駿佑side
謙杜が席を立った瞬間
思わず声をかけた
気づかなかったのか
聞こえないフリをしたのか
わからないけど
謙杜は、俺の声に応えることなく
その場から離れた
みんなの隙間を縫って
通路へ出ると
謙杜の後を追いかけた
謙杜の表情を、思い返す
メッセージを送った後
チラッと謙杜の方を見ると
謙杜はスマホを見つめたまま
無表情で固まっていた
自分の感情で
いっぱいいっぱいになっていたけど
謙杜をじっと見つめると
いつもと様子が違うことに気がついた
周りに合わせて笑っているけど
目が、笑ってない
そんなに強いわけじゃないのに
何かを紛らわす様に
急にお酒をグビっと飲んだ
結局、一度も目が合うことはなかったけど
そのまま席を離れた謙杜を
放っておけなかった
追いかけた先にいた謙杜は
なんだか、つらそうな顔をしていた
…俺のせい?
たぶん、そうやんな、、、
胸が、ぎゅっとなる
周りに誰もいないことを確認すると
謙杜の手を引いて、個室に入った
名前を呼んで、見つめたけど
謙杜が目を逸らすから
また俺の胸に、モヤモヤが広がった
責めたいわけじゃないのに
ただ、好きなだけやのに
胸の中の澱みが、行き場を失って
つい、溢れ出てしまった
謙杜は目を逸らしたまま
つぶやいた
少し酔っているせいか
上手く感情をコントロール出来なくて
いつもより強い言い方をしてしまう
感情的になっても
いいことないのに
優しい言葉をかけたいのに
嫉妬心が、邪魔をする…
あー、、、
こんなこと
言いたいわけじゃないのにな…
謙杜の声は、少し震えていた
そこで初めて
謙杜の瞳が潤んでいることに
気がついた
ぎゅっ
急に抱きつかれて
心臓が跳ねた
謙杜の唇は、震えていた
ぎゅっ
愛しくて、愛しくて
抱きしめる腕に、力を込めた
そう言って、頬に手を当てると
謙杜はうるうるしながら
俺の目をじっと見つめてくれた
謙杜は、安心した様に笑うと
もう一度俺に、そっと抱きついた













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。