第38話

幼なじみと先輩。
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2018/04/13 11:05
 先輩とまた仲良くしたい。

 そんな想いが脳だけでなく、身体全体を支配しているように思え胸を痛めた。残念ながら心で思うだけではどうする事もできない。そう………思うだけでなく、行動をしなければ。
 なんて、簡単に言ってみるがそれが出来ていたら今頃こんなに辛い思いはしていないだろう。
圭人
圭人
―――あなた
あなた

ん………ッ、圭人……?

 机に顔を伏せていた私の名前を呼んだのは、部活に行くはずの圭人だった。頭上から私の肩を優しく叩いた彼が「大丈夫?」と微笑みを見せた。
あなた

あれ……部活は?

圭人
圭人
今日は休みの日だからさ。
裕翔は逆に部活あるみたいだけど
あなた

そうなんだ…………

 裕翔と圭人と入れ替わりのような形で部活が休みなため、なかなか3人揃って喫茶店やゲームセンターへ向かう機会がなく、私としては少し寂しさも感じる程だった。
 そうして寂しげに目を細める私に、「またどこか行く?」と圭人が静かに告げた。
あなた

いい、の?

圭人
圭人
うんいいよ。どこがいい?
あなた

うーん………どこでもいいや

 じゃあ行こうか、と先に教室を後にした圭人の背中を追うように急いでカバンを肩にかけ教室を駆け抜けた。

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 圭人と話していると、積み上げてきたこれまでの“嫌な事”や“辛い事”が全て洗礼されるような、そんな優しい聖母のような温もりを感じる事が多々ある。もちろん昔からそれは何一つ変わってはいない。
圭人
圭人
で? 先輩と何があったの?
あなた

うーん………
実は……ね

 恥ずかしさを抑え込み、言葉を詰まらせながらも何とか説明した。その間ずっと圭人は少しも嫌がる事なく私の話に耳を傾けてくれた。
圭人
圭人
ははっ、不器用だなぁ………
あなた

へ?

 意味が理解できず首を傾げる私の頭を「何でもないよ」と微笑んだ圭人が優しくポンポンと叩いた。何だかお子様的な扱いを受けているような気がしてムッと頬を膨らませた。
圭人
圭人
あ、ごめん嫌だった?
あなた

べ……別に………

圭人
圭人
なんかいい位置にあるからつい、ね?
あなた

………それ馬鹿にしてる?

 わざと言わないようにしているだけで、本当は分かっている。圭人は私を励まそうとしてくれているという事くらい。だって、圭人はそういう人なのだから。
あなた

………圭人ってモテるの?

圭人
圭人
急にどうしたの? 俺モテたことないよ?
 笑顔を引き攣らせながら言いづらそうに言葉を詰まらせた。あまり触れられたくない話だったのだろうか?
圭人
圭人
え………そう?
あなた

嘘! 絶対モテると思ってた!
圭人意外とカッコイイし……

 今度は何やら嬉しそうに口元が緩んでいる。引き攣ったり緩んだり、忙しい人だ。って……その原因は私にあるのだけれど。
あなた

もしも圭人が幼なじみじゃなかったら、絶対今頃惚れてたなぁ………

圭人
圭人
……………いつかは俺にも分からないけど。
心配しなくても絶対先輩と仲直りできるはずだから大丈夫だよ
 ため息混じりにそっと宙に吐いたもしもの話。
 どうやら圭人の耳には届かなかったらしく、圭人はそう言って儚く笑うと、「大丈夫、大丈夫」と背中を(押してくれるかのように)さすってくれた。
あなた

そ、そう………だよね

 「そうだよ」やと言って支えてくれる幼なじみの優しさになぜもっと早く気づいてあげられなかったのだろう。

 なぜ………こうまでしても思わせぶりでズルい大貴先輩を好きでいてしまうのだろう。
 ―――モヤモヤと渦巻く私の胸に、チクリと痛みを感じた。

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