第9話

7 傲慢な王子様
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2024/12/28 11:27 更新
流星side
流星
はぁああっ!!!!

      バァァーーーーンッ!!!

…
暑さも和らいで、季節は秋に移り変わる。
大会も残すは準決勝、そして決勝を残すのみ。

僕は西宮高校は、無事準決勝へと進み
一週間後の大会まで練習も大詰めとなっていた。
監督
はい、休憩っ!!!
練習禁止っ。
しっかり休むようにっ!

…

はぁっ…はぁ…

謙杜
流星くん、お疲れ様〜。
決勝までチェンジなしにレギュラーなんて…
ほんまにすごいわ!
流星
ふふっ。ありがと。
後一週間で準決勝…だから
気合い入れないと。
道枝
そして、準決勝の相手は…
丈
緑苑坂高校やな。
関西の金持ち私立高校や。
流星
わっ!!
藤原さん…。

いきなり話に混ざってくる藤原さん。

ちょっと驚いちゃうから
一声かけて欲しいくらいだよ…。
丈
お前らがバレー用具届けろって
言ったから来てやったのに何驚いてんねん!
それより、これ。見ろ。

藤原さんは最新号のスポーツ雑誌を見せてくれた。
そこには準決勝の特集記事が載っていて…。

一週間後に行われる準決勝が
いかに注目されているのかを教えてくれた。

謙杜
緑苑坂…有名やんな。
関西の私立でもトップの財閥校。
高校の資金は、生徒の親が援助しているっていう…
道枝
ちょっとお金の匂いが強い学校だよね。
丈
まあ、大人の事情は色々あるけどな。
そこのバレー部がこれや。
ほれ、コートの天使に似ているやつもおるやろ?

僕に似てる人?
そんな人いるの?

雑誌をのぞいてみると、
屈強な3年生の中に1人混じっている小柄な子。

多分一年生…だよね。

流星
この子…ですか?
丈
そうや。天王寺宙(てんおうじ・そら)
バレー部唯一の一年生レギュラーなんや。
丈
お前と一緒で小柄だが頭はキレキレや。
一年にして司令塔って言われてるんよ。

別名“ゲームメーカーの王子”

…
同じ一年で、レギュラー。
体格も僕とそんなに変わらない。

違うのは…宙くんの方が頭がいいってことなのかな。
謙杜
ほえええっ…
流星くんの他にも一年で
レギュラー入ってる子がいるなんて
道枝
しかも…司令塔かぁ。
すごい子が相手なんだね。
丈
同じ一年同時の対決って事で
バレーボール界も盛り上がってる訳やな。
一年レギュラーなんて滅多にない事やから。
丈
ま!“天使と王子の戦い”やな。
流星
はは…そうなんですね。

そんな一年同士の対決なんて。
気が重いなぁ。
きっと向こうの宙くんも…僕と同じ思いなのかな。

でも、同い年でレギュラーなんて偶然というか
奇跡みたいな出会いだなぁ…なんて思っちゃった。
試合中はお互い敵同時だけど…
試合が終わったら友達になれたらなぁなんて、
浮かれたことを考えていたんだ。

それに、緑苑坂のページには…
謙杜
そういえば…流星くん言ってなかった?
緑苑坂に知り合いがいるって。
流星
あっ…この人。
この左から二番目に並んでる人だよ。
僕の大好きな先輩。すごくいい人なんだっ!
丈
ほう。なら、そいつに
天王寺の情報聞いておくのもありやな。
流星
そうですね。
ちょっと…怪しまれない程度に聞いてみます!

その先輩は僕のことをすごく可愛がってくれて、本当は緑苑坂も受験の候補に入れてたほど。

けれど…その話をした時
先輩はあまりいい顔をしなかった。


“うちの高校には来るな、他の高校に行け”って


僕何か気に触るようなことしたかな?

確かに仲のいい後輩が来たら調子狂っちゃうよね。むしろ僕なんか来たら、レギュラー争いになるし。

そんなことがあってから…
連絡を控えていた。

そして今度の対戦校が決まった時も、先輩が相手だったらどうしよう…って思ってた。
そして多分先輩は僕が西宮にいることを知らないと思う。

でも、天王寺くんのことも気になるし。

今度こそ連絡してみようかなって
そう思うことができたのだった。



ピーーー
監督
休憩終わり!
練習再開するぞっ。
レギュラー、コート入れっ!
流星
あっ、はーーいっ!

