第13話

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2023/03/25 14:16






その後、何故かイザナに連れ出された









この時期の夕方はかなり肌寒い









吐いた息も少しだけ白くなっていた









黒川イザナ
オマエ、王の命令に背いたな
雨宮あなた
んぇ?
黒川イザナ
とぼけんじゃねえぞ
黒川イザナ
言ったよな?
"タバコの匂いは嫌いだ"ってよぉ
雨宮あなた
……………はっ…
雨宮あなた
いや違うのイザナこれには別に深くもないけど理由が…
黒川イザナ
オレに言い訳すんのか?
雨宮あなた
……………ハイ、すんません
黒川イザナ
……………なんで?
雨宮あなた
…何がでしょうか……
黒川イザナ
タバコ、楽しいの?
雨宮あなた
えぇ………別に…
雨宮あなた
なんか、気分転換っていうか……
現実逃避っていうか………
黒川イザナ
ふぅん…
雨宮あなた
全然興味無いじゃん
黒川イザナ
興味ねえし、別のこと考えてた
雨宮あなた
ほう……別のことっすか
黒川イザナ
王の命令に従えないオマエに、
どうやって分からせてやろうかってな
雨宮あなた
………何やらせるつもり…?
黒川イザナ
……………………さあ?
雨宮あなた
もしかしなくとも思いつかなかったな
黒川イザナ
あ?
雨宮あなた
いえ何も






ひんやりとした風が吹き込む









カラン、とピアスの音が小さく響いた









雨宮あなた
………それ、うるさくないの?
黒川イザナ
あ?何が
雨宮あなた
ピアス。
結構大きいし、音もなるから…
黒川イザナ
……別に…何とも
雨宮あなた
ま、イザナのトレードマークだもんね。
邪魔とか思ってたらそんな着けないか
黒川イザナ
……………そういやオマエ、ピアス空いてないね
雨宮あなた
あ、まあ……たしかに
黒川イザナ
……決めた
雨宮あなた
は?
黒川イザナ
左耳ここにピアス空けろ
雨宮あなた
………何故そうなったイザナ…
黒川イザナ
ちょうどいいじゃねえか。
鶴蝶は右、オレは両方に空いてるんだし
雨宮あなた
ニコイチならぬサンコイチってか
黒川イザナ
何だそれ、訳わかんねえ
雨宮あなた
うん忘れていいよ
黒川イザナ
オマエ、今日どうせ帰らねえだろ。
うちで空けんぞ
雨宮あなた
ひえ……こわ…
黒川イザナ
大丈夫だ。
殴り合いの喧嘩してる時よりは痛くねえよ






またカラン、と音が鳴る









イザナの手が左の耳を掠める









少しくすぐったくて肩を竦めた









文句を言ってやろうかと思ったけど、イザナの楽しそうな表情を見て、その思考はすぐに溶けていった



















帰宅後、どこから持ってきたのか未使用のピアッサーを出てきたイザナ









ソファに着席させられ、髪をかき上げられる









顔もいつもより近くて、ほんの少しだけ気になる









黒川イザナ
んじゃ空けるぞ
雨宮あなた
はーい……
バチン
雨宮あなた
ひっ……!?
黒川イザナ
ん、綺麗に空いた
雨宮あなた
音!!めっちゃ怖いんだけど!?
めっちゃ音したんだけど!?
黒川イザナ
くくくっ、涙目なってる
雨宮あなた
これ耳ついてる……?取れてない?
黒川イザナ
取れてんじゃね?
雨宮あなた
んな怖いこと言うなよ……
黒川イザナ
鏡見ろよ
雨宮あなた
…………おお…なんか着いてる……






シルバーの石がついた小さなピアスが着いている









少し耳がジンジンする









思っていたより出血が無いことに内心驚いている









雨宮あなた
……イザナなんか慣れてるね
黒川イザナ
そりゃあな
黒川イザナ
穴安定したら、ちゃんとしたの着けような
雨宮あなた
うん………うわぁ…やっぱ違和感ある…
黒川イザナ
そのうち慣れるだろ
黒川イザナ
なぁ?コレは、オマエがオレの所有物っていう印なんだからな






鏡越しにイザナと目が合う









耳たぶを撫でられるとやっぱりくすぐったい









私はイザナの下僕であり所有物なんだ









そう考えるだけで、自然と口角が上がる









やっぱり、私は狂人なのかもしれない…









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