カチッ....カチッ....カチッ....カチッ....
秒針が数を刻む音だけが響いている
蓬髪の青年____太宰治は、両手を組み何かを祈る様に
唯、一点を見詰めていた。
何時もは飄々としている、あの太宰が。
こんなにも張り詰めた表情で何かを願っている様子は、他の探偵社員にとっても異例中の異例。
国木田でさえも何を云えずに己の業務をこなす事しか出来なかった。
十数分前....____
今回の仕事では留守番組で或った国木田、与謝野、賢治達が待つ、武装探偵社に太宰が血相を変えた表情で駆け込んで来たのだ。
国木田は息を飲んだ。
其れも其の筈である。
数分前、太宰から逃げる様に探偵社を飛び出した依頼人___藍華が、“血だらけ”で....太宰に世で云うお姫様抱っこで抱えられていたからだ。
国木田は血相を変えて医務室へと駆け出した
焦り顔を国木田で察したのか、与謝野女医は直ぐに太宰の目の前迄駆け寄って来た。
藍華の躯が太宰の元から与謝野へと引き渡される。
医務室に消えた与謝野を見送った太宰は
藍華の血で濡れている自身の手へと視線を落とした
...頭に過ぎるのは、4年前のあの日。
血に濡れる掌が、躯を支えた時の感覚が、、、
あの時とリンクする
太宰の呼吸は浅く、過呼吸に成り掛けて居る
賢治は太宰にニッコリと微笑み掛けた。
太宰と其れに応えるように、薄く微笑む
其の様子を見て国木田はホッと息を吐いた
....その時、
太宰はヘッドホンを掛けて“其れ”を聞くと、
拙い...と、一言呟いた
そう云い捨て、太宰は探偵社を飛び出した
_____...ヘッドホンから微かに戦闘音が聞こえているのに、国木田達は気付かない。。。
太宰は走った
行先は.........と或る、路地裏。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。