『教えてください、結末を。』
私がそう告げると、キールは頷き…真剣な目をして全てを語ってくれた。
そう告げられた瞬間、雨がよりいっそう強くなり…雨の匂いがお茶の匂いを打ち消していた。
次々と驚く真実で頭が少し混乱する。右手で目の下を触れながら話を聞く。……私は、この目を生まれつき持った ということはつまり私は…_____。
思い当たること……。
そう言えば、少し前 追っ手に「散れ」と言った途端、私の願いが天に届いたかのように雷が落ちたんだったけ。
自分自身も、危機に迫った時 自分じゃない何かの力が芽生えてくる気配もした。……それも、竜の目の力?
そう言えば……何故、キールは竜の目について詳しく知っているのだろう。
次の言葉で、キールが何故詳しいのか。少し分かった気がした。
ははっ。とキールは笑った。お茶を一口飲むとまた語り出した。
独り占め……。話を聞く度に、色々謎だったことがパズルを完成するかのように繋がってゆく。
そして、その度に私の人生は 見えなくなってきた。
…要らないです。
喉に言葉が詰まった。要らないって言ってもどうにもならないこと。
世界を操ることなんて興味無い。むしろ竜の目を持たずに生きた方が私はよっぽど幸せな人生を送っていたのだろう。
でも、神様という者がいたのならば それを私に与えた。それは何の理由があるのか。
それを見つける為に私はこの場にいて、この話を聞き受け止めているのではないだろうか。
キールは、右手の人差し指を立てた。
次に、キールは 中指を人差し指に並べて立てた。
これを聞いた瞬間、私は今何歳なのか頭に浮かべた。
_______16歳。 あと4年……。
6年前と言ったら、実の兄よって殺されかけたあの日を思い出した。
あぁ、本来ならば私はそこで______。
お茶に酷い顔をした自分が映る。悔しさと悲しさと孤独感で胸がいっぱいだった。
服の中に隠されている父から授かった指輪を服越しに握った。
お父さん、私はどうすればいいの?
20歳まで生きられないのなら、頑張って王座を奪っても意味が無いよ。
バシッ____!!!
自分の頬がヒリヒリと痛む。キールは、目を開く。私のした行為が理解出来なかったようだ。
私は、自分で自分の頬を強く叩いたんだから___。
キールは、目を真ん丸にして私の主張に耳を傾けていた。
キールは、立ち上がり 何かの本をとっては端を破り…そこにペンで何かを走らせた。
そして、私の方へ差し出してきた。
いつの間にか、雨は止んでいて太陽の光が水溜まりに反射してキラキラと輝いていた。
私を認めてくれたのだろうか、歯を見せてニコッと笑うキールに私も精一杯の笑顔で返事した。
早速、私はキールにマントを借りて身を隠し…紙切れに書かれた場所に向かって街へ降りたのであった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。