店の窓に飾られたマネキンと睨み合いをしていた俺を、聞き覚えのある声が呼び掛けた。
茶色い爽やかな短髪に、クールな印象を与える整った綺麗な顔立ち。俺よりもずっと背が高く、ガタイもいい。
………あの時、彼の告白をつい盗み聞きしてしまったからだろうか。何だかとても気まずく感じて仕方ない。
キョロキョロと目を泳がせながら「あなたちゃんの友達、だよね」と答えた。
そうだ、もうあと2日で12月を迎えてしまう。そうなればすぐにクリスマスという恋人のいない俺には全く無関係なイベントが訪れてしまうのだ。
ふと再びマネキンの首に巻かれたマフラーに視線を送る。そうか、どうも迷って仕方なかったのは、もうすぐでクリスマスからなのか。
本音を言うと、やはり少し迷っていた。
彼氏でもない俺からマフラーを貰ったとして、果たしてあなたちゃんは喜んでくれるのだろうか?
女心は秋の空なんて、よく言うものだ。
もしかしたら彼が告白した事によって、あなたちゃんの想いも彼の方へズレていってたら。
もしもそうだとしたら、俺からプレゼントを渡すなんて、そんなの迷惑じゃないだろうか?
18歳の馬鹿馬鹿しい弱音を一体誰が好き好んで聞きたいだろう。俺は敢えて彼から顔を逸らしながら「色々ね」と声を低くした。
彼は凍り付くような冷たい瞳でこちらを振り返ると、淡々と「当たり前でしょ?」と言い放った。
………俺は、何も言い返せなかった。
ただその場を立ち去る彼の背中を、拳を握りながら見つめる事しかできなかったのだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。