あとで連絡くれると先輩はボソリと呟いていたが、彼の言う“あとで”とは一体いつの事を言うのだろうか?
画面に表示された彼のプロフィールをじっと見つめる。そうした所で何も出てきやしないのだけれど。
開いていたLINEを閉じ、そっと自分の胸元へスマホを乗せた。目の前に広がるのは殺風景な白の天井。
何でだろう、とても………とても寂しくて堪らなくなってきた。
そう言えば、裕翔からLINEが帰ってきているはずだった。ふと思い出した私は何気なく再びアプリを開き、確認する。やはり1通だけ彼から送られてきていた。
先輩の事を考えざわついている胸を深呼吸しながら整え、ゆっくり文字を打っていく。
裕翔と話しているというのに、なぜかその間にも私の頭の中は先輩の事でいっぱいになりつつあり、少しだけ自分に対しての嫌悪感を感じた。
………少し素っ気なかったかな?
不安に駆られながらも、あまり躊躇すること無く何気ない気持ちで送信した。裕翔の事だから、もしかしたら少しだけ元気がない事にすぐ気づいてくれるかもしれない。もしそうだったら申し訳ないな。
送信してから約2、3分が経った時。
メッセージの受信を知らせるインターホンに似た通知音がスマホから鳴り出した。きっと裕翔からだろう。あの子は意外とマメだから。
先輩からのLINEを胸を痛めながら待ち続けていた私は、ゆっくりと自分の手元に握られていたスマホを顔の前まで移動させた。
メッセージの内容を確認した私は、思わず目を見開いた。なぜならその送信者は裕翔でも圭人でもなく…………有岡先輩だったのだから。
貴方からのLINEを今か今かと待ち焦がれていた私の想いなど知らない先輩は、メッセージが遅れた件に関して謝る事もせずに平常運転………だった。
………全く、有岡先輩。貴方って人は。
意地悪で送信してやった。
本来なら「登録ありがとうございます」等、礼儀正しさを見せてみる所ではあるが、先輩のそのメッセージに少々腹を立てていた私はそこまでの思考がなかった。
先輩の付けてきた絵文字からして、これは絶対に忘れていたのだろう。思わず眉間にシワが寄りそうになってしまう。
もう………。
私、先輩の事ずっと待ってたんですからね。
そんな事言えるはずもないけど――。
先輩からしたら何気ない気持ちでその言葉を打ち込み送信したのだろうが、その一言は私を天に昇らせようとしているくらい心にグッと響くものがあった。
一気に顔の熱が上昇する中、ベッドの上で足をバタつかせながら「ひゃー……っ」とか細い声で静かに歓声を上げていた。
先輩の社交辞令とも取れる何気ない言葉にまで過剰に反応してしまうなんて。私ったら本当、どうしたって言うのかな………?
ああ、もう………本当に。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!