第43話

# 41
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2018/10/20 14:44
あなたが男に襲われてるのを見て俺は


助けてやらなきゃ って瞬間で思った。


心でも体でもそう感じた。
佐野玲於
寒くない?
あなた

寒いよ、そりゃ。

って苦笑いするあなた。
佐野玲於
手はカイロだからな。
さりげなく、自分のポケットに手を入れた。


ほんの少しだけ暖かくて
あなた

玲於、冷たいもんね。

佐野玲於
俺、心は暖かいから。
あなた

なにそれ、私が冷たいみたいじゃん。

佐野玲於
まぁな。
意味わかんない ってちょっと拗ねる。


あ ~ 。


これから帰るんだな。って考えると嫌だ。
あなた

私、事故に遭って何忘れたんだろ。

そう言われた時。


心臓がドクンと鳴った。


足も止まった。
あなた

大事なこと忘れてないかな。

眉毛をちょっと垂れさせて困ったように笑う。


大事な事忘れてないかな って…
佐野玲於
…るよ…
あなた

え?

佐野玲於
大事な事忘れてる。
何も言えない顔。
佐野玲於
俺の事覚えてないんだよな。
限界だった。


今まで、ずっと。


あなたの頭から俺が居ない世界が広がってて


ずっと初対面扱いされて。


亜嵐クンとその他の友達は覚えてて、正直キツかった。


もし、それが友達なら。


ただの友達ならその思いは感じなかったのかもしれない。


けど、あなただから。


好きな奴に忘れられるとか一番…ね。
あなた

…ごめん、何忘れたのかな…!

悲しんでるじゃねぇか。


バカやろ。


もう。
佐野玲於
わり…
帰ろ。
ポケットから手を出してあなたの手を掴む。
引いて歩こうとした時、グッと止められた。
あなた

私、何忘れたの…!

暗くて見えない夜だったがあなたの目が涙が


溜まっているのは分かった。
佐野玲於
別に、思い出さなくていい。
無理やりじゃなくても…
あなた

思い出したいの…!
私の記憶のせいで誰かが悲しんでるなら
それは嫌だから。

あなたの眼差し。


それは、俺の心を満たしていく。
俺に伝わる力は徐々に伝わってくる。


けど、これでまた関係が崩れるならこのままでいいかも。
佐野玲於
言わない…
あなた

なんで…!

佐野玲於
言わないったら言わない。
あなた

意味わかんない…!
理由は?

佐野玲於
こっちの立場にもなってみろ…!
どんな気かもしれないで…
あ…


やば。
あなた

玲於クン…に関係があるの…?

絶対、今目泳いでる。


その場から消えたくて振り返って歩く。
それからあなたは何度も聞いてきたけど俺は、無視をした。
最低だ。
あなた

ねぇ…無視しないで…

その言葉に俺は、ちょっと引っかかって


動く足が止まった。
佐野玲於
ごめん。
あなた

大丈夫…

佐野玲於
別に、思い出さなくて大丈夫。
あなたは今のあなたの記憶のまま
進んでいけば大丈夫だから。
俺の事なんかわすれろ。


そう言ったつもり。
あなた

やだ。

佐野玲於
なんで。
あなた

玲於クンとの思い出の場所とか行ったら
思い出せる気がする…!

佐野玲於
あんま、行ってないから…
あなた

なんかない!?
玲於クンとの思い出!

俺の頭にぱっと浮かんだのは。


俺にとっては大切な思い出。
佐野玲於
看病してくれた時…
あなた

へ?

佐野玲於
俺、熱出てぶっ倒れた。
その時あなたが看病してくれた。
あなた

それが…思い出…なの?

佐野玲於
おう。
どんな思い出よりもこの思い出は俺にとっては偉大なもの。
あなた

そっか。
私、そんなことしてたんだ。

佐野玲於
してた。
あなた

上手に出来てた?

佐野玲於
それはもう。うん。
横顔が美人で褒めたな。
あなた

なにそれ笑

過去の事思い出してると自然と笑えていた。


俺もあなたも。
あなた

ありがとう。
ここだから。

そう言って着いたのは可愛らしいアパート。


うん。


前にも来たことある。
佐野玲於
気をつけてな。
あなた

ありがとう

ドアが閉まった。


よし。


帰ろうと振り返ると
白濱 亜嵐
玲於…?
佐野玲於
亜嵐クン。
白濱 亜嵐
なんでいるの?
佐野玲於
あなたがちょっと大変な目に…
白濱 亜嵐
また、玲於がなんかしたのか。
佐野玲於
俺は助けただけ。
何もしてない。
亜嵐クンの横を通って家に戻る。


大通りに出ると人も多い。


イルミネーションとかも増えてきてカップルが


うじゃうじゃいて、これじゃ俺が浮く。
急いで家に帰った。
佐野玲於
思い出の場所か…

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