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第12話

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2,834
2020/04/18 12:46
カチッ....カチッ....カチッ....カチッ....

秒針が数を刻む音だけが響いている



蓬髪の青年____太宰治は、両手を組み何かを祈る様に
唯、一点を見詰めていた。

何時もは飄々としている、あの太宰が。
こんなにも張り詰めた表情で何かを願っている様子は、他の探偵社員にとっても異例中の異例。
国木田でさえも何を云えずに己の業務をこなす事しか出来なかった。



十数分前....____
今回の仕事では留守番組で或った国木田、与謝野、賢治達が待つ、武装探偵社に太宰が血相を変えた表情で駆け込んで来たのだ。
太宰治
太宰治
与謝野女医っ、居る?!
国木田独歩
国木田独歩
太宰。貴様今迄 何処を.....、っ?!
国木田は息を飲んだ。

其れも其の筈である。
数分前、太宰から逃げる様に探偵社を飛び出した依頼人___藍華が、“血だらけ”で....太宰に世で云うお姫様抱っこで抱えられていたからだ。


国木田は血相を変えて医務室へと駆け出した
国木田独歩
国木田独歩
っ...与謝野女医!今直ぐ治療の準備をお願いします!
焦り顔を国木田で察したのか、与謝野女医は直ぐに太宰の目の前迄駆け寄って来た。
与謝野晶子
与謝野晶子
....太宰、その子は妾が預かるよ
太宰治
太宰治
はい....
お願い、します
藍華の躯が太宰の元から与謝野へと引き渡される。
医務室に消えた与謝野を見送った太宰は
藍華の血で濡れている自身の手へと視線を落とした




...頭に過ぎるのは、4年前のあの日。

血に濡れる掌が、躯を支えた時の感覚が、、、
あの時とリンクする




太宰の呼吸は浅く、過呼吸に成り掛けて居る




宮沢賢治
宮沢賢治
太宰さん
宮沢賢治
宮沢賢治
あの人は大丈夫ですよ
何たって、与謝野女医が居るんですから!
太宰治
太宰治
っ、賢治くん.......
宮沢賢治
宮沢賢治
与謝野女医に治せない怪我は無いです!
太宰治
太宰治
......そう、だね
賢治は太宰にニッコリと微笑み掛けた。
太宰と其れに応えるように、薄く微笑む



其の様子を見て国木田はホッと息を吐いた




....その時、
国木田独歩
国木田独歩
.....ん?
国木田独歩
国木田独歩
太宰。御前のヘッドホンから騒音が聞こえるんだが、如何にかせんか!
太宰治
太宰治
.....騒音、だって?
太宰はヘッドホンを掛けて“其れ”を聞くと、
拙い...と、一言呟いた
太宰治
太宰治
国木田君、与謝野女医に藍華を宜しくお願いしますって、伝えといて...っ...!!
そう云い捨て、太宰は探偵社を飛び出した




国木田独歩
国木田独歩
お、おい!太宰!!
宮沢賢治
宮沢賢治
国木田さん。
今は取り敢えず、藍華さん?の事、きちんと見ててあげましょう。
国木田独歩
国木田独歩
...あ、嗚呼。そうだな

_____...ヘッドホンから微かに戦闘音が聞こえているのに、国木田達は気付かない。。。








太宰は走った

行先は.........と或る、路地裏。

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