藍華side 時折 NO side
カリカリカリ.....と、万年筆で書く音だけが響く
部屋の主が不在のこの部屋で、部屋の主の代わりに報告書の整理を行っている女性___北原藍華。
藍華は何時もより緊迫とした表情で万年筆で書き続けている。怒っている訳でもなく、また、悲しんでいる訳でも無い。
そして、その様子を心配げに見つめる構成員数名...。
何ともいえない雰囲気が、部屋中に漂っていた。
突如、勢い良く扉が開いた。
その扉を開けた者は
この部屋で、扉を乱暴に扱う事の出来る者...__
つまり、部屋の主。太宰治ある
太宰はそう早口で云うと、ある戸棚から短銃を取り出し、早々に執務室を出て行こうとした。
ふと、太宰さんが何処か遠くへと行ってしまう気がし、咄嗟に太宰さんの外套の裾を掴む。
太宰さんは無言の儘、振り返らない。
カチッ...カチッ...と時計の針が動く音が鮮明に聞こえてくる。
ゆっくりと振り返った太宰の表情は強ばっていて...、少しの余裕も無い、何時もの太宰とは全く持って違う表情だった。
冷たく突き放される一言...。
普段とは違う彼の姿に、藍華はビクリと躰を震わせた。
彼は悲しそうに微笑むと
早足で執務室を出ていってしまった。。。
藍華は暫くの間硬直していたが、
ハッと我に返り太宰を追い掛けて必死に駆け出した。
_______________
太宰さんを追い掛けて、到着したのはとある洋館だった。
目の前には沢山の死体。
そして、未だ微かに聞こえる銃声..._____
死体だらけで足場も無き道を、私は必死に走った。
此処迄ずっと走っていた所為か、息が苦しい。
酸素が頭に回らない。
それでも。私は必死に走った...
走って、走って、走って_____
其所に辿り着いた。
洋館の最深部。
広大で天井の高い舞踏室に、彼らは居た。
太宰さんはその中央で膝を着いている
視線の先にいるのは...____織田作さんだ。
織田作さんの下には大量の血溜まり...
見るからに、致命傷だった。
私は、声を出せなかった。
足を動かす事も儘らなかった。
ただ。彼らの言葉を呆然と聞く事しか出来ない...。
織田作さんの血に濡れた手が、太宰さんの手を握る。
太宰さんが息を飲むのが判る。
織田作さんは、云った。
織田作さんは青白い顔で微笑した
藍華の瞳から、大粒の涙が零れる。
視界が滲んで、2人の姿が良く見えない
袖で拭っても拭っても涙が溢れて止まらない。
シュボッ...と、マッチで火をつける音がする
煙草の香りが漂う
織田作之助の命の灯火が消えた瞬間だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。