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第12話

禍福はあざなえる誤爆のごとし
 私はどうだろう。

 金剛地先輩のやり方が気にくわない、と伊織みたいにはっきり言えるほど強い否定の感情もない。

 けれど進路や未来を勝手に決められるのはちょっと困る。
金剛地零哉
金剛地零哉
早見、もしや徳武に脅されているのか!?
徳武伊織
徳武伊織
金剛地先輩はどうあっても俺が悪いという方向に話を持っていきたいようですね
 私がどっちつかずな考えをこねくり回している間にも、対立構造が出来上がっていく。

 私はどうしたいだろう。何になりたいという希望もなく進学し、直近の夢だったリア充高校生活は二日で諦めた。

 伊織にさっくり説得されてオタクの自分を取り戻した、そんな私がやりたいこと……!
早見悠香
早見悠香
推しに貢ぐ
 我が目を疑った。我が指を疑った。しかし我が心は疑えなかった。

 リア充の道を捨てオタクに返り咲いた今の私にある直近の夢なんて、そんなもんだ。

 しかしそれを正直に書いた上、送信までしてしまった我が指だけは本気で恨む。
徳武伊織
徳武伊織
悠香、お前……
 伊織は私の真意を察したみたいだ。……本当にごめんね!
金剛地零哉
金剛地零哉
何の話だ?
 金剛地先輩はたぶん言葉の意味すらわかっていない。……本当にごめんなさい!
早見悠香
早見悠香
ごめんなさい!誤爆です!他の友だちに送るつもりでした!もうしません!
 今の私にできることは嘘を交えた謝罪しかない。

 我ながら恥ずかしい。ものすごく恥ずかしい。穴を掘ろう。埋まろう。せめて良い肥料になれるといいな!
金剛地零哉
金剛地零哉
……俺の腹に巻いた自作納豆もそろそろ育ちきっただろう
金剛地零哉
金剛地零哉
調味料や薬味を入れるのは納豆を混ぜたあとだ。先に混ぜることで納豆がふっくらするからな
金剛地零哉
金剛地零哉
そしてそれを米に乗せて食べてくる。お前達は今後の身の振り方についてよく考えておけ
 どうやら金剛地先輩に呆れられてしまったようだ。

 呆れるような相手にも納豆知識の伝授を忘れないあたり、金剛地先輩もよくわからない人だ。

 ……思い返したら元からよくわからない人だった。


 × × ×


 超絶リア充美少女妹と鉢合わせないために音速で夕食を終えた。

 私は骨と皮を突き破って飛び出しそうな心臓を抑えながら部屋でスマホを確認した。自分が原因とはいえめっちゃ怖い。

 金剛地先輩、納豆以外は何考えてるかわかんないし。
システムメッセージ
徳武伊織から十件の着信がありました
 金剛地先輩からよりはマシかな、ハハハ。

 ……どう考えても怒られるよね、これ。仕方がないので電話をかける。せめて第一声から怒鳴られるとかはありませんように!!!
早見悠香
早見悠香
も、もしもし、伊織……?
徳武伊織
徳武伊織
ああいうのやめてくれよ
 で、ですよねー。ほんっとうに申し訳ない!返す言葉もございません。
早見悠香
早見悠香
あれは本当にごめ……
徳武伊織
徳武伊織
笑っちまった。金剛地先輩、絶対意表を突かれただろうし
徳武伊織
徳武伊織
気分良かった。ははっ!
早見悠香
早見悠香
え、本当?本当の本当に?
 私、誰か違う人に電話してない?でもスマホから響く声は確かに伊織のもので。

 もしかして今、寝ちゃってるのかな?夢見てるのかな私?
徳武伊織
徳武伊織
お前がお前で良かった。ふふ、あはは!くくっ……おっかし!
 今の言葉で確信した。私を私で良いと言ってくれるなら、これは現実の伊織だ。
早見悠香
早見悠香
わ、私としてはすっっっっっごく恥ずかしかったんだから……
徳武伊織
徳武伊織
恥ずかしいのは一時の感情だろ?それよりこの先、金剛地先輩にどう対処するか考えようぜ
 あれ?私はナチュラルに伊織陣営の頭数に数えられている?
早見悠香
早見悠香
ちょっと待って伊織。私、別に金剛地先輩と敵対したいわけじゃないんだけど……
徳武伊織
徳武伊織
って言っても金剛地先輩はお前にもマイナス感情抱き始めてるみたいだけどな
 で、ですよねー。これは金剛地先輩と戦わないといけないのかな。

 そもそもなにで戦うのか、さっぱり解らないんだけど。