そして部活終了後。

帰り道、いつもならすぐ家に帰るけれど、今日は謙杜が寄りたいところがあると言っていたのでみっちーと3人で寄り道をして帰ることになった。

ついたのは、大きめのショッピングモール。
謙杜
なんか部活帰りって感じやなぁ!
道枝
謙杜はなにが目的でここに来たの?
謙杜
ふふふっ…。これやっ!
漫画「タビキュー!」が
ここの飲食店とコラボしてんねんっ!
謙杜
タピオカ買うと
キャラクターのシールがもらえるんやっ!!
流星
えー!!
その漫画知らないけどなんか楽しそう!
タピオカ飲めばいいの?
謙杜
ほんま?!協力してくれる??
道枝
流星くん…
謙杜にいいように使われてるだけだよ…。

そんなことを言いながらも
謙杜の嬉しそうな顔を見ると僕も嬉しくなってきちゃって…
3人並んでタピオカを飲むことにした。
流星
ふふっ。謙杜ありがと!奢ってくれて。
謙杜
その代わりシールちょうだい!

“32番でお待ちの方〜”
流星
あっ、僕の番号呼ばれたから
取りに行ってくるね〜。

久しぶりのタピオカに大喜びで、
のこのことカウンターへと取りに向かう。

だが…浮かれていた僕はカウンターに先にいた人が振り向いたことに気づかず、勢いよくぶつかってしまった。

ドンッ!!
流星
わぁあっ!!

ご、ごめんなさいっ!!
聡兄
ぁあっ!
こっちこそ…ごめんなさい。
聡兄
…って、りゅちぇ?
流星
え……ああっ!!
聡兄っ!!

そこにいたのは、僕の中学の部活の先輩で
今は緑苑坂高校へと通う、聡兄が立っていた。

あの…
同じ学校には来るなって忠告をしてきた先輩。

久しぶりで嬉しいけれど…
そんな事を言われてから、気まずくて
全然連絡を取ってなかった。

だから、昔みたいに話しかけていいのか
わからなかった。
流星
聡兄…えっと…久しぶり…

するといきなり
聡兄
りゅちぇっ!!!
なんで連絡してこないのっ!!

会いたかったぁっ!!

僕の気持ちとは裏腹に
聡兄は思い切り抱きついてきてくれた。

えっ…こんな感じでいいの?
また昔みたいに仲良くしてくれる…?

それなら、僕もっ。
流星
聡兄…僕も会いたかったぁよぉ!

ふふっ。よかった。
聡兄は僕の二つ上の先輩で
兄って読んでるけれど兄弟でも家族でもない。

僕が中学一年生の時に三年生としてバレー部を引っ張ってくれてたんだ。
僕らは気が合うのか、聡兄は本当の弟のように可愛がってくれて、ずっと一緒だったんだ。

だから、またこうして出会えて。
嬉しくてたまらなかった。
聡兄
りゅちぇ、バレーボール頑張ってるらしいじゃん。雑誌に載ってるの見たよ!
流星
おかげさまで!
今度の準決勝、聡兄の学校と戦うんだよね!!
僕強くなったんだ!聡兄だからって手加減しないからね!
聡兄
あっ…その事…なんだけど…。

ブーッブーッブーッ


ん?電話。僕じゃ…ない。
聡兄かな?
聡兄
あっ!!
ごめんね、部活の子から電話が。
聡兄
また、また!すぐ連絡するから!
その時にでもゆっくり話そ!
流星
えっ…うん。

そう言って、せっかく会えた聡兄は
走って消えていってしまったのだった。
でも、また連絡してくれるって。

ちょっとだけだけど。
蟠りが取れた気がして…嬉しかった。
謙杜
流星くーんっ!こっちこっち!
道枝
誰かと話してたみたいだけど…
流星
中学生の先輩なんだ!
さっき話した、緑苑坂高校でバレーをやってるって人!
謙杜
へえー!あの人が緑苑坂…。
優しそうな人やなぁ。

聡兄…確かにすごく優しかったなぁ。
僕はバレーが少しできるからって、上級生から嫌がらせを受けたことがあった。その時聡兄だけは僕の前に立って守ってくれたんだ。
お昼も一緒に食べてくれて、勉強も教えてくれて。
最後の大会は一緒にレギュラーとして大会にも出たなぁ。

いろいとろ思い出す、聡兄との思い出。

やっぱり…大好きなんだ。
流星
でも、こうやって。
また聡兄と戦えるのが嬉しい。
全力で行かないと!
道枝
そうだね。
全力で来てくれたら、先輩も嬉しいと思うよ。

そんな事を話しながら、部活とは違う、僕らの放課後の時間が過ぎていったのだった。





…


タピオカを飲んだ僕たちは、明日も学校があるという事で、そのまま出口へと向かおうとした。
謙杜
ふふっ。シールが3枚っ!
流星
謙杜嬉しそう!よかったね〜。

ショッピングモールを出て
信号を待っていると…
天王寺
はぁ?なんで言ったこともできないんだよ!!
聡兄
ご、ごめんなさい…。
次は、間違えないからっ!
天王寺
お前っ…貧乏人のくせにっ。
こんな事も出来ないのかよっ!!

