第28話

貴方への想い
1,362
2018/03/29 09:09
 その夜は、嵐のような酷い風が外で靡いていた。窓越しに真っ暗な空を眺める私は、ふと夕方の事を思い出し、心臓が握られるような痛みを感じた。
あなた

はぁ………

 もう少しだけ先輩といたかった。ただそれだけを願っていた。神様は、私のお願いを聞いてくれたのだとついつい思っていた。

 でも、どうやらそれはほんの一握りの砂のように儚いものだったらしい。
あなた

私って本当に馬鹿………

 先輩を困らせたい訳じゃなかった。むしろそれだけはどうしても避けたかった。なのに、それなのに………。
 もしもあの時、「可笑しくないですよ!」と素直に伝えられていたら。もしも……先輩の事が好きですから、と告白出来ていたら。先輩はどんな顔をしてくれたのかな?


 喜んでくれるかな。俺もだよって応えてくれたのかな。それとも………困っちゃうのかな。

 先輩を困らせるくらいなら告白なんてしない。こんな私の想いなんて届かなくたっていいんだ。大貴先輩をこれ以上困らせるよりかは何倍もマシだと思えるから。
 この気持ちが届かない事くらい、なんて事無いに決まっている。そう自分に言い聞かせた私は、この日以降先輩への恋心を自分の胸の内に秘めておく事にしたのだった。

プリ小説オーディオドラマ