第8話

6 悪魔と死神と
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2024/11/30 11:00 更新
流星side

僕は高槻第二の人達に連れられて難波学園の文化祭に来ただけなのに…。

なぜか目の前で
難波学園vs高槻第二の試合が行われようとしていた。
準決勝で戦うのに、わざわざ対戦しなくても…



3対3の20ポイントマッチ。

向こうのコートには、西畑さん、大橋さん、そして…なぜか藤原さんが入る。
それぞれアップをして。
大橋
何や、丈兄と試合する久しぶりで俺がワクワクするわ!
こう見えても
まだクラブチームで現役やからな。
お前も気抜くなよ。悪魔。
大吾
言われなくてもそうします。

難波と高槻の試合がいち早く見られるとのことで、文化祭中なのに体育館に人が集まり始めてきた。

…大変な事になっちゃった。
小瀧
さ、そろそろアップ終わってええか?
時間もったいないから。
大吾
そやな。お前らの相手に
時間かけてる方が馬鹿馬鹿しい。
さっさと蹴りつけるぞ。

バサッッ…


西畑さんの体からは…もうすでに悪魔の羽が
コートを包むように大きく広げられている。
それだけ本気なんだ。

そして高槻のコートには…
なぜか恐ろしい死神のようなものが僕には見えていた。大きな釜を持って、今にも襲い掛かろうとする怖いものが。

悪魔と死神…。

恐ろしい戦いが始まろうとしている。





大吾side


悪魔と死神と…その動向を見守る天使。

何や、このおとぎ話みたいな構図は。


正直準決勝前にこいつらとなんて戦いたくはない。
それは多分向こうもそう思っている。
こんな相手のプレイを見せ合うような事をしてしまったら、準決勝までに作戦を立てられてしまう。

なのに、それでもコートに立つ。

ここで負けたら、天使が死神の誘惑へと導かれ
あいつらの手の中に入れられてしまう。

あんな野蛮な奴らの中に。
そんな姿…見たくない。

まさか天使如きにこの俺がムキになるなんて。

そんな俺が許せなくもあり、どこか今までに感じたことのない不思議な感情になっていた。


大吾
…っ。だから、負けられないんや。


恭平
審判は…難波学園2年高橋が行います。
重岡
贔屓すんなよー。
恭平
では、両者。コートに。

…。



高槻は長身の小瀧をブロッカーに置き、司令塔謙パワー攻めが桐山。ウィングスパイカーにエースの重岡か。
普段とポジションが違うとはいえ、気は抜けない。

むしろポジションが違うからこそ…
奴らの作戦が全く見えてこない。

まあそれは俺らも一緒やけど。


       ピーーーッ!!!


難波学園のサーブで試合が始まった。


大橋
はぁぁああっ!!!

バァアアアーーーンッ!!!
1



バァアアアーーーンッ!!!
2




来る。サーブっ!!!


3っ!!!
重岡
おりゃぁあっ!!!


      バァアアアーーーーンッ!!!!
大橋
ほう、結構力あんなぁ。
でも、パワーなら負けないで?

バァアアアーーーンッ!!!
1っ!!


大吾っ…飛べっ!!!

パァァアアンッ!!!
2っ!!


…。

はっすんが力尽くでとったボールを繋ぎ、
藤原さんの狂いのないトス。

そして

次俺の番。



バサァッ…

黒い翼を大きくひろげて

大吾
…っ!!!

3っ!!


      バァアアアーーーーンッッ!!!



力を入れたかと思わせて、予測不能の打撃を落とす。

それが俺の軟打撃。誰にも取られへん。



…トン…トントン…。



ピーッ!!
恭平
難波学園っ!!

先制は難波学園。

あいつらもこっちにポイントが入るのは
想定内だろうけど。

…このままやってやるからなっ。





小瀧side


さすがは優勝候補。難波学園。
力だけではなく、高校生レベルを超えたテクニックも兼ね備えている。

まずは首相の大橋。
パワーはうちの桐山と同レベルの桁外れ。
ちゃんと今後の展開を予測し、チームがボールを回しやすいように流れをつくっている。
まるで物語を読むかのように。

そして、あれが卒業生の藤原か。
クラブチームに入っただけはあるな。
セッターとして、狂いのないトスを相手に合わせて投げている。どんな相手でも必ず取れるように。
そしてあのバネはかなりの物や。

最後に、軟打の悪魔…ね。
悪魔というだけあって、表情も怖く黒いオーラを纏ってるやん。
撃つのが難しい軟打撃を、最も簡単に出してくる。予測不可能で、一度あいつの技にはまったら抜け出せないだろう。

あいつは今後どんな球を撃ってくるんや?
まだまだ…読めないやつ。


でも…俺らも。
負けてないで?
小瀧
はぁ〜。さすが難波さんや!
手加減!手加減っ!
桐山
じゃ、次のサーブはそっちから。
流星

(この試合…誰が何を考えてるのか
全くわからない。どうなっちゃうの…?)


