが取れた気がして…嬉しかった。
聡兄…確かにすごく優しかったなぁ。
僕はバレーが少しできるからって、上級生から嫌がらせを受けたことがあった。その時聡兄だけは僕の前に立って守ってくれたんだ。
お昼も一緒に食べてくれて、勉強も教えてくれて。
最後の大会は一緒にレギュラーとして大会にも出たなぁ。
いろいとろ思い出す、聡兄との思い出。
やっぱり…大好きなんだ。
そんな事を話しながら、部活とは違う、僕らの放課後の時間が過ぎていったのだった。
…
タピオカを飲んだ僕たちは、明日も学校があるという事で、そのまま出口へと向かおうとした。
ショッピングモールを出て
信号を待っていると…
ガッッッ!!!!
…なんだろう。
高校生の…喧嘩かな。
こんな時間に、なんだか怖い。
そう思って通り過ぎようとしたけれど
やっぱり気になってしまう。
そしてちらっと顔が見え、そこにいたのは…
僕の大好きな聡兄だった。
複数人の高校生に囲まれて、
誰かの前で土下座をしている聡兄。
さっき買ってたタピオカが床にばら撒かれていて、
どういう状況かわからなかった。
そして、土下座をしている先にいたのは…
さっき雑誌で見た人。
あの僕と同じ一年生の“天王寺”さんだったのだ。
聡兄が天王寺さんに土下座…!?
すると目の前の天王寺さんは、
何かまずいと感じたのか…
顔色をガラッと変えて、僕に笑顔で話しかけてきた。
なんだか思っていた子と違う。
作り笑いを浮かべて、
僕の手を勝手に取って握手をしてきた。
ちょっと…怖い。
そう言って天王寺さんは…車に乗って帰っていった。
聡兄は、どこか震えて、悲しい顔をして。
周りの高校生に担がれて…その場を後にした。
僕は、何も声をかけられなかった。
緑苑坂高校…ちょっと嫌な雰囲気を感じてしまった。天王寺さんも…あんな人だなんて。
聡兄に一体何があったんだろう。
あの後、聡兄に連絡をしても…帰ってくることはなかった。
……
………
次の日。
学校の授業中も、聡兄のことが頭から離れなかった。
もしかして…
“うちの学校にくるな”って言ったのも…
あの光景が関係してるのかな。
僕があんな目に遭わないように。
聡兄いつも、優しすぎるからさ。
…いや、考えすぎ?
うーん。分からない。
スマホを見ても、聡兄からは連絡がない。
結局僕は勉強にも、部活にも身が入らなくて。
そのまま、特に何も解決しないまま
1日が過ぎてしまった。
トボトボと帰る帰り道。
なんだか気分が上がらないなぁ…。
そうだ、藤原さん。
藤原さんはもう高校を卒業してるし、大会にも出ないから話をしてもいいかな。
緑苑坂のことも何か知ってると思うし。
ちょっとお店に行ってみよう!
そう思っていつもの道を辿って、藤原さんのお店へと急いで行った。
えっと…ここを曲がって、あそこを左に行けば…。
…あれ、こんなところ工事してたっけ?
大吾side
…
恭平の言う方に目を向けると
急足でどこかに向かう天使の姿があった。
…ここの道を歩いてると言うことは
藤原さんの店か?
相変わらず能天気なやつ…
と思っていたら、次の瞬間
工事現場の足組が崩れ始め…
天使の方へと雪崩れ込んできた。
咄嗟に助けに向かうが、
どう走っても間に合わないっ!!
あんなのが落ちてきたら…
大会に出られないどころか一生を棒に振ってしまうっ!
だめやっ…どうすればっ!!
すると
……
ドォオオオオンッ!!!!!
…
…
一瞬何が起きたのか分からなかったが…
目の前には、放心状態で動けない天使と
落ちてきた骨組み。
誰かは分からないが…咄嗟に天使の体を押し倒し
あいつを庇って…下敷きになってしまった。
…
騒ぎを聞きつけた藤原さんがすぐにやってきてくれて、すぐに救急車を呼び、天使と下敷きになった奴が運ばれていく。
俺らも現場を見ていた証人で、一緒に病院へと着いていくことになった。
幸い天使は擦り傷程度も怪我で済んだようだったが…
下敷きになったやつは
会話ができるものの、体は…しばらくの間使い物にならないほどの怪我をしてしまった。
病室前で泣きじゃくる天使。
話を聞けば、あの庇ってくれたやつは、天使の中学時代の先輩らしい。そして今度西宮と対戦する緑苑坂の生徒。
もしこいつが庇わなかったら…今頃天使が…。
…
バァァアンッ!!!!
俺は我慢ができず、つい物に当たってしまう。
…
天使は俺らに昨日あったことを
震えながら話してくれた。
ショッピングセンターで緑苑坂の生徒に会い、天王寺の裏の顔を見てしまったことを。
先輩を金で脅して、不満があればレギュラーを下す。
…まあ、噂には聞いていたが
本当に金目当ての馬鹿な学校や。
すると
ウィーーンッ…
治療室のドアが開き、天使を庇った緑苑坂の生徒が中から出てくる。
車椅子に乗って、全身包帯で覆われていて…。どう見ても試合に出られる状況ではなかった。
そう言って泣きじゃくる天使の頭を優しく撫でてくれる。
…。
あいつはこんな先輩たちとバレーをしてたのか。優しく、守られるように。
天使も…すごく慕って懐いている。
…だれや、この場を壊す馬鹿げた声を出してるのは。
流星side
この声…もしかして。
顔を上げると、そこには花を持った天王寺さんが…立っていた。
そう言って僕の手を握ってくる。
この前と比べ物にならない強さで。
パァァーーーンッ!!!
咄嗟に西畑さんが天王寺さんの手を払いのけてくれて。
天王寺さんは笑いながら病院を後にした。
…
!!?
…
はぁっはぁっ!!
待って…
僕は治療室を出て天王寺さんを追いかけてきた。
ちゃんと話をするために。
このままじゃ…
また嫌な事が起きてしまうから。
違う…そんな事じゃない!!
仕返しなんてしたって
何にもならないから。
…
本当は僕を消そうとしたけれど、聡兄に邪魔された。
そう言う事でしょ?
…
顔つきが変わって
僕を睨みつけてくる天王寺さん。
やっぱりこの人…怖いよ。
目つきが変わって、僕のことを睨みつけてくる。
そ、そんな目で見ないでよっ。
僕は目を背けて…俯いてしまう。
…
…
そんな…掛け。
やだよ。
…
でも、負けるはずない。
聡兄のためにも。
こんな子に…バレーで負けるはずがないんだっ!
あんなことを言って…
僕だって怒るんだからねっ!!!
…。
でもちょっと冷静になったら
とんでもない約束をしてしまった事に気づいた僕。
負けたら…もう…
…。
それでも、やるしかない。
聡兄のために。
絶対に…
ぜっ、たい、に…。
負けないんだからっ!!!











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!