~るぅとside~
「待って!!」
という前にころちゃんは鞄を持って走って教室から出ていってしまった。
僕の横を走っていった君の顔は赤くなっていてそして涙が流れているのが見えた。
教室にポツンと残された僕。
「好きです」
そう言い放った君の顔を思い出す。
いつの間にか教室のドアにもたれ掛かるさとみくんの姿があった。
小馬鹿にしたように僕が答えるといかにも不快というようなさとみくんの声。
嫌いなんじゃない。むしろ大好きだ。
でも、僕は付き合えない。
わざと笑顔でさとみくんにそう言ってから教室を出ようとする。
すると、
さとみくんの横を通りかかった時そう言われた。
そう言って足早に教室を出る
その言葉に足がピタッと止まる。
「そうですか」と素っ気なく返事をして教室を出て廊下を歩く。
本当は奪われたくなんてない。
よりによって友人に好きな人を奪われるなんて考えただけで苦しくなる。
でも、僕は付き合えないんです…。
……付き合っちゃダメなんです。
目の前がだんだんと滲んで、頬に涙が伝った。
~ころんside~
「ごめんなさい」
静かな教室に君の声がそっと響いた。
その瞬間、僕の中にあったものが一気に崩れ落ちたような、温かかったものが急に冷たく凍りついたような感覚が広がっていくのがわかった。
即座に鞄を持って逃げるように教室を出る。
そして、何も考えられなくて、考えたくなくて頭がぼーっとしたまま家に帰る。
家に着いて自分の部屋まで駆け上がりバタンとドアを閉めたところでようやく涙が溢れた。
そっか。
僕、振られたんだ…。
その場にしゃがみこんでただひたすらに泣いた。
やっぱり、告白なんて間違ってたんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。