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第15話

そんな、不意打ち
金剛地零哉
金剛地零哉
徳武が付き合わせて悪かったな、早見
金剛地零哉
金剛地零哉
しかし俺としては納豆同好会を抜けて欲しくはない。納豆部への昇格が遠ざかるからな
 納豆部って納豆同好会以上に何をするかわからない団体ですね。そんなものを目指しているんですか。
金剛地零哉
金剛地零哉
納豆同好会に名を残したまま活動には不参加という手もあるがどうだ?
早見悠香
早見悠香
あえ、えっと……それは、ちょっと……
 伊織はペンライトを持ったまま腕を組んで、怖い顔をしている。

 金剛地先輩の嫌味にも、それいいの?な手にも口を挟まないのがものすごく怖い。

 口を堅く引き結んで、いつもの楽しげな雰囲気は完全に消えている。

 ……本当に怖い。
徳武伊織
徳武伊織
俺も納豆同好会でいいですよ
 伊織はペンライトをベルトに挿し、誰の方も向かずに言った。

 その声にはひどい投げやりさと苛立ちが含まれている。正直あまり触れたくない。
早見悠香
早見悠香
……ほ、本当に?
 それでも金剛地先輩に返事するときよりはスムーズに声が出る。私の身体は正直だなぁ……。

 伊織は私の耳元に顔を寄せた。身を引きたくなる、怖い。
徳武伊織
徳武伊織
……俺には緊張しないんだな
 私にだけ聞こえるように囁かれた、その声の冷たさが心に刺さる。

 伊織の顔が私から離れる。その表情を確認するのが、怖い。
金剛地零哉
金剛地零哉
なんだ徳武、また早見を脅したのか?
徳武伊織
徳武伊織
……どうでしょう
徳武伊織
徳武伊織
とにかく、納豆同好会でいいです。……お疲れ様でした
 それだけ言い残して、伊織は生徒会室を後にした。

 生徒会室には神妙な面持ちの金剛地先輩と、伊織の冷たさに刺された私だけが残されている。
金剛地零哉
金剛地零哉
信用できるのか、徳武は
 金剛地先輩は独りごちているのか、私に尋ねているのか。

 どちらにせよ私に返答の義務はないと思うし、上手い返答をできる自信もなかった。


 × × ×

徳武伊織
徳武伊織
悠香、おはよ
早見悠香
早見悠香
あ、お、おはよ……
クラスメイトA
徳武君さぁ、最近あの変な歌、歌ってないね
クラスメイトB
おっ?和製イケメンの株急上昇?
クラスメイトC
あ、あの、そういう話やめようよ……
 あの日以降、伊織はペンライトを持たない、何の変哲もないイケメンになった。

 私はそれを望んでいたはずだったのに、いざそうなったら凄く寂しくなった。
徳武伊織
徳武伊織
今日も納豆同好会だったな
 伊織の言葉に違和感を感じる。
早見悠香
早見悠香
うん
 伊織に抱く感情を胸の奥にしまって、私は雑な返事をした。


 × × ×


 入学してから毎日、生徒会室に通っているっていうのもおかしな話だけど、生徒会長様主宰の同好会に入ってしまったんだから仕方ない。

 今日で6回目か。……リア充チャレンジより長く続いてるし。
金剛地零哉
金剛地零哉
しかし徳武。最近のお前は従順すぎて逆に不気味だな
徳武伊織
徳武伊織
……上級生に対して良くない態度だったと反省しただけです
 ベルトにペンライトを刺してもいない。声には軽い感情しか乗っていない。
金剛地零哉
金剛地零哉
殊勝ではあるが……
 金剛地先輩すら伊織の現状を疑問視する。
徳武伊織
徳武伊織
金剛地先輩はそろそろバイトの時間なんじゃないですか
 最近の伊織は金剛地先輩本人より金剛地先輩に詳しいんじゃない?ってレベルで金剛地先輩のスケジュールを把握している。

 不気味ムーブに磨きがかかってる。怖い。
金剛地零哉
金剛地零哉
……今日は納豆の発注日ゆえ絶対に外せんな
 近所のスーパー、コウエツキナーゼの納豆は俺が揃えた的なことを言っていたからお金の力でどうにかしてたのかなって思ってたけど、三年生の先輩方の発言はどうやら本当だったようで、金剛地先輩にそんな財力はないみたいだ。

 店長を地道に説得して、納豆売り場をあそこまで拡大したらしい。

 ……納豆陳列事情を金剛地先輩から引き出したのも伊織だった。ここまで来ると執念じみたものを感じる。怖い。
金剛地零哉
金剛地零哉
では失礼する。お前達も早めに帰るんだぞ
 金剛地先輩は早足で生徒会室を後にした。

 しばらくして伊織はふうっと溜息をついた。私は溜息をつくほど気を抜けないでいる。怖い。
徳武伊織
徳武伊織
悠香、あのさ
 私の肩が勝手にはねる。私の身体は正直だなぁ、ハハハ。

 ゆっくり、ゆっくり伊織の方に顔を向ける。
徳武伊織
徳武伊織
今週の日曜日にさ、俺と、その
 伊織が照れているような、奥ゆかしい雰囲気を醸し出している。

 久々に穏やかな感情を見せた伊織に私は少しだけ安堵した。
徳武伊織
徳武伊織
デート、的なもの、しない?
 撤回。安堵が音速で逃げ出した。