大吾side



点が入れられたのに
何をヘラヘラしてるんや?

あいつらの考えが…読めない。


だめや。それを考えたら呑み込まれてしまう。

敵を翻弄させて、集中を途切らせて。
自分たちの予想通りに相手を動かし…
負の道へと叩き落とす。


それがあいつらのプレイスタイル。

…ゲームの死神のやり方や。
大吾
…っ!!
おい、大吾。
あいつらの事を考えるんじゃない。
考えたら負の道に引き摺り込まれるぞ。
大吾
…分かってます。
準決勝前に、この感覚を味わえて良かったです。
大橋
大ちゃんは、あそこ。
流星くんのことだけ考えてや!
大吾
はあっ?!
あ、アイツは別にええねん!!!

あんな…っ。


あそこで心配そうにこっちを見つめる天使。
…お前も見ておけよ。
これがアイツらの本性や。



       ピーーーッ!!!
大橋
はぁあああっ!!

       バァアアアーーーンッ!!!



向こうのコートでは、重岡がボールを取り…
桐山へ。

そして最後に…小瀧…

小瀧
残念。俺やないで?
大吾
えっ…?!
重岡
俺やっ!!!!

        バァアアアーーーンッ!!!


予測が外れ、誰もいないコートへとボールが落ちていく。


くそっ…!!!
間に合わないっ!!!
…っ!!!


        バァアアアーーーンッ!!!



何とか間一髪で藤原さんがボールを取ってくれた。
その様子を見て笑う高槻の奴ら。


…何笑ってんねんっ。

ふざけるなっ!!!


1……2…っ
大橋
大ちゃんっ!!!
冷静にっ!!


っ…ダメやこいつらの挑発にのってはっ。

…ふうっ…。
大吾
っ!!!!!

      バァアアアーーーーーンッ!!!


そして、俺は軟打撃を撃つ。

さっきの球とは違った方向へ力を向けて。


…トン…トントン…




       ピーーーッ!!
恭平
難波学園っ!!


重岡
ったく。さっきの顔おもろかったわ!
“予想外れたっ!”って顔!!

コート越しに俺のことを笑い物にする奴ら。

あの野郎…っ。
小瀧
まあ、あーゆうこともあるから
お手柔らかに!
桐山
さ、次々。


…。


その後も挑発絡みの試合は続いたが
何故かあちらには一向に点が入らず…

気づいたらラストも難波学園が決めて


ゲームはこっちのストレート勝ちに終わったのだった。



…。
小瀧
やっぱり強いなぁ!
じゃ、俺らも準決勝に向けて…帰って練習や!
流星
あ、あの小瀧さん…
小瀧
おおにっちゃん?
ごめんなぁ。お出かけの続きはまた後日な。
楽しみは取っておいた方がええやろ?

ぽん…
小瀧
絶対また迎えにくるから。
流星
えっ…うん。
重岡
じゃ!また!
桐山
邪魔したなぁ〜。
小瀧
おおにっちゃんは難波の人らと
文化祭楽しんでなぁ〜!

そんなことを言いながらさっていく高槻第二の奴ら。




アイツら…わざと負けやがった。

 
大橋
流星くんを引き換えに出せば、大ちゃんが本気出すって分かってたんやろな。
それで情報収集か。
…ったく、ひどい奴らや。
まあ、高槻第二だからな。
ホンマに関わらん方がええ。

いや、違う。
天使を狙ってたのは本当や。

小瀧が通り際に俺にかけた言葉がその証拠。
小瀧
おおにっちゃんが欲しいのは本当やで?
あんな可愛い子、あげるわけないやん。
小瀧
今日は…あんたの情報沢山もらえたから…
身を引いて返してあげるけど。
準決勝では…本気で天使をもらいにいくからな。
小瀧
気をつけや?

…そう言い残していた。


高槻第二。本当に厄介で俺の大嫌いな奴ら。

情報を取られたとしても、
あんな奴らが勝てるはずがない。


決勝進出の枠も天使も…渡してたまるかっ。

準決勝、見てろよ。







流星side


小瀧さん達帰っちゃった。

けれど、何だかすごい試合を見せてもらえた僕。
今日は3対3で簡易的な試合だったけれど…この試合をフルで見れると思うと、今からドキドキしちゃう。

でも…なんで小瀧さん達
わざと負けちゃったんだろう。


そんなポツンと残された僕を見つけて、大橋さんが声をかけてくれる。
大橋
流星くん!
良かったら俺らで文化祭案内しようか?
流星
えっ…いいんですか!?
大橋
もちろんやん!
大ちゃんも一緒に!
大吾
!?!?
俺はいいっ!!
大橋
そんなこと言わずにぃ!
丈兄は?
俺は店に戻るから、すまんな。
てかこんなに寄り道して流石に怒られるわっ!!