ガッッッ!!!!
天王寺
レギュラー降ろされたいのかよ!?

…なんだろう。
高校生の…喧嘩かな。
こんな時間に、なんだか怖い。
道枝
身ちゃダメ。僕らには関係ない。
帰ろ?
流星
…う、うん。

そう思って通り過ぎようとしたけれど
やっぱり気になってしまう。

そしてちらっと顔が見え、そこにいたのは…
流星
えっ!?
聡兄っ!!

僕の大好きな聡兄だった。
複数人の高校生に囲まれて、
誰かの前で土下座をしている聡兄。

さっき買ってたタピオカが床にばら撒かれていて、
どういう状況かわからなかった。

そして、土下座をしている先にいたのは…
流星
えっ…

さっき雑誌で見た人。
あの僕と同じ一年生の“天王寺”さんだったのだ。

聡兄が天王寺さんに土下座…!?

聡兄
流星、もういいからっ!
関係ない。早く帰って!
流星
えっ…でも。

すると目の前の天王寺さんは、
何かまずいと感じたのか…


顔色をガラッと変えて、僕に笑顔で話しかけてきた。
天王寺
もしかして…西宮の大西さん?

わぁ!本物だっ!
天王寺
僕、緑苑坂高校の天王寺です。
同じ一年生のレギュラーですよね!
準決勝で戦えるなんて夢のようで!
流星
えっ…そう、ですね。

なんだか思っていた子と違う。

作り笑いを浮かべて、
僕の手を勝手に取って握手をしてきた。

ちょっと…怖い。

天王寺
松島先輩、タピオカこぼしちゃって。
みんなで大丈夫?って励ましてたんです。
もー!先輩、ドジっ子なんだらっ!
聡兄
…。
流星
聡兄…?
天王寺
さ!僕らは明日も学校なので
そろそろ帰ります!
一週間後…よろしくお願いしますね。
天王寺
さ、松島先輩、いきましょ!

そう言って天王寺さんは…車に乗って帰っていった。

聡兄は、どこか震えて、悲しい顔をして。
周りの高校生に担がれて…その場を後にした。


僕は、何も声をかけられなかった。
道枝
流星くんっ!!大丈夫!?
謙杜
さっきの人たち…
流星
うん。緑苑坂高校のバレー部だった。
そして、僕の先輩…も。

緑苑坂高校…ちょっと嫌な雰囲気を感じてしまった。天王寺さんも…あんな人だなんて。
聡兄に一体何があったんだろう。

あの後、聡兄に連絡をしても…帰ってくることはなかった。






……


天王寺
ったくっ!!松島のせいで…っ。
変なところ見られたじゃんかっ!!

どうしてくれるんだよぉっ!!!
聡兄
…ご、ごめんなさいっ。
天王寺
…しかも今度対戦する西宮の一年に。
あいつ…大会前に誰かにチクって
うちの評判下げるつもりじゃないだろうな。
生徒
見られたからには、早く始末した方が…
天王寺
言われなくても、そうするつもり。
元々目障りだったし!
天王寺
…準決勝で戦えないなんて
残念だけど…。ふふっ。

お金でなんでも解決できるんだから!
聡兄
…!!?

………



次の日。
学校の授業中も、聡兄のことが頭から離れなかった。

もしかして…
“うちの学校にくるな”って言ったのも…
あの光景が関係してるのかな。
僕があんな目に遭わないように。

聡兄いつも、優しすぎるからさ。

…いや、考えすぎ?

うーん。分からない。

スマホを見ても、聡兄からは連絡がない。

流星
はぁぁ…

結局僕は勉強にも、部活にも身が入らなくて。

そのまま、特に何も解決しないまま
1日が過ぎてしまった。
謙杜
(流星くん…今日元気ないなぁ)
道枝
(…大会までに解決するといいけど。)

トボトボと帰る帰り道。
なんだか気分が上がらないなぁ…。
そうだ、藤原さん。

藤原さんはもう高校を卒業してるし、大会にも出ないから話をしてもいいかな。
緑苑坂のことも何か知ってると思うし。
ちょっとお店に行ってみよう!

