第20話

❄緑色❄
3,713
2023/10/23 12:50
阿部side


9人で涼太先輩のお弁当を食べた後、(全部すっごく美味しかったんだよ!!でもやっぱりお気に入りは涼太先輩の卵焼き!)今は皆で片付けをしてる。

俺は翔太先輩と皆の使った箸を回収する。


もうすぐでお昼休憩も終わっちゃうから。時計は予鈴が鳴る五分前を指している。



そこで、ふと気になったことを隣にいる翔太先輩に聞いてみる。






阿部亮平
俺が使わせてもらった箸って既存の物ですよね??
渡辺翔太
いや?買ったやつだけど。
阿部亮平
えっ、それって皆さんが……?
宮舘涼太
違うよ。翔太が買ってきたんだよね?
阿部亮平
急に会話に入ってきた涼太先輩に驚く。
宮舘涼太
昨日の放課後、お店の買い出しに行かないといけなくて部活終わった後に俺と翔太の二人で駅前に行ったんだよね。
宮舘涼太
その時、翔太が気づいたの。「お昼食べる時阿部ちゃんの箸無いよな」って。そこから別行動になったんだよね。俺が食材買って、翔太が箸買いに行って。俺の家に箸たくさんあるからそれでも良かったんだけど翔太がどうしても買ってやりたいって聞かなくて……
渡辺翔太
おい、俺そんなこと言った覚えないぞ。
宮舘涼太
あはは笑。冗談だよ、半分だけね。
阿部亮平
半分……?
宮舘涼太
だって翔太が買ってやりたいって言ったのはほんとじゃん?
渡辺翔太
………うるさい




「買ってやりたい」



翔太先輩、俺なんかにそんなことしてくれたんだ……


普段は素っ気無いのに本当は凄く優しくて仲間思いな人なんだろうな……。


嬉しくて、心の深いところがじわりと暖かくなる。

宮舘涼太
でもなんで緑なの?
阿部亮平
緑……?


あ、箸の色か。俺は手元にある箸に視線を落とす。

そういえばそうだな。深澤先輩は紫。佐久間先輩はピンク。……だった気がする。


他の皆もそれぞれ違う色の箸を使ってた。


なんとなく、似合ってるなって思った。


まだ全然、皆のこと知らないからほんとになんとなくだけど。



宮舘涼太
俺達の箸はダンスの衣装に取り入れる色でしょ?阿部の色はなんで緑なのかなって。
俺も少し気になるかも。翔太先輩が緑を選んだ理由。



渡辺翔太
売ってる場所に俺らの箸と違う色が緑しか無かったってのもあるんだけど……









   





渡辺翔太
なんか……、、阿部ちゃんに似合うかなって…
阿部亮平
………、
渡辺翔太
あ、ごめん。緑嫌いだった?俺阿部ちゃんの好きな色とか知らなくて……
阿部亮平
っ、違います……




色なんて興味無かった。


だから、好きな色なんて無い。


必要最低限、何かを区別できたら色なんてどうでも良いよ。


全部白黒で良いじゃんって本気で思ってた時期もあった。


女の子には可愛らしい色。男の子には男の子らしい色。


理解が出来なかった。






けど、この人達は違うんだ。


それぞれが"色"を持ってる。それに性別も正確も関係無い。


俺もこの人達みたいになりたい。


翔太先輩が似合うって言ってくれた手元にある緑が鮮やかに目に映って、口が綻ぶ。




佐久間大介
りょうた〜!!なんか皿1枚足りないんだけど〜!!
少し離れたところに居る佐久間先輩の声が聞こえる。
宮舘涼太
……はーい。今行くから〜!
涼太先輩は複雑そうな顔を俺に向けた後、佐久間先輩のいる方へ向かっていった。








この場には翔太先輩と俺の二人になる。


視線を翔太先輩に投げかけると気まずそうに逸らされる。


翔太先輩は知ってるのかな?緑色の意味。


知ってても、知らなくても、この色が俺に似合うと言ってくれた翔太先輩には俺がそんなふうに映ってるのかな、、


嬉しくて、嬉しくて。
阿部亮平
翔太先輩、ありがとうございます。
渡辺翔太
え?
阿部亮平
緑、大好きですっ!
渡辺翔太
………っ、あっそ……

俺の好きな色をつくってくれた翔太先輩に感謝の気持ちを込めて笑顔を向ける。ふふ、っと笑えばまた視線を逸らされた。


緑色の意味は、………
























 

     










渡辺side



阿部亮平
翔太先輩、ありがとうございます。
渡辺翔太
え?
涼太が佐久間に呼ばれてこの場から居なくなってなんとなく気まずい雰囲気が流れる。


何を話せばいいか分からなくて黙っていると急に阿部ちゃんがお礼を言い出すからビビった。


急にどうしたんだろうとそれまで逸らしていた視線を阿部ちゃんに向ける。



そしたら、

阿部亮平
緑、大好きですっ!
首をコテンと傾げながら笑いかけてきた阿部ちゃん。


「大好きです」が決して俺に向けられたものじゃないのに頭の中で響いて離れない。


俺の頭おかしくなった……?


渡辺翔太
………っ、あっそ……
咄嗟に頭が動かなくて素っ気無い返事になってしまう。


それでも目の前の阿部ちゃんは変わらずふふ、と笑いかけてくる。


心臓がドクンと感じたことのないくらいに高鳴る。


息が苦しくなるくらい早く進む拍動に混乱する。




何だよコレ、知らない。




気づけばもう目の前に阿部ちゃんは居なくて、何故かホッとする。


目黒と二人で談笑しているようだ。


どこかぎこちない目黒と笑い合っている阿部ちゃんを見るとまた、不思議と心臓がキュッとなる。








え、マジか………、


感じたこと無い心臓の動きに混乱してる中にどこか冷静な自分も居て。


この感情が何なのか、答えが頭の中で顔を出す。











宮舘涼太
翔太〜、そろそろ教室戻るよ。
屋上の入口で幼なじみに呼ばれる。もう皆屋上には居なくて、春の暖かい空気が広い屋上を満たす。


コクリとだけ首を縦に振って俺も入口へ向かう。


宮舘涼太
………翔太、なんか凄い顔赤いけど……
渡辺翔太
っは!?
慌てて自分の顔に手を当てる。けど自分の手も熱を持っているのか触ってもあまり違いが分からなかった。
宮舘涼太
阿部と……
渡辺翔太
ん?え、何?
小さくボソリと聞こえた涼太の声を聞き取れなくてもう一度聞き返す。



宮舘涼太
阿部となんかあった……?



その目はいつになく真剣そのもので。


俺は一瞬で涼太の考えていることを悟る。


長い間近くに居たことが、それを確かだと思わせる。





俺と涼太はきっと同じだ。



渡辺翔太
………別に、なんも



今はそうやって答えるので精一杯だった。
























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