そう言って…大橋さんは無理やり西畑さんの手を掴み、3人で文化祭を回ることとなったのだった。

さっきは外だけだったから、校舎内に入るとまた別世界が広がっていた。
白を基調とした壁と教室と、かっこいい制服。
学園ドラマを出てくるみたいっ。

僕は1人で感動しているところを大橋さんはニコニコ眺めていて、西畑さんはどこか気まずそうについてくる。

本当に西畑さんって、人見知り屋さんなんだなぁ。
流星
本当に…広いですね!
さすが私立高校っ!!
大橋
西宮も私立やん笑
そっちの学校は?
流星
僕のところは…もう少し古いです笑
でも学食が美味しくて…!!

…タッタッタッタッ
生徒
おいっ!大橋っ!
調理部の模擬店の人数足りなくて…今いけるか?
大橋
なんやてーっ!!
今すぐいくわっ!!
大橋
…ごめんっ!流星くん!
あと大ちゃんに任せたから!
大吾
えっ…!!?
流星
…あっ、はい。
大橋
ごゆっくり〜っ!

そう嵐のようにさっていく大橋さん。



残ったのは…驚いて言葉が出ない西畑さんと
どうしていいかわからない僕。



…よし。
ここは僕がリードしなきゃだよねっ。
大吾
…ったく。
おい、お前。
もう帰っ…
流星
西畑さん!僕お腹空きました!
ご飯食べたいです!
大吾
…は?
流星
ご飯!探しましょう!

そう言って人見知りの西畑さんを連れて回ることにした。

学食ホールの方へと向かうと、沢山模擬店が並んでいてたこ焼きや焼きそば、タピオカなど沢山買い込み…外のベンチへと腰をかける。

流星
いただきまーすっ!



大吾side


なぜか俺は天使と2人で学祭を周り、外のベンチで食事をしている。
どうしてこんなことに?

…あんまり誰かと2人きりでいるのは得意ではない。
しかもよりによって…相手は天使。

確かに高槻第二には渡したくはないが
俺が欲しいなんて一言も言ってない。

なのに…側から見たらどう見ても俺のものになっている。
いざ隣にいられると、いつもの俺じゃ無くなるというか…すごく変な気持ちになる。

初めはただの敵同士だったのに。
なんでこんなにも親密になってしまったんやろ。

…。

隣で嬉しそうにご飯を食べる天使。

俺が最初抱いていた、マヌケて自信のない西宮のエースという見方は天使あれから少し変わっていた。
一緒に戦って、試合を見せて、関わっていくうちに、こいつの持っている良さも少しずつ分かってきた気がする。
 

そして…あんな野蛮な奴らに渡したくない。


そんな気持ちまで芽生えてしまった。

この、高槻第二の奴らに渡したくないという感情がどこから来てるのかはわからないが…。

まあ、
対戦相手として心配しているだけに過ぎないだろう。

流星
西畑さん!美味しいですっ!
大吾
そうか、
良かったな。


大吾
お前はなんで高槻第二と一緒にいるんや?
流星
…うーん。
可愛がってくれるから?ですかね。

また誘ってくれるって言ってたし!
大吾
お前…そういうところだそ。
警戒心がなさすぎる。
大吾
またアイツらはお前のところに来る。
警察沙汰になったら大会もアウトや。
だから関わっちゃダメなんや!!!
流星

ぼーっと俺の方を見てくる。
な、なんやっ!
流星
西畑さん、何でそんなに
僕のことを心配してくれるんですか?
後輩でもないのに。
大吾
なっ…?!!

そっ、それはっ…。
大吾
お前に決勝戦に来てもらわないと、困るからやっ!!
俺はっ、お前を決勝戦で倒す。
その前に他の奴らにやられたら困るんよっ!!

流星
ふふっ。そうですか。
でも何だか
誰かに心配されるって…嬉しい。

ありがとうございます。
大吾
…。
流星
気をつけます!
でも、まずはお互い準決勝頑張りましょ?
大吾
お前に言われなくても
分かってるわ。


俺らが決勝に行き、
こいつらが決勝にくれば…今度こそ敵同士。


こんな隣でニコニコ飯を食う仲ではなくなるのか。



そう思うとなぜか…心が痛んでくる。



だからこんな親しくなんてなりたくなかった。
取られたくない、そんな不思議な感情も抱きたくなかった。


もし敵同士では無かったら
お前に対して俺も、笑顔が増えてたのかなって。

そんなことを思ったけれど。
…もう遅いんや。


俺の目標は大会優勝。
そのために、そろそろ見切りをつけなければ。



そんなことも知らずに
その後も…天使は俺の隣で笑顔を振り撒くのだった。


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