自分の職場に戻ってきたら亜嵐クンはもういて…
亜嵐クンが…
私の手を引っ張って部屋から出た。
何も言わない。
ただ、強く強くてを引っ張られているだけ。
来た場所は空き部屋。
亜嵐クンがドアを閉めて私の方へ歩いてくる。
両手を握る。
すると、私の唇に亜嵐クンの唇が重なった。
初めてだった…
もちろんだよ…
そんなの。
そっか って笑って 行こ って手を繋いだ。
その時。
ドアが開いて
顔が見えないほどの大きなダンボールを持って
誰かが入ってきた。
亜嵐クンがそう話しかけると
ダンボールを正面に顔だけ横向けた。
玲於だった。
玲於は私達の空気を察したのか
小声で言う。
私は咄嗟に手を離した。
苦笑いでそう言う。
だって…
ニコっと笑う玲於。
駄目だよ…
そんな顔されちゃ…
すると
そう玲於に言った。
ダンボールの中身を触りながら
ちょっと笑ってて…
それ聞かないで…
聞きたくない。
けど、心の端っこでちょっと期待心を…
そう言った瞬間、目の奥から熱いものを感じた。
もう、嫌…
私、こんな気持ちになるなら玲於になんか
会わなきゃよかった。
高校も会社も違うところにして初めから
赤の他人だったらどれだけよかったか。
私は外に飛び出した。
亜嵐クンの私を呼ぶ声は消えて─────
非常階段に座り込んだ。
好きじゃない
はっきりそう言われた。
何も言えない感覚。
でも、玲於さ私のこと
「嫌いじゃない」
って言ってくれたじゃん。
それって好きってことだと思ってた…
勘違いだったのか…
それを思い出す度にまた心臓は苦しくなる。
玲於なんか…
非常階段に響き渡る。
もうやだ…
玲於に会いたくない。
顔も見たくない。
声も聞きたくない。
噂話も聞きたくない。
全部…全部…。
嫌だ。
それから、結構泣いちゃって目も腫れた。
ちか からはめっちゃ心配されたけど
ただ、目にゴミ入って擦った。
って言った。
ちか …
口を開けて目も大きく開いて私みる。
そう言って、今日7時に約束した。
ちか はちょっと今日寄るとこあるから
それから行くって。
だから
会社の入口を待ち合わせにした。
腕時計を見ると
6時45分。
あと、15分もある…
最近、寒くなったし私今日薄着…
とことんついてない。
15分待つことにした。
心臓がドクン…と鳴った。
1番聞きたくない声。
振り向くと…玲於。
何この自然体。
ごめん って軽く頭下げた。
意味わかんない。
なに、幸せに って。
あ…
その場から逃げ出した。
ちか ごめん。
今日飲みに行けないや。
そうLINEしてパラパラ降る雨の中走った。
11月 29日。
人生壮大な失恋日。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!