無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

第13話

ふさがれた逃げ道
 さて、翌日のオリエンテーション終了後の私と伊織はというと。
金剛地零哉
金剛地零哉
昨晩の自作納豆は、初めてにしては良い出来だった
 金剛地先輩に呼び出され、生徒会室にいた。

 断っておくけれどループではない。金剛地先輩の発言でもう解るけど、残念ながらループしてない。

 ……ループしてたら昨日のあれこれを取り消せたのかなぁ。
金剛地零哉
金剛地零哉
大豆で作る納豆を極めたら、次は枝豆で作る納豆も極めよう
 でもループしたら毎日生徒会室に呼び出されて口先の語彙力を殺されるんですよね。

 やっぱループしなくていいです。
徳武伊織
徳武伊織
一体なんのために呼び出したんですか
 伊織はペンライトを握ったまま腕を組んで、金剛地先輩を睨んでる。

 リア充は諦めたから口を酸っぱくして言う気にもならないけれど、それでも少しは周りの目を気にしてほしいとは思う。
金剛地零哉
金剛地零哉
納豆同好会参謀部の件に決まっているだろう、そんなことも解らないのか徳武は
徳武伊織
徳武伊織
最初に関係ない話を始めたのは金剛地先輩だと思いますが
金剛地零哉
金剛地零哉
納豆同好会で納豆の話をするのは普通のことだろう、そんなことも……
徳武伊織
徳武伊織
いいです、本題に移りましょう
 伊織は威嚇するように金剛地先輩にペンライトを向けた。教室で私にペンライトを向けるときとは気迫がまるで違う。

 そもそも教室でペンライトを出さないでほしいんだけど。
徳武伊織
徳武伊織
俺は納豆同好会をアイドル同好会に変えたいと思っています
金剛地零哉
金剛地零哉
そのようなことを俺が認めるわけがないだろう。いいかげんにしろ徳武!
徳武伊織
徳武伊織
それは百も承知です。ですから少し方向性を変えたいと思っています
 伊織はペンライトを光らせた。色は勿論、一推しの黄色。
徳武伊織
徳武伊織
納豆同好会とまい☆らいす同好会、どちらが必要とされているか悠香に決めてもらいましょう
早見悠香
早見悠香
は?
 意味がわからない。なんでそうなるの。

 と具体的に抗議したいけれど、例によって例のごとく口先の語彙力が死んでいる。当然ジャッジなんてできるわけがない。

 そもそもそれら二つの同好会が必要とされる基準って、何?
金剛地零哉
金剛地零哉
徳武の傘下にある今の早見をアテにできるとは思わん
 今すぐに否定したいけれど口を開いたらろくなことにならない。それはわかりきっている。

 私は制服のポケットからスマホを取り出し、納豆同好会参謀部に書き込んだ。


 × × ×

早見悠香
早見悠香
私は納豆でもまいらいすでもなんでもいいです
 私賢い。学習した。これで変なことを口走らずにすむぞ!すごい!

 ……端から見たら完全に陰キャの行動だと思うけど仕方ない。死ぬより安いもの。生きてるだけでまるもうけだ。


 × × ×

金剛地零哉
金剛地零哉
おい早見、話の途中で携帯をいじるな!
徳武伊織
徳武伊織
金剛地先輩、参謀部見てくださいよ
 伊織はペンライトをズボンのベルトに挿して、ポケットからスマホを取り出した。

 高校生活三日目にして独自のスタイルを確立している伊織って本当になんなんだろう。
徳武伊織
徳武伊織
……悠香、まい☆らいすのまい、と、らいすの間の☆を入れるの忘れるなよ。その☆はメンバー五人の結束を現わす重要な記号なんだぞ
徳武伊織
徳武伊織
その☆を入れ忘れたなら、入れ忘れたのが悠香だとしても看過できない。これはまい☆らいすファンなら最初におぼえるべき基礎知識なんだぞ
 や、やってしまった。口に出せばごまかせた部分が、文章だとごまかせない。

 こういうことになると伊織が口うるさいのは昔からのつきあいで知っていた。知っていたのにこれだ。
金剛地零哉
金剛地零哉
お、落ち着け徳武。今日の早見は体調が悪いのかもしれないだろう……
 あ、金剛地先輩が伊織の言動で気勢をそがれてる。レアケースだ。

 とはいえどうしよう、参謀部に逃げるのもそれはそれでよろしくないみたいだ。当たり前といえば当たり前だけどさぁ……。