モカちゃんは、興味津々という気持ちをそのまま顔に表したような輝かしい瞳で問いかけてきた。
とりあえず座ろうと促し席に付く。モカちゃんはというと、私の前の席の人の椅子を借りるようだった。なんだか照れ臭い私は、両頬を手で押さえながら渋々口を開いた。
モカちゃんは軽くあははっと笑うと、満面の笑みを浮かべながら「そんなの普通、普通!」とあしらった。
さすがアイドル。と言わんばかりに、モカちゃんはまるで当たり前のような口調で男の子の悪口をポンポンと挙げていった。
鈍感すぎて気付いてくれない。
好きだから意地悪するなんて可笑しい。
見た目で判断するな。
なんだかとても大変そうだ。可愛い子と言うのは。それに比べ何もかもが普通な私は案外平和で良いのかもしれない。
モカちゃんは綺麗な色白な手を顎の上に乗せ、うーん……と何か思い出そうと唸り出した。それを首を傾げて見守る私。
しばらく黙ってじっと見つめていると、突然「あ!」という声と共にモカちゃんが私の方へと身を乗り出してきた。
私以上に目をキラキラと輝かせながら自信満々にそう言い放った。私もまた、思わず「え?」と聞き返した。
モカちゃんは「だからね!」と机をトントンと両手で叩きながら興奮気に言い放つ。
モカちゃんのお陰で少しだが心の中に溜まっていた鎖のようなものが解けた気がした。一気に軽くなる私の心。それと共に安心感が身体を突き抜けていくのが分かった。
やはりあの人は“今”や“昔”というだけの違いしかない、結局は大貴先輩と付き合っていた事に変わりはなかった。
元カノさんとは言え、先輩に対して好意が無いとは限らない。そして反対に好意があるとも限らなかった。
でも…………。
その情報だけでもう安心しきってしまう私は、少し馬鹿になっていたかもしれない。
でも、この時の私はそれすらどうでもいいくらい切羽詰っていたのだった。
先輩…………。
こんな私でも貴方を好きでいてもいいのでしょうか?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。