阿部side
五人で教室を出て向かった先は……、
いや、分かってたよ??
階段登る辺りから!めっちゃ登るじゃん、どこまで行くんだよ、って。
転校する時、学校のパンフレットはしっかり読んだから覚えてる。
、……色々困る、、とは……??
あぁ、そういうことか。
モテるんだったこの人達。一緒にお昼食べたい人とか沢山いるよね……
………うーん。いいのかなぁ、これ。
皆の理由も分かるけど(人に追いかけられるとかはわかんないよ!?どんだけ人気なの……、)仮にも立入禁止になってる場所だし……
あれ、俺には拒否権無い感じ……?
さっきの四人の会話を聞いててもイマイチよく分からなかった。
先輩達…、??
この先に四人の先輩が居るのかな?
ん?ちょっと待て、?
この四人って何部?
A、ダンス部。
ダンス部の部員って………、
頭でぐるぐると考えてるうちにもラウール君は屋上に続く扉を開ける。
え、待って、先輩ってまさか………!!
ギギィ、………と金属のドアが擦れる音がする。
それまで薄暗かった場所に春の暖かい日差しが差し込んで目が薄目になってチカチカする。
聞き覚えのある声に耳を傾ける。
ほら、やっぱり……!?
四人は扉の前に横一列で並んで立ってて、屋上にいる先輩達には俺が見えないようにしてるみたい。
ビクリと肩が震える。今まで照達と楽しそうに話してたのに、急に温度の無い声で話しかけられる。
全身から血の気がサァーと引いていく。
お弁当の包を掴んでる手が震える。
「迷惑」 「邪魔」
あぁ、ごめんなさい。
仲良くなれたなんて、お話してみたいなんて、もっと知りたいなんて、
考えてみれば、こんなキラキラした輝いてる人達と俺が釣り合うわけ無いのに。
照達も無理して声かけてくれたのかな。
勘違いしちゃって、馬鹿みたい。
図々しくて、ごめんなさい………
四人が前に出て、屋上に座っている先輩方の姿が見える。
深澤先輩、翔太先輩、涼太先輩、………あと、うろ覚えだけど確か佐久間先輩。
四人の先輩の目が見開く。
照達が何か説明してくれてるみたいだけどそれも俺に対しての哀れみなのかな。
こんなみっともない勘違いをしていた俺が申し訳なくて、恥ずかしくて、頭を下げる。
今朝出会ったお二人と目が合う。気まずくなって咄嗟に目を逸らした。
俺は振り返ってもと来た道を戻る。
とにかく早く、この場所から逃げ出したかった。
ぐっ……
突然、後ろから腕を引っ張られる。
恐る恐る振り返ると……
瞳を苦しそうに歪ませた深澤先輩が居た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。