玲於side
それから、1、2時間は飲んだ。
完璧酔ったあなた。
ほら、亜嵐クンまでも止めに入ってる。
これは、相当やばいやつ。
さっきからそればっか言って…
飲もうとするあなたのグラスを取り上げた。
そうだ…
こいつに貸しあって…
でも、それは今度買い物行く時に服買ってやるって
言った。
なんて、ふにゃふにゃの顔でいうから
ちょっとだけ、ドキってしたり…
こういう所が、無防備つうか。
あんなけ、気をつけろって言ったのによ。
亜嵐クン目の前にさぁ、お前。
確かに…
あなたはブスではない。
人並みモテそうな顔してるし…
ま、そこが気に食わない。
だから、それ。
笑うなって…
完璧!って言いながらグラスにまたお酒を注ぎ込もうとする。
腕を掴むと、あなたはすぐに振り離した。
そして、亜嵐クンの元に駆け寄って
って、上目遣いで聞くんだ。こいつ。
亜嵐クンも反応に困ってて…
けど、俺今モヤモヤした。
あなたに腕振り離された時、どっか消えるんじゃないかって焦りと混じってもやもやした。
やっと、帰れる。
そう思った時
出ようとする亜嵐クンの袖をチョンと掴んで呟いた。
何言ってんの?こいつ。
俺に送って貰うんじゃないの?
亜嵐クンがいい。
その言葉に俺はぐうの音も出ない。
なにもされてないのに、落ち込み具合が酷い。
亜嵐クンは俺の顔を見た。
後ろからひょこっとほんのり頬を赤く染めたあなたが出てきた。
ひらひら手を振るあなたはいつもより大人に見えた。
酔った影響もあると思うけど、なぜか今思った感情は、自分の意思の感情だ。
離したくない。
あなたは俺の事だけを見て欲しい。
そう思ったのは今日が初めて。
俺は店を出た。
最近、秋に近づいて肌寒い季節に入ろうとしている。
ずっとずっと、片想いしていたあなたにまた恋してしまった。
もう、二度としないと決めていた事。
傷つけた奴。
それは、あなただから。
傷つけるくらいならしない方がいい。
2人で至近距離で歩く後ろ姿を俺は見ることしか出来ない。
それだけで、俺は悔しくて
亜嵐クンだけには取られたくなかった。
路上の壁をグーで思いっきし、叩いた。
自分の気持ちを押し殺して。
俺とあなたは同じ高校。
それとは別に、亜嵐クンも同じ。
俺と亜嵐クンは話も合い、意気投合して仲良くなった。
そんな時、変なことを言い出した。
こんな先輩の恋愛話を聞くのは初めて。
正直、びっくりしていた。
これはびっくりじゃない。
モヤモヤして仕方なかった。
今更、後悔しても無駄。
俺も、あなたが好きだから。
俺にはその意味が全く理解出来なかった。
亜嵐クンの彼女貰って、あなたを譲る…?
俺はそんな、ノリのいい男じゃない。
この男はどこまで、粘るつもりだ…
亜嵐クンの顔は真剣でかつ、悲しそうな顔。
意味わかんねぇ。
なんで、あいつまで巻き込まれなきゃいけないんだ。
どこか裏がある笑顔で俺の隣を歩いて行った。
譲るとか…
ありえない。
あなたが俺の隣からいなくなる…?
考えただけで、怖くなって嫌になる。
それから、あなたから告白された。
すっげぇ、嬉しかった。
これまで以上にない嬉しさだったのに。
亜嵐クンから言われた言葉が蘇る。
このまま付き合っちゃえば亜嵐クンのものには…
余計に、奪われるか…
ほんと、うぜぇ。
変な理由で断った。
あなたは、泣きそうに目に涙を浮かべて
俺の前を走っていった。
あなたの柔軟剤が微かに匂って
どんどん、薄れていく。
こんな感じにあなたも消えていく…
地面に座り込んだ。
すると、亜嵐クンの彼女と思われる女が
俺に抱きついてきた。
嫌だった。
嫌だったのに、俺は抵抗出来なかった。
それから、あなたとも話さなくなって
みんなから不思議がられたけど何も言えなかった。
これから、亜嵐クンの反撃が始まるんだ。
あなたなんか、絶対亜嵐クンに好きって言われたら
目をハートにして懐くに決まってる。
けど、亜嵐クンとあなたの噂は全く立たない。
亜嵐クンも卒業して─────
何も無くてよかった…
俺らの卒業式。
最後にあなたとも話せて安心できた。
あなたと話してると、心の底から温かくなった。
大丈夫、心配ない。
亜嵐クンはただの脅しだったんだ。
本気にしてなかった。
そう思いたかった──────
会社で偶然再開。
あなたもいるし…
これって…!!
これから、狙っていくつもりか。
もう、亜嵐クンの反撃は始まっているんだ。
そう、夜道で呟いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。