無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

第14話

勇気を出してコミュ障克服!
 そもそもいつまでも金剛地先輩と話せないのは問題だ。

 納豆同好会参謀部という名の退路も断たれたけれど、幸い伊織の気迫に金剛地先輩がうろたえている。

 私。私がここで頑張らないと。
早見悠香
早見悠香
わ、私……
 伊織だって金剛地先輩だって当たり前のように勇気を出して自分のことを喋っているんだ。

 それを私だけがなんともしょっぱい理由で避け続けるのはあまりにも情けない。……情けない。
金剛地零哉
金剛地零哉
どうした早見。体調が悪いならはっきりそう言ってくれ
金剛地零哉
金剛地零哉
できる限りの対処はする
 金剛地先輩の本気の心配が、私の口先の語彙力をいたぶる!

 こんな時に人を本気で心配するなんていう珍しい面を見せつけないでください!素敵すぎるんですよ!
早見悠香
早見悠香
青い、眼差し……煌めく、金糸……
徳武伊織
徳武伊織
なっ……悠香!?
 伊織が青い顔をしている。金剛地先輩は不思議そうに私を覗き込む。
早見悠香
早見悠香
ギリシャ彫刻にも似た、掘りの深い顔立ち……
 たぶん、私も青い顔をしている。金剛地先輩を見て、なんとか言葉をひねり出したらこうなった。

 ……反省している、ものすごく反省している。
金剛地零哉
金剛地零哉
早見、頭をやられたのか?納豆には脳を健康にする成分が大量に含まれている
金剛地零哉
金剛地零哉
今すぐ摂取すべきだ!
 金剛地先輩は学生鞄からラフランス納豆を取り出し、私の前に差しだした。

 金剛地先輩の行動が、出会った瞬間の衝撃を想起させる。
早見悠香
早見悠香
あ、あ、あ、あ
 だめだめ、しっかりして私。いつまでも同じことを繰り返してどうするの?

 殺されたって生き返ればいい。何度でも、何度でも。

 グッときつく拳を握りしめる。
徳武伊織
徳武伊織
悠香?
 伊織の目が私を観察して、動揺する。

 見てて伊織。私は間抜けだけど、腑抜けは卒業してやる。
早見悠香
早見悠香
あああ、あの、そ、その、きんちょ……してましゅ
 言ったそばから間抜け!どもった、間が変、しまいに噛んだ!

 とはいえ、初めて金剛地先輩の前でまともなことが言えた!やった!
金剛地零哉
金剛地零哉
そ、そうなのか……
 金剛地先輩、さっき伊織が暴走したときみたいに気勢をそがれてる。

 ごめんなさい、金剛地先輩からしても変な子ですよね、私。

 でも、変な子でも頑張ったんです。精一杯でこれなんです。
徳武伊織
徳武伊織
……
 伊織は私から目をそらした。なんとなく、機嫌が悪いって顔をしている、ような気がする。

 光を消したペンライトを握って、ぼんやりと金剛地先輩に視線を向けている。
金剛地零哉
金剛地零哉
ひとまず確認する。早見はどちらに加勢する気もないのか?
早見悠香
早見悠香
あ、ああ、ありおま、せん
 金剛地先輩は一声一挙手一投足が様になるから、私の語彙力をガンガン殺す。

 その度に私はよみがえって、どもったり噛んだり意味不明なことを言ったりする。

 そうして慣れていくしかない。
金剛地零哉
金剛地零哉
ふむ。おい、徳武。いままでの早見は極度の緊張状態にあったのか?
 伊織の視線が射貫くようなものに変わった。

 え?ええっと、なにか恐ろしいものでも見つけました?金剛地先輩の背後に幽霊とか?
徳武伊織
徳武伊織
……そうですね
 声に熱がない。不機嫌だ。どう考えても背後に幽霊を見たとかそんな感じじゃない。

 ……どうしたんだろ?
金剛地零哉
金剛地零哉
となると俺と徳武の戦いに巻き込むのは、さすがに気の毒だな……
金剛地零哉
金剛地零哉
それはともかく早見、ラフランス納豆は受け取ってくれ。身体にいいからな
 伊織の視線は怖いけれど、拒否するのも気まずいので受け取っておく。
早見悠香
早見悠香
あり、がとうございます!!
 金剛地先輩の美には勢いで対処することができた。

 その代わりに様子のおかしい伊織になんて声をかければいいのかわからなくなった。

 あちらを立てればこちらが立たずってヤツなの?ど、どうすればいいんだろ……。