金剛地先輩の(納豆サングラスの向こうの)青い瞳には一点の曇りもない。
私みたいな後ろ暗くて勇気の無い人間が、この人の大切な話を本当に聞いて良いのだろうか。
そんなことを考えている間にも、金剛地先輩は問わず語りを進めていく。
感情を抑えた金剛地先輩の声が、真実をつまびらかにしていく。
ゆっくりと、日が傾いていく。
食べかけのロースカツが冷めていくけれど、口にする気にはなれない。
金剛地先輩は綺麗な声で、事実だけを述べていく。
嫌に冷たい四月の風が駆け抜ける。震える私の手はロースカツを地面に落としてしまった。
公園という名の空き地が夕日に染まって、なんだかひどく感傷的な気分になった。
ごめんねロースカツ。
金剛地先輩の眩いかんばせが私を見る。私の両肩をガッと掴む。
その力強さに、私は視線を動かせなくなる。
今までのシリアスすぎる流れからなぜ急にそれが出てくるんですか?
はぁ、立派な志ですね。仰げば尊いっすね。
で、何の話でしたっけ?
金剛地先輩はおもむろに納豆サングラスを外した。や、やめ!今それだけはまずい!
目の前の金髪碧眼美男子の頬は間違いなく朱に染まっている。
なんだこれは?何が起こった?
か、……か、か。
ええと、なんだっけなんだっけ?
目の前のリアル夏焼奏が何かプロポーズしてきたんだったっけ?
……え?夢でしょ?私、リアル夏焼奏の夢主人公なの?
すごーい。そいつはすごーい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。