そう思っていつもの道を辿って、藤原さんのお店へと急いで行った。


えっと…ここを曲がって、あそこを左に行けば…。

…あれ、こんなところ工事してたっけ?







大吾side
大吾
…ったくっ。
なんで!大会前にサポーター壊すんやっ!!
大橋
大ちゃんそんな怒らんでよ〜。
練習に夢中で壊しちゃっただけやん?
大吾
慣れないサポーターして、
実力出なかったらどうするんや!!
恭平
まあ、大橋さんの場合は、実力というよりも…
力任せなところもありますからね。


…
恭平
…あれ。
西宮の子じゃないですか?

恭平の言う方に目を向けると
急足でどこかに向かう天使の姿があった。

…ここの道を歩いてると言うことは
藤原さんの店か?
大橋
なんや!
天使くんも藤原さんのところ行くみたいやん?
なら一緒に行こ!
大橋
おーーーいっ!!
大吾
あっ、こらっ!
流星
えっ…あっ!
大橋さん!高橋さん!
西畑さぁーーんっ!!

相変わらず能天気なやつ…

と思っていたら、次の瞬間
工事現場の足組が崩れ始め…

天使の方へと雪崩れ込んできた。
流星
えっ…
大吾
お、おいっ!!
大橋
流星くんっ!!!
恭平
…っ!!!

咄嗟に助けに向かうが、
どう走っても間に合わないっ!!


あんなのが落ちてきたら…
大会に出られないどころか一生を棒に振ってしまうっ!
大吾
逃げろーーっ!!!!

だめやっ…どうすればっ!!


すると
聡兄
りゅちぇぇっ!!!!

……

ドォオオオオンッ!!!!!


…

  …
流星
きゃああっ!!!

一瞬何が起きたのか分からなかったが…

目の前には、放心状態で動けない天使と
落ちてきた骨組み。

誰かは分からないが…咄嗟に天使の体を押し倒し
あいつを庇って…下敷きになってしまった。
流星
えっ…な、なにが…

聡兄っ!!!!

…

騒ぎを聞きつけた藤原さんがすぐにやってきてくれて、すぐに救急車を呼び、天使と下敷きになった奴が運ばれていく。

俺らも現場を見ていた証人で、一緒に病院へと着いていくことになった。
幸い天使は擦り傷程度も怪我で済んだようだったが…

下敷きになったやつは
会話ができるものの、体は…しばらくの間使い物にならないほどの怪我をしてしまった。

病室前で泣きじゃくる天使。
話を聞けば、あの庇ってくれたやつは、天使の中学時代の先輩らしい。そして今度西宮と対戦する緑苑坂の生徒。

もしこいつが庇わなかったら…今頃天使が…。

…
丈
今日は工事が休みの日やった。
なのに、誰もいない現場で
足場が崩れるなんて可笑しいやろ?
しかも…流星に…。
恭平
そして、なぜそこに緑
苑坂の生徒がいたのか。
もしかしたら…
こうなるって分かってたんじゃないのか?
大橋
もしかして…
今度の大会で対戦する西宮を狙って…?
しかも…エースを。

バァァアンッ!!!!


俺は我慢ができず、つい物に当たってしまう。

大吾
っ…!!!
腐り切ってるっ!!!
なんて卑怯な事をするんやっ!!!!


…
流星
…こんなことに巻き込んで…
ごめんなさい。

実は…昨日。

天使は俺らに昨日あったことを
震えながら話してくれた。
ショッピングセンターで緑苑坂の生徒に会い、天王寺の裏の顔を見てしまったことを。
先輩を金で脅して、不満があればレギュラーを下す。

…まあ、噂には聞いていたが
本当に金目当ての馬鹿な学校や。
丈
流星。お前はもうかかわるな。
これ以上何かあると…
今度こそ大会に出れなくなるぞ?
大吾
…いいか?
タクシーを呼ぶから今すぐ帰れ。
登下校も誰かと一緒に…

すると


ウィーーンッ…


治療室のドアが開き、天使を庇った緑苑坂の生徒が中から出てくる。

車椅子に乗って、全身包帯で覆われていて…。どう見ても試合に出られる状況ではなかった。
流星
聡兄っ!!!
聡兄
あっ…りゅちぇ。
無事だったんだね。

よかった…。
流星
で、でもっ!聡兄が…。
これじゃ、バレーできない…。
最後の大会だった…のに。
聡兄
いいのいいの!
りゅちぇが無事なら。
元々俺よりりゅちぇの方が何倍も上手い。
また大学でもバレーはできるから。

そう言って泣きじゃくる天使の頭を優しく撫でてくれる。

…。
あいつはこんな先輩たちとバレーをしてたのか。優しく、守られるように。
天使も…すごく慕って懐いている。
聡兄
約束して?
今度の大会。
絶対に西宮が勝ってくれ。
聡兄
そして…あんな馬鹿げた学校を
早く…
天王寺
あーーっ!!
松島先輩っ!!

