第21話

ねぇ、先輩。
1,525
2018/03/20 10:39
花形モカ
花形モカ
で、で?
あなた

え、でって?

花形モカ
花形モカ
有岡先輩だよっ!
どこがいいの?
 モカちゃんは、興味津々という気持ちをそのまま顔に表したような輝かしい瞳で問いかけてきた。

 とりあえず座ろうと促し席に付く。モカちゃんはというと、私の前の席の人の椅子を借りるようだった。なんだか照れ臭い私は、両頬を手で押さえながら渋々口を開いた。
あなた

変わってる所………かなぁ

花形モカ
花形モカ
変わってる所かぁ………
あなた

それに意外と優しいし!
鈍感っぽいけど………

 モカちゃんは軽くあははっと笑うと、満面の笑みを浮かべながら「そんなの普通、普通!」とあしらった。
あなた

え、普通………?

花形モカ
花形モカ
男なんてみんな鈍感だよー?
 さすがアイドル。と言わんばかりに、モカちゃんはまるで当たり前のような口調で男の子の悪口をポンポンと挙げていった。

 鈍感すぎて気付いてくれない。
 好きだから意地悪するなんて可笑しい。
 見た目で判断するな。

 なんだかとても大変そうだ。可愛い子と言うのは。それに比べ何もかもが普通な私は案外平和で良いのかもしれない。
花形モカ
花形モカ
………でも有岡先輩って本当に彼女いるのかなぁ……
あなた

え………どういうこと?

 モカちゃんは綺麗な色白な手を顎の上に乗せ、うーん……と何か思い出そうと唸り出した。それを首を傾げて見守る私。

 しばらく黙ってじっと見つめていると、突然「あ!」という声と共にモカちゃんが私の方へと身を乗り出してきた。
花形モカ
花形モカ
思い出したよ!
あなた

え、何?

花形モカ
花形モカ
有岡先輩やっぱり彼女いないよ!
 私以上に目をキラキラと輝かせながら自信満々にそう言い放った。私もまた、思わず「え?」と聞き返した。

 モカちゃんは「だからね!」と机をトントンと両手で叩きながら興奮気に言い放つ。
花形モカ
花形モカ
先輩、一年前に彼女さんと別れてから彼女いないよ!
あなた

そうなの?

花形モカ
花形モカ
うん!
私のお姉ちゃんが同じクラスだから絶対!
 モカちゃんのお陰で少しだが心の中に溜まっていた鎖のようなものが解けた気がした。一気に軽くなる私の心。それと共に安心感が身体を突き抜けていくのが分かった。
あなた

でも、その元カノさんって………

花形モカ
花形モカ
なんとかカナ先輩…………
だったかなぁ
 やはりあの人は“今”や“昔”というだけの違いしかない、結局は大貴先輩と付き合っていた事に変わりはなかった。

 元カノさんとは言え、先輩に対して好意が無いとは限らない。そして反対に好意があるとも限らなかった。


 でも…………。
あなた

今は付き合ってる人いないんだよね?

花形モカ
花形モカ
うん!
お姉ちゃんが言ってた!
あなた

そっか…………

 その情報だけでもう安心しきってしまう私は、少し馬鹿になっていたかもしれない。

 でも、この時の私はそれすらどうでもいいくらい切羽詰っていたのだった。



 先輩…………。
 こんな私でも貴方を好きでいてもいいのでしょうか?

プリ小説オーディオドラマ