第15話

私の最期
399
2021/08/25 08:03
『教えてください、結末を。』
私がそう告げると、キールは頷き…真剣な目をして全てを語ってくれた。
キール
竜の目は、悲運を呼ぶと言われている物だが…その裏にはあらゆる真実が隠されているんだ。
キール
悲運だと呼ばれている本来の理由知ってるかい?
イビル
…いいえ。
キール
それはね、世界を逆転させるほどの力を持つ恐ろしい物だからだよ。
イビル
世界を…逆転?
そう告げられた瞬間、雨がよりいっそう強くなり…雨の匂いがお茶の匂いを打ち消していた。
キール
簡単に言えば、人の思い通りに世界を操ることが可能だと言う事だ。
キール
しかし、それは生まれつきその目を持って来た人しか効かない。
次々と驚く真実で頭が少し混乱する。右手で目の下を触れながら話を聞く。……私は、この目を生まれつき持った  ということはつまり私は…_____。
キール
どうやって操られるのかはその人しか知らない。
キール
そこまで聞いて思い当たることある?
思い当たること……。

そう言えば、少し前 追っ手に「散れ」と言った途端、私の願いが天に届いたかのように雷が落ちたんだったけ。

自分自身も、危機に迫った時 自分じゃない何かの力が芽生えてくる気配もした。……それも、竜の目の力?
イビル
…………
キール
それでね、問題なのはここから。
キール
竜の目、その自体にも凄く価値がある。
キール
それを知っている人は案外少ないがな。
そう言えば……何故、キールは竜の目について詳しく知っているのだろう。
キール
持ち主以外がこの目を持つと、悲運の逆。
邪悪を払うという効果を得ることが出来る。
次の言葉で、キールが何故詳しいのか。少し分かった気がした。
キール
オマケに、どんな病気もどんな怪我も治すことが出来るんだ。
ははっ、神様からの贈物みたいだね。
イビル
何故、それを知る人が少ないのですか?
キール
いい質問だね。
ははっ。とキールは笑った。お茶を一口飲むとまた語り出した。
キール
そんなレアな物は勿論、数は物凄く少ない。
キール
だから、噂はそんなに広まらなかった。まず竜の目の存在をあまり知られてないからね。
キール
…いや、独り占めしたいが為に回らなかったのかもしれないな。
独り占め……。話を聞く度に、色々謎だったことがパズルを完成するかのように繋がってゆく。

そして、その度に私の人生は 見えなくなってきた。
キール
だから、その話が広まったとしても悲運を呼ぶという恐怖の話だけだ。
キール
しかし、深く知っている人は喉から手が出るほど欲しがり…狙っている。闇市場では物凄く高値で売れる。
キール
まぁ、僕は薬剤師を機にこの話を知ったよ。
イビル
…そんなに価値のある物なんですね。
持ち主以外が持ったら。
キール
持ち主も悲運を呼んでしまう変わりに世界を操る力を与えられているけどね。
イビル
別に私はそんなの……
…要らないです。
喉に言葉が詰まった。要らないって言ってもどうにもならないこと。

世界を操ることなんて興味無い。むしろ竜の目を持たずに生きた方が私はよっぽど幸せな人生を送っていたのだろう。
でも、神様という者がいたのならば それを私に与えた。それは何の理由があるのか。

それを見つける為に私はこの場にいて、この話を聞き受け止めているのではないだろうか。
イビル
それで、竜の目の持ち主の結末はどうなるのですか?
キール
すまない、前置きが長くなったね。じゃ、本題に入ろう。
キール
今まで話したことによって、竜の目はただ物では無いことは分かったね。
キール
悲運は、結末にも影響を与える。
キール
そんな凄い物をただで持っていられる訳が無いよね。いや、持ってはならないものだ。
キール
だから、その分の代償があるんだ。
キールは、右手の人差し指を立てた。
キール
代償の1つ目として、力を得る分の不幸を負う。
キール
それが良くないことが起こる、悲運の元。
キール
2つ目は、死に方だ。
次に、キールは 中指を人差し指に並べて立てた。
キール
竜の目の持ち主は、長くて20歳までの寿命だ。
これを聞いた瞬間、私は今何歳なのか頭に浮かべた。

_______16歳。 あと4年……。
キール
それ以上長く生きた者は聞いた事がない。
キール
それで死に方も決まっている。
キール
誰の手によって命を絶つんだ。
キール
多分、本来君は…6年前あの場で死ぬはずだったんだろうね。
6年前と言ったら、実の兄よって殺されかけたあの日を思い出した。

あぁ、本来ならば私はそこで______。
キール
だいだいは、竜の目の価値を知っている者によって殺されるケースが多いかな。
キール
いいか?運命に抗うことは不可能だ。
キール
どんだけ、もがいてもな。
お茶に酷い顔をした自分が映る。悔しさと悲しさと孤独感で胸がいっぱいだった。
キール
…以上が竜の目についてと、その結末だ。
イビル
……ッ、うぅ…。
キール
ん〜悲しそうな顔をされてもなぁ。それが真実だもんなぁ。
服の中に隠されている父から授かった指輪を服越しに握った。

お父さん、私はどうすればいいの?

20歳まで生きられないのなら、頑張って王座を奪っても意味が無いよ。


バシッ____!!!


キール
……はぇ?
自分の頬がヒリヒリと痛む。キールは、目を開く。私のした行為が理解出来なかったようだ。

私は、自分で自分の頬を強く叩いたんだから___。
イビル
…そんなの関係無い!!!
イビル
私はやり遂げる!運命なんでぞ…もう6年前に抗ってる!!
イビル
私は、今のラザーラ国王から、王座を取り返す!
イビル
キールも知っているんでしょう?
ラザーラ国の状況を……。
イビル
こんな場所で悩んでいる暇は無い!
キールは、目を真ん丸にして私の主張に耳を傾けていた。
イビル
でも、今の私の力は皆無だ。
イビル
でも、!強くなる。強くなるから。
キール
は、はぁ……。魂消たよ。
キール
あは、ロンが君につく理由が分かった気がするよ。
キール
ふふ、そうだね。じゃ、強くなりたいのなら…母国を守りたいのならそこに訪れるといい。
キールは、立ち上がり 何かの本をとっては端を破り…そこにペンで何かを走らせた。

そして、私の方へ差し出してきた。
キール
そこに行く価値は君に充分あると思う。
キール
ロンは、僕が看病するから行っといて。
……頑張れ、王女様。
いつの間にか、雨は止んでいて太陽の光が水溜まりに反射してキラキラと輝いていた。
イビル
……ッ、はい!!
私を認めてくれたのだろうか、歯を見せてニコッと笑うキールに私も精一杯の笑顔で返事した。















早速、私はキールにマントを借りて身を隠し…紙切れに書かれた場所に向かって街へ降りたのであった。





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