大丈夫ですか!!?

…だれや、この場を壊す馬鹿げた声を出してるのは。





流星side

この声…もしかして。

顔を上げると、そこには花を持った天王寺さんが…立っていた。
流星
な、んで…
天王寺
聡先輩が怪我したって聞いたから!
心配できたんです!
天王寺
…先輩。最後の大会だったのに。
この子を庇ったせいで
出られなくなっちゃいましたね。

あーあ。余計なことするから。
大吾
お前…っ。
今なんてっ!!!!
丈
大吾っ!!ここは病院や。
迷惑かけるな。
天王寺
ま、これで?君は大会に出られるようになったんだから。
感謝しないと!
君の身代わりになってくれた先輩に。
恭平
…その言い方。
お前、こうなる事が
分かってたように感じるけど。
天王寺
そんな!やめてくださいよ!
証拠なんてないし。

…では、また。大会で。

そう言って僕の手を握ってくる。


この前と比べ物にならない強さで。
流星
うっ…!いっ、たぃっ…
大吾
っっ!!!
離せって!!

パァァーーーンッ!!!




咄嗟に西畑さんが天王寺さんの手を払いのけてくれて。


天王寺さんは笑いながら病院を後にした。


…
丈
あいつ…確か。天王寺財閥の跡取りやな。
…緑苑坂の大半の資金は
こいつの家が出してるとか。
大吾
結局金かよ。
恭平
バレー部もこいつが支配しているわけか。
こいつの言うことを聞いてゲームが回るって意味で“ゲームメーカーの王子”か。
大橋
で、でも…俺らにどうにかできる問題じゃ…
聡兄
ごめんなさい、こんな事に巻き込んで。
僕が行けないんです。
実は…
聡兄
…って!!
りゅちぇがいない!?


!!?
大吾
…ったく!!あいつはっ!!!


…



はぁっはぁっ!!
待って…

流星
待って!!!!

天王寺さんっ!!


僕は治療室を出て天王寺さんを追いかけてきた。
ちゃんと話をするために。

このままじゃ…
また嫌な事が起きてしまうから。

天王寺
…何?今更仕返し?
そんなことしたらうちの家が黙ってないけど。

違う…そんな事じゃない!!


仕返しなんてしたって

何にもならないから。
流星
違う。聡兄に謝って…?
聡兄、最後の大会だったのに。

天王寺さんがやったんでしょ?
天王寺
何言ってんの?
流星
僕…見えたよ。
あの工事現場に天王寺さんがいたところ。

…こっちを見て笑ってた。

…


本当は僕を消そうとしたけれど、聡兄に邪魔された。

そう言う事でしょ?



…


顔つきが変わって

僕を睨みつけてくる天王寺さん。
天王寺
あーあ。見られてたのか。
僕の本性知った人は、みんな消してるのに。
天王寺
本当に!
“コートの天使”は厄介だなぁ。

やっぱりこの人…怖いよ。

目つきが変わって、僕のことを睨みつけてくる。
そ、そんな目で見ないでよっ。

僕は目を背けて…俯いてしまう。
天王寺
同じ一年レギュラーってだけでも
僕とキャラ被りしてるのに。

本当にムカつく。


…
天王寺
…ま、ここで争っても。
お互い大会控えてるし。
天王寺
なら、一つ賭けをしてみない?
流星
掛け…?
天王寺
今度の大会…西宮VS緑苑坂で
君の学校が勝てば…
天王寺
松島先輩に土下座して謝るよ。
みんなの前で。

…

天王寺
でも。お前が負けたら。

高校卒業まで、僕の召使いね。
つまり、聡先輩の代わりってこと!
流星
えっ…。

そんな…掛け。

やだよ。


…
でも、負けるはずない。


聡兄のためにも。
こんな子に…バレーで負けるはずがないんだっ!
流星
分かった。

僕が勝ったら…聡先輩も!
もう自由にしてあげて!
天王寺
分かったよ。

…精々頑張ってね!



あんなことを言って…

僕だって怒るんだからねっ!!!

…。




でもちょっと冷静になったら

とんでもない約束をしてしまった事に気づいた僕。


負けたら…もう…


…。


それでも、やるしかない。
聡兄のために。



絶対に…

ぜっ、たい、に…。



負けないんだからっ!!!

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