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第28話

金剛地零哉
 金剛地先輩の(納豆サングラスの向こうの)青い瞳には一点の曇りもない。

 私みたいな後ろ暗くて勇気の無い人間が、この人の大切な話を本当に聞いて良いのだろうか。

 そんなことを考えている間にも、金剛地先輩は問わず語りを進めていく。
金剛地零哉
金剛地零哉
金剛地フーズの社長であった金剛地裕真は俺の父だ
金剛地零哉
金剛地零哉
この男の心はとても弱かった
金剛地零哉
金剛地零哉
自分が苦しければ愛した妻も子も置き去りにする、どうしようもない人間だった
 感情を抑えた金剛地先輩の声が、真実をつまびらかにしていく。
金剛地零哉
金剛地零哉
金剛地裕真には親友がいた。いや、自分が親友だと思っている相手がいた、という方が正しい
金剛地零哉
金剛地零哉
ソイツは金剛地フーズの利益を横領したあげく、逃げ出した
 ゆっくりと、日が傾いていく。

 食べかけのロースカツが冷めていくけれど、口にする気にはなれない。
金剛地零哉
金剛地零哉
親友と思っていた人間の裏切りに滅入った金剛地裕真は社長の座を退くことを考えた
金剛地零哉
金剛地零哉
金剛地フーズ上層部は次期社長の座を争い、互いに足を引っ張り合った
金剛地零哉
金剛地零哉
会社の利益や、部下の生活など一切顧みずにな
金剛地零哉
金剛地零哉
結果、会社の経営は最悪と呼べる状態になった
金剛地零哉
金剛地零哉
信じていた者達に失望した金剛地裕真は、真面目に働いていた社員たちへの罪悪感から失踪した
 金剛地先輩は綺麗な声で、事実だけを述べていく。

 嫌に冷たい四月の風が駆け抜ける。震える私の手はロースカツを地面に落としてしまった。
早見悠香
早見悠香
あっ、ごめ、ごめ……
金剛地零哉
金剛地零哉
奥様には申し訳ないが、かまわない
 公園という名の空き地が夕日に染まって、なんだかひどく感傷的な気分になった。

 ごめんねロースカツ。
金剛地零哉
金剛地零哉
俺は父のようにはならない
金剛地零哉
金剛地零哉
早見、お前は横領を行う人間でも、不毛な権力争いをする人間でもないだろう
金剛地零哉
金剛地零哉
だから、俺はお前を……
 金剛地先輩の眩いかんばせが私を見る。私の両肩をガッと掴む。

 その力強さに、私は視線を動かせなくなる。
金剛地零哉
金剛地零哉
……妻として迎え入れた上で、部下としても育てていこうと考えている
早見悠香
早見悠香
は?
 今までのシリアスすぎる流れからなぜ急にそれが出てくるんですか?
金剛地零哉
金剛地零哉
俺の母、金剛地アルマは未だに金剛地裕真の帰りを待ち続けている
金剛地零哉
金剛地零哉
金剛地フーズの主力商品であった納豆を思い、他社の納豆を毎日食べ比べながら
金剛地零哉
金剛地零哉
そして俺は妻にそのような思いをさせる人間にはならないと誓っている
 はぁ、立派なこころざしですね。仰げば尊いっすね。

 で、何の話でしたっけ?
金剛地零哉
金剛地零哉
妻としてのお前には不自由させない
 金剛地先輩はおもむろに納豆サングラスを外した。や、やめ!今それだけはまずい!
金剛地零哉
金剛地零哉
不純なことは一切しない。お前が高校を卒業するまで待つ
金剛地零哉
金剛地零哉
……俺と付き合ってくれ
 目の前の金髪碧眼美男子の頬は間違いなく朱に染まっている。

 なんだこれは?何が起こった?

 か、……か、か。
早見悠香
早見悠香
カナァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
 ええと、なんだっけなんだっけ?

 目の前のリアル夏焼奏が何かプロポーズしてきたんだったっけ?

 ……え?夢でしょ?私、リアル夏焼奏の夢主人公なの?



 すごーい。そいつはすごーい。