俺は全速力でじんたんの家へ向かう。
じんたんの家が近づくにつれて、胸騒ぎが大きくなる。
やっとじんたんの家へ着いた。
急いで門を潜り、ピンポンを押す。
ドアを強く叩いてみた。
反応が無い。
俺はじんたんの家の周りをぐるっと一周してみる。
小窓が開いていた。
そこから俺はスルリと家の中へ入り、じんたんを探す。
リビングへ入ろうとドアへ手を掛けたその時、手に何かがついた。
べっとりとしている、まるでイチゴジャムのような…赤い血だった。
勢いよく扉を開けると、
そこには横たわって意識を失っているじんたんがいた。
肩を叩きながら耳元で呼びかけるが反応は無い。
脈を測ってみると…大丈夫、まだ息はある。
出血しているじんたんの頭をぐるりと自分の服で、その他の切れている場所はそこら辺に散らばっていたタオルを使って止血した。
そのままじんたんを急いで担いでベッドへ運ぶ。
見るに耐えない酷い無数の痣。
俺はじんたんの額に優しくキスを落としてじんたんをベッドに下ろした。
タオルで血を拭って、氷嚢で頭を強く打った箇所を冷やす。
俺の大切なじんたんを傷つけた人に言わなくてはならない。
じんたんが悲しむかもしれない。
だけど、だけど…君をもうこんなボロボロにしたくないから。
俺は静かにじんたんのお母さんの帰りを待った。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
現在の時刻17:30
玄関の方で鍵をかちゃかちゃとする音が聞こえた。
帰ってきたようだ。
ガチャッと扉が開き、お母さんが入ってきた。
そのまま何事も無かったかのようにリビングへ入っていった。
もう1度謝り、俺はじんたんのお母さんの方へ向かった。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
俺はわざと明るく挨拶をする。
じんたんのお母さんはとてもビックリしていた。
あぁ、この人は愛というものを知らないんだろうな…
自分でもビックリするくらいに叫んでいた。
この人にじんたんの苦しみを知って欲しい。
1人、いつも泣いていたあの小さな背中を…
どうか、わかってやってほしい。
怒りがふつふつと湧いてきた。
なんで、なんであんなに傷ついてるのに、独りで頑張っていたのに、
よくそんな薄情な事が言える…
今にもじんたんのお母さんが俺に掴みかかりそうになった時、
じんたんが叫んでいた。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
頭が重たい。
うっすらと目を開ける。
見慣れたいつもの天井、あぁ、僕死んでないのか…
ゆっくりと起き上がろうとした時、頭に激痛が走る。
そうだ、殴られたからか。
だが頭には包帯が巻いてあり、その他の傷もガーゼが貼ってある。
もしかしたらテオくんが助けに来てくれたのだろうか。
その時、下で物音がした。
テオくんの声も。
僕はゆっくりゆっくりと階段を降りていく。
母さんの怒鳴り声が聞こえてきた。
テオくんが危ない。
テオくんが…テオくんが僕と同じ目にあってしまう。
宝石のように綺麗な笑顔が…傷ついてしまう。
嫌だ、嫌だ嫌だ。テオくんは傷つけさせない。
たとえ母さんだとしても…
気づいたらそう叫んでいた。
テオくんは俺に駆け寄ってきて、
僕はテオくんの言葉を遮って母さんを睨む。
言い切った。
まさか母さんに反抗する日が来るとは…
テオくんは呆気にとられていた。
ごめん母さん。本当にごめん。
でも、これだけは譲れない。だって、
テオくんは…
俺の…
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
じんたんは本当に申し訳なさそうな顔をしながら謝る。
あー、本当に可愛い…
そういえば、さっきから何か違和感が…?
俺とじんたんはしばらく笑っていた。
大きなイチョウの木の下で
俺はじんたんに言った。
じんたんはポカンとしてたけど、その後涙を目にいっぱい溜めながら指切りをしてくれた。
じんたん、好きだよ。
この世界でいっちゃん好き。
六年生の秋、
じんたんへの恋心を自覚した日。
……To be